「やせられないのは脳のせい」脳科学者が提唱、やせ体質に変わる “ダイエット脳” のつくり方
週刊女性PRIME / 2024年8月4日 6時0分
雑誌に載っている、いろいろなダイエット法を試しても長続きしない、運動を始めても三日坊主で終わってしまうなど、何度もダイエットに挫折し、そのたびに「私はなんて意志が弱いんだ」と嘆いている人は少なくないだろう。
でもダイエットが続かないのは意志が弱いからではなく、脳に問題があるのだ。
ダイエットが続かない人の脳は「肥満脳」
「仕事や家事に追われている、心配事があるなどの理由で自分の身体に意識が向かわずにいると、脳がだんだん鈍感になり、脳がつくり出すリズムが乱れ、過食や運動不足など肥満の原因となる生活習慣が身についてしまう。
これがダイエットが続かない人の脳の状態で、私は“肥満脳”と呼んでいます」
と話すのは、脳内科医の加藤俊徳先生。脳のリズムが乱れるとは、どういうことか。
「私たちは覚醒と休息を繰り返す脳内リズムによって、日々の生活を送っています。このリズムは、前述した多忙や心配事などによって簡単に乱れます。すると、脳が身体にとって正しい選択をしにくくなる。
つまり鈍感な状態になるので、太るとわかっていても高カロリーの食事をしたり、運動不足だと感じていても、身体を動かすことができない、といった状況に陥ってしまうのです」(加藤先生、以下同)
加藤先生によれば、肥満脳のままダイエットをしても、すぐにリバウンドしてしまうという。
「ですから、厳しい食事制限や激しい運動をする前に、脳を鍛えて感度を上げることが重要。そうすれば、脳のリズムが整ったダイエット脳に変わり、一生太らない身体を手に入れることができます」
脳のリズムを整える機能を鍛える!
脳には1000億を超える神経細胞があり、同じような機能を持つ細胞は近くに集まって脳細胞のグループをつくっている。加藤先生はそれらのグループを「脳番地」と名づけた。
例えばダイエット脳に必須の脳のリズムを整える役割を担うのは、思考系脳番地。
「思考系脳番地は、複数のことを同時に処理したり、物事のYES、NOを正しく判断するための、いわば脳の司令塔のような場所。
思考系脳番地が鈍感になっていると、空腹でなくても食べる、身体を動かしたほうがいいとわかっていても行動に移せないといったように、脳のリズムが乱れていき、太る習慣がどんどん身についてしまうのです」
ポテトチップスの袋を開けたら食べきるまでやめられない、歩ける距離でもついタクシーを使う、といった行動に心当たりのある人もいることだろう。
「思考系脳番地を鍛えるには、太る可能性のあることを避けるというルールをつくり、これを継続して正しい判断をするクセを脳に覚えさせることです。
例えば夜はスーパーやコンビニに立ち寄らない、袋菓子は食べきる前にパッキングして冷蔵庫に入れるなどして、食べないシチュエーションをつくるといったルールです。
また、何か一つ、自分の好物を選んで10日間食べるのをやめてみてください。その我慢を脳に覚えさせることによって、思考系の機能が強化されます」
腹圧を意識すれば管理しやすい身体に
さらに、ダイエット脳をつくるのに重要な役割を担っているのが、運動系脳番地だ。
「運動系脳番地は、身体を動かすためのさまざまな指令を出す場所です。ここが鍛えられているとエネルギーの消費量が増えるので、体重が減りやすくなります。
それだけでなく、『昨日食べすぎたから、なんとなく身体が重い』など、身体の変化にも敏感になれる。逆にこうした変化に鈍感だと自己管理ができなくなり、身体を動かそうという意識も働かなくなってしまうのです」
自分の身体の変化に敏感になるには、食事をしたときにおなかが膨らむ「腹圧」を脳が感じ取れるようにすることが大事。そのために加藤先生がすすめるのが、ウエストにベルトを巻いて食事をする方法だ。
「ウエストを締めつけないゴムのズボンなどをはいていると、締めつけがないので脳も腹圧を感じにくく、まだ満腹ではないと勘違いしてしまいます。
ですから、あらかじめベルトをして軽く腹圧をかけておくことで満腹感を確認しやすくなり、ベルトがきつくなったと感じたところで食事をストップすれば、食べすぎを防ぐことができます」
また、運動系脳番地が衰えて身体を動かそうという意識が働かなくなると、間食がやめられなくなるという。
「身体の中でも特に下半身が動いていない状態が続くと、人間は自然と上半身を動かそうとし、最終的には、空腹だからではなく口の筋肉を動かしたくて何かを食べるという状態に陥ってしまうのです」
運動系脳番地を鍛えるには、単純に運動するのが一番効果的。けれど、時間がない、運動が苦手という人に加藤先生がすすめるのが、利き手と反対の手で食べる方法。
「普段使わない筋肉を使うことで運動系脳番地が鍛えられるだけでなく、食べづらいことにより、早食いも防げます。また、利き手と反対の手で歯磨きをするのもおすすめです。
首から肩にかけてのこりをほぐす効果もあるので、肩こりに悩む人は積極的に試してみるといいでしょう」
もう一つ、隙間時間を利用して取り組みやすいのが、片足立ちを10秒間行うプチ運動だ。
「人間は右脳から出た命令で左半身の筋肉を動かし、左脳からの命令で右半身を動かしています。実はどの脳番地も左脳と右脳にまたがるように存在していて、両方を刺激するのが大切。片足立ちは、左右にある運動系脳番地を同時に刺激できるお手軽な運動なんです」
朝を制すれば自然とやせ習慣が身につく
これまでに紹介したのは、どれも簡単に始められそうなことばかり。それでもなかなかやる気のスイッチが入らないという人もいるだろう。それもまた、脳の仕組みからきている、と加藤先生。
「人間の脳は騙(だま)されやすく、今の状態が最適だと誤解して変化を嫌うのです。つまり肥満脳は運動不足や過食をベストの状況だと判断し、それを固定化してしまった状態でもあるわけです」
これを打ち破ってダイエット脳をつくるポイントは、何か一つだけ新しい習慣を取り入れること。
「最も効果的なのは、朝の行動習慣を変えることです。夜は疲れて続かないことでも、朝なら続けやすいでしょう。
手始めに、起きたら窓を開けて空気を入れ替えるとか、夜は早く寝て、食器洗いなどの家事を朝に回す、家の周りを30分ウォーキングするなど、朝の時間にこれまでより少しだけ多く動く習慣を取り入れるといいでしょう」
それに加え前述した思考系脳番地を鍛えるために10日間好きなものを我慢するトレーニングや、運動系脳番地を鍛える片足立ちを取り入れるなどすれば、どんどんダイエット脳に近づいていくという。
「肥満脳をダイエット脳に変えることは、自分で自分の身体と脳をコーディネートし、生活習慣のぜい肉を取ることであるともいえるでしょう。その結果、太らないだけでなく、毎日気分よく過ごせるようになります」
やせスイッチをオンにする技
肥満脳からダイエット脳にチェンジ!
ベルトを巻いて食事をする
ウエストにベルトを巻いて食事をすると、脳が腹圧を敏感に感じ取れるようになり、満腹感を確認しやすいので過食を防げる。
ベルトがきつくなったら食事をやめて。ベルトは腰痛サポートベルトでもOK。
片足立ちで脳の運動スイッチを刺激
片足で立ち、反対の足のももと膝の角度が90度になるように足を上げた状態で10秒間キープ。
すると、脳の左右にある運動系の脳番地が効率よく鍛えられ、体重の増加といった身体の変化に敏感になり、自然と食べすぎを防げる身体に。
教えてくれたのは……加藤俊徳先生●医師・医学博士。加藤プラチナクリニック院長。独自開発したMRI脳画像法で脳の診断・治療を行う。著書に『勝手に“やせ体質”に変わる!ダイエット脳』(Gakken)『一生頭がよくなり続ける もっとすごい脳の使い方』(サンマーク出版)など。
取材・文/伊藤淳子
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