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腫瘍内科医に聞いたNG行動と心得、がん治療が「うまくいく人」「いかない人」

週刊女性PRIME / 2024年2月23日 11時0分

※写真はイメージです

 がんの生存率は上昇傾向にあり、「治る時代になる」ともいわれるほどになった。

 ところが、腫瘍内科医として多くのがん患者に接してきた井岡達也先生は、その一方で「治療がうまくいかない人も増えた」と言う。

「がんと告知されると、冷静ではいられない中で、病院や治療法など次々と重要な選択を迫られます。治療の選択肢や情報が増えた今、よりよい選択をするには、患者になる前から、がんに対する心構えを知っておくことが大事なのです」(井岡先生、以下同)

 後々「こんなはずではなかった」と悔やまないために、実際にあったNG行動をもとに“うまくいく人”と“いかない人”の違いを紹介する。

医師の説明に家族が付き添わない

 50代女性・Aさんは卵巣がん告知の際は夫が付き添ったが、その後の手術や抗がん剤治療など治療方針の説明はAさんのみで受けていた。医師が家族の来院を促しても「仕事が忙しくて行けない」と言うばかり。

 その後容体が悪化し、慌てて夫や息子が来院するが、受けてきた治療やその副作用など、これまでの経緯がわからず家族も混乱してしまった。

▼井岡先生から

「医師との面談で、患者さんだけでなく、患者さんを支える家族も一緒に医師と話をすることは、よりよい治療を考えるために何より大切です。

 検査結果をどう判断するか、治療の選択肢のメリット・デメリットなど医療的な話はどうしても複雑になるので、患者本人だけでは理解しきれていないことも。ましてや理解力が低下しがちな高齢の親ががんになった場合には、子世代のフォローが必要です。

 また患者さんが『家族に心配させたくない』と遠慮したり、家族が『忙しいから』と来ないのは避けたい典型例。

 順調であれば通院に毎回付き添わなくてもよいですが、がん治療は『手術したら終わり』ではなく、薬の副作用や手術の後遺症など患者さんの状況に合わせてその都度治療を考えなくてはいけません。医師から『家族と来て』と言われたら何をおいても予定を調整してください」

診察室でグチが多く敵対的な態度をとる

 胃がんと診断された病院に不満があり、別の病院に転院した50代男性・Bさん。前の主治医に対する罵詈(ばり)雑言が止まらず、診察が進まない。

 医療や病院への不信感も強く、自分が思ったとおりにならないと「病院が悪い」と常に敵対的。問診をするのにも、治療方針を決めるのにも、ムダな時間がかかってしまった。

▼井岡先生から

「治療がうまくいくためには、患者さんと医師との信頼関係は欠かせません。グチのせいで診察が進まないのも困りますが、最初から敵対的な方は得てして思い込みが激しく、どこかで得た治療情報を頑固に信じていたりして、説明に苦労します。

『何かあったら主治医の責任を追及する』ような態度で、こっそり診察中の会話を録音する人もいますが、『家族にも聞かせたいので録音してもよいですか』など先に確認するのがマナーでしょう。

 不信感をなくすには疑問や不安を抱え込まず、その都度医師に直接聞くことが第一。貴重な診療時間を活用するには、疑問点はリストにしておくのがおすすめ。聞き忘れがないように、次の診察まで不安を持ち越さないようにしましょう」

アヤシイ民間療法に時間も金もつぎ込む

 70代男性・Cさんは進行性膵臓(すいぞう)がんと診断され、標準治療である抗がん剤治療をすすめられるが、ネットで見つけた「ビワの葉の温灸(おんきゅう)療法でがんが治った」との情報を信じて、抗がん剤治療を拒否。

 地元の東北から治療院のある大阪に転居までして温熱療法を続けるが、がんが増大。たまらず病院を受診したときには、皮膚から腫瘍が露出するほどに。結局、地元に戻って入院するが、退職金は温熱療法に使い切っていた。

▼井岡先生から

「ネットには“がんが治る”とうたった民間療法情報があふれていますが、がんを治癒する効果が医学的に認められたものは存在しません。

 治療に影響がなく、高額でもなければ、強く否定はしませんが、避けたいのはCさんのように、標準治療を拒否してしまうことです。“標準治療”と聞くと、“並の治療”のような印象を受けてしまうかもしれませんが、それは大きな間違い。

 標準治療とは、何段階もの臨床試験で効果が認められ、保険適用となったもの。効果面でも費用面でも現段階で“最良の治療”であり、簡単に拒否するのは得策ではありません。

 気になる民間療法があったら、まず主治医に相談を。また全国各地の『がん相談支援センター』でも相談に応じています」

自由診療・先進医療に財産を使い果たす

 膵臓がんと診断され転移もあった50代男性・Dさん。ネットで知った“免疫療法”と称する高額の治療を主治医に黙って受けるように。借金もして大金をつぎ込むが、がんは悪化。主治医にその経緯がバレて気まずくなり、診察中もぎくしゃくするように。

▼井岡先生から

「がん治療は決して“高かろう良かろう”ではなく、高額な自由診療も生存率や副作用が明らかにされていないものがほとんど。

 また“先進医療”については厚生労働省の審査を経てはいますが、保険診療として承認できる十分なデータがまだない治療であり、費用も高額です。がん治療は長期間に及ぶことも多いので、後悔しないお金の使い方を考える必要があります」

セカンドオピニオンに時間をかけすぎる

 転移を伴う進行性膵臓がんと診断された60代女性・Eさんは、最初の抗がん剤治療が効かなかったため、別の抗がん剤を提案された。

 悲観的になったEさんは息子にすすめられセカンドオピニオンを考えるが、気持ちの整理や病院探しに1か月以上かかった。その間に体調は悪化し、治療の選択肢も以前よりも限られることに。

▼井岡先生から

「セカンドオピニオンは治療法を広く検討し、納得して治療を受けるために有効です。ですが進行の早いがんもあり、時間をかけすぎて治療が遅れるのは問題です。

 手続きの時間も必要なので、最初に病院を選ぶ段階からあらかじめセカンドオピニオンの利用を想定し、セカンドオピニオン先の情報を集めておくとよいでしょう」

闘病ブログを見て落ち込んでしまう

 Fさんは卵巣がんと診断され、ネットでがん闘病ブログを読みあさるように。前向きなブログには、情報や元気をもらえる一方で、病状が悪化したり、亡くなったと知ると「自分もこうなるのでは?」と不安が増し、治療に前向きになれなくなってしまった。

▼井岡先生から

「闘病ブログは、思わしくない状況ほど気になるもの。つい読んで精神的な苦痛を抱えてしまうと治療もつらいものになります。

 ブログと上手に付き合っている患者さんは、役立つ知恵は参考にし、自分とは違うひとつのストーリーととらえて距離を置くことで動揺しなくなったとか。それが難しければ、あえて見ないほうが無用な不安に陥ることなく過ごせるでしょう」

治療がうまくいく・いかないのはこんな人

うまくいく人

・医師の説明には家族が同行する

・ネット情報は発信元とデータで真偽を確認

・疑問点はリストを作り診察時に医師に聞く

・民間療法やサプリは医師に確認してから

いかない人

・アヤシイ民間療法に時間も金もつぎ込む

・セカンドオピニオンに時間をかけ、がん悪化

・医師にグチばかり言い敵対的な態度をとる

・ブログの死亡報告で将来に悲観的になる

教えてくれた人……井岡達也先生●腫瘍内科医。山口大学医学部附属病院腫瘍センター准教授。がん治療に日々取り組む傍ら、NHK『ためしてガッテン』などメディアでも活躍。

取材・文/志賀桂子

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