苦節18年の仲野太賀、同世代俳優に「顔だけだろ」と嫉妬した過去と父・中野英雄の教え
週刊女性PRIME / 2024年6月5日 6時0分
「僕はずっと好きだったんだけどね。トラちゃんが」
これはNHK朝ドラ『虎に翼』で、伊藤沙莉が演じるヒロイン・寅子に、仲野太賀演じる夫役の優三がシレッと本音を伝えたセリフ。
「ドラマの舞台は、結婚することが女性の幸せであるという認識が一般的だった昭和初期。日本で初めて女性裁判官となった三淵嘉子さんがモデルの物語です。男性が中心となって物事を動かす社会で、伊藤さん演じる寅子は、女性の社会進出に向き合い奮闘していきます」(スポーツ紙記者)
そこで話題となっているのが、弁護士を目指し寅子の家に下宿する佐田優三役を演じていた仲野だ。
「弁護士となった寅子でしたが、未婚女性に向けられる世間の目が冷たい時代だったことで、依頼人から弁護の仕事をことごとく断られます。そこで“社会的地位”を得るために、仲野さん演じる優三と結婚をするのです」(テレビ誌ライター、以下同)
好演で“優三ロス”続出
独身同士で利害が一致したため……と思いきや、冒頭のとおり優三は密かにヒロインに思いを寄せていた。
「優三は、優しい語り口調で寅子を諭したり、ときには思い悩む背中を見て肯定し続けたり。社会の不条理と闘う寅子を、結婚前から陰になり日向になって支え続けた存在でした。ふたりは結婚して1児に恵まれるも、戦争は激化。優三にも召集令状が届き、出征することに。そして、優三は戦地で亡くなってしまうのです」
これにSNSでは、
《優三さん悲しいよ》
《涙が止まらない》
《優三さんロスで今日は立ち直れない……》
など、視聴者からは“優三ロス”の声が続出した。
「優三が出征するシーンでは、仲野さんの演技が光っていました。お互いを心配させないよう、夫婦で変顔をして、努めて笑顔になって別れを告げる場面です。仲野さんが必死に涙をこらえる表情には、言葉はなくとも本当は離れたくないという強い思いが表現されており、視聴者の胸を打ちました」
人気ドラマを観て俳優を志した少年時代
ヒロインのモデルとなった三淵さんも、最初に結婚した夫は戦地で亡くなっている。仲野の出番はここまでになるかもしれないが、彼が活躍する場は広がり続けている。
「7月から放送されるフジテレビ系の連続ドラマ『新宿野戦病院』では、仲野さんが小池栄子さんとW主演を務める予定です。10月から舞台『峠の我が家』で主演を務め、11月公開の映画『十一人の賊軍』も、山田孝之さんとのW主演作。さらに、'26年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』で主演を務めることが発表されており、まさに今、大ブレイク中なんですよ」(前出・スポーツ紙記者)
任侠ものをテーマにした作品が多いVシネマを主戦場として活躍する俳優の中野英雄の次男として、仲野は東京都杉並区で育った。
「中野さんは20年以上前に引っ越してきて、太賀くんは当時、小学校低学年だったと思います。このあたりに太賀くんと同世代の子どもがいなかったから、よくひとりで壁にボールを当てて遊んでいた姿を覚えていますよ。お兄ちゃんは年が少し離れているから、一緒に遊んでいるのは見たことがなかったですね」
そう話すのは、仲野の実家近くに住む女性だ。転居して、最初はなかなか友人ができなかったのかもしれない。しかし、別の近隣住民の女性は、こう明かす。
「中学生ぐらいになると、スケボーを片手に友人と歩いているのを見かけたことがあります。道でスケボーをしていたのか、近所の人に怒られていたこともありました」
友人もでき、すくすくと育った仲野は、13歳で芸能界入りして俳優デビューを果たす。父親の後を追って─と思いきや、
「仲野さんは、お父さんの演技を見て俳優を志したわけではないんです。過激なシーンも多いVシネを見る機会はほとんどなかったそう。きっかけは、'03年に放送された山田孝之さん主演のドラマ『ウォーターボーイズ』。当初は“シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング)がやりたい”と市民プールで練習を始めるも、“なんか違う。本当にやりたいのは俳優だ!”と気がついたと雑誌のインタビューで話しています(笑)」(映画ライター、以下同)
父親の“仁義なき教え”
ただ、思い描いたスターへの道は遠かった。
「なかなか望んだ仕事や役をもらえず、燻ったときもありました。同世代の染谷将太さんや菅田将暉さんとは大親友ですが、2人は10代から“売れっ子俳優”でした。一方、仲野さんはオーディションを受けるも落ち、ドラマの撮影時にスタッフからは“おまえの代わりはいくらでもいるから”と、ストレートに言われたこともあったそう。テレビで活躍する同世代の俳優を見て“顔だけだろ”と嫉妬していたこともあったと、明かしています」
スター街道を歩む友人に、連絡できなくなったこともあった。誰にも見てもらえない。そんな悔しさばかりが募っていった。それでも腐らず演技を追求する中で、転機となったのは'21年に公開された役所広司主演の映画『すばらしき世界』だった。
「この作品で、仲野さんは日本アカデミー賞の優秀助演男優賞を受賞し、名実共に演技派の仲間入りを果たすのです」
仲野は同作にキャスティングされたときの気持ちについてWEBインタビューで、《父親に、「誰かが必ず見てくれているから、一生懸命がんばれ」って言われた言葉を、久々に思い出しましたね》と語っている。
父・英雄も、息子の歩みを心配して見守っていたひとり。ただ、ときには厳しく教えを授けたこともあったという。
「英雄さんは幼いころから複雑な家庭で育ち、実母と一緒に暮らしたことがなかった。だからこそ“母親は大切にするべき”という思いを強く持っているんです。小さかった太賀さんが、母親に乱暴な口をきいたときには、激怒して家からたたき出したこともあったそうですよ」(芸能プロ関係者)
朝ドラでは、妻・寅子に夫の優三が、こう優しく語りかける場面がある。
「トラちゃんが後悔せず、心から人生をやりきってくれること。それが僕の望みです」
愛する女性を包み込む仲野の温かみのある演技には、Vシネ俳優である父親ならではの“仁義なき教え”が生きていて─。
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