《群馬・伊勢崎》「夫と息子です。加害者の方、見ていますか」飲酒運転死亡事故、遺族の苦しみ
週刊女性PRIME / 2024年9月10日 6時0分
《死ぬ事よりつらい事があるなんて知らなかった》
SNSで、こう苦しい胸の内を綴るのは、家族3人を失った女性だ。
5月6日、群馬県伊勢崎市の国道17号で、走行中のトラックが反対車線に飛び出して乗用車と衝突。これにより、乗用車に乗っていた塚越湊斗くん(2)、父親の寛人さん(26)、祖父の正宏さん(53)の3人が亡くなった。
トラックは法定速度を時速30㎞も超過する、時速90㎞で走行して、事故を起こした。
突然の事故で家族を失ってから、湊斗ちゃんの母親は冒頭のように悲痛な思いを吐き出し続けている。
事故当時、母親は第2子を妊娠中だった。8月12日には、寛人さんと湊斗くんの小さな骨壺の写真とともに、こう投稿した。
《夫と息子です。加害者の方、見ていますか。私は毎朝2人に挨拶しています。法定速度で走っていれば、今も私の横にいてくれた人達です。スピードを守らなかった加害者があの場所に居たせいで私の世界が死にました》
事故があった日はGWの最終日。湊斗くんたちは埼玉県のレジャー施設からの帰りだった。湊斗くんも自宅に帰ったら、母親に今日の思い出を話すつもりでいただろう。
《この世界に行きたい》
《事故が無かったパターンを想像して、おかえりって言った後じーじにお礼を言って見送って、手を洗って、パパが作った夕飯食べながら買ってもらった物や出来事を見たり聞いたりして、みんなでお風呂に入って寝かしつけしてもらって、ゲーム一緒にやって時間になったら寝室に行く。この世界に行きたい》
それは、もう叶わない。トラックの運転手が法定速度を守っていれば……。そう怒りと悔しさばかりが募った。
しかし、
「事故当初、運転手が勤めていた運送会社の社長は“わだちにタイヤをとられたのではないか”と話していました。ところが、群馬県警は8月20日、トラック運転手の鈴木吾郎容疑者(69)を自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)の疑いで逮捕したのです」(全国紙社会部記者、以下同)
事故直後に行った検査では、鈴木容疑者の血中から基準値を超えるアルコールが検出された。つまり、酒を飲んで運転していたのだ。
「鈴木容疑者が運転前に行った検査では、アルコールが検出されていなかったことから、検査から運転するまでの間に酒を飲んだとみられています。鈴木容疑者は“事故を起こしたことは間違いないが、よく覚えていない”と供述し、容疑の一部を否認しています」
加害者の飲酒運転で《また殺された》
鈴木容疑者が逮捕された数日後、湊斗くんの母親はSNSにこう投稿した。
《加害者が逮捕された日、初めて飲酒運転だと知らされました。聞き間違いかとも思いました。なので聞き返しました。でも飲酒運転だとハッキリ言われました》
酒が飲みたい――。そんな自分勝手な欲求が、3人の命を奪ったのだ。そして、湊斗くんの母親はこうも綴った。
《私達家族は加害者が逮捕された日、また殺されたようなものでした》
今は、夫・寛人さんの忘れ形見である生まれたばかりの幼子と2人、新築の家で生活する日々を送る。
8月下旬、『週刊女性』が事故現場となった伊勢崎市の国道17号沿いを訪れると、花やジュース、キャラクターの人形などが供えられていた。その一方、ここで事故があったことなど知らぬかのように、通行する車は猛スピードで駆け抜ける。
「ここの道路は、みんな時速80㎞は出していますよ。90㎞だしてる人もいるんじゃないかな。直線が続きますから、スピードを出したくなる気持ちもわかるんだけどね」
そう話すのは、タクシーの運転手だ。
疑われる飲酒運転の常習性
実際、法定速度である時速60㎞ほどで走行するタクシーを、後続から来る乗用車やトラックが次々と追い越したかと思えば、どんどん引き離されていく。過剰にスピードを出す車ばかりだ。
鈴木容疑者も、事故を起こしたときには時速90㎞で走行していた。仮に法定速度さえ守っていれば、これほどの大事故にはならなかった可能性もある。だが、タクシーの運転手は、続けてこんな衝撃の事実も明かす。
「酷い事故だったよね。隠れて飲むなんて。でもね、飲酒運転している運転手って、けっこういると思うんだよ。というのも、事故現場の近くのコンビニは、トラック運転手の休憩所になっているんですけど、そこで夜、トラックを停めた運転手が、タクシーで市街地まで酒を飲みに行っていると聞くんです」
国土交通省の飲酒運転防止マニュアルによれば、アルコール度数5%のビール500㎖を飲んだ場合、体内でアルコールが分解される時間の目安は約4時間とされている。もちろん、この分解時間の目安は性別、体重、体質、体調によって変化する。つまりアルコール度数5%の缶ビール2本を飲んだら、約8時間は最低でも運転できないということ。
「日ごろから、何杯飲んだから何時間休むとは考えないけど、私は軽く1~2杯飲んでも運転まで10時間は空けるようにしています。街中に飲みに行った運転手が、戻ってきてから10時間もそこで待っているとは思えません。捕まっていないだけで、飲酒運転をしている人は、少なからずいると思いますよ。同じような事故が、いつ、どこで起きてもおかしくないんです」(前出・タクシーの運転手)
《これが何年、何十年も続くんでしょ》
コンビニの前を通過する際、駐車場には多くのトラックが停車していた。これはあくまでも、噂でしかない。きっちりとルールを守る、真面目なトラック運転もいるはずだ。しかし、鈴木容疑者のように隠れて酒を飲む人間が少なからずいることから、捕まっていないだけで、違法行為に手を染める運転手がいる可能性は否定できない。
遺族は9月2日、高崎市内で会見を開いた。湊斗くんの母親は、会見でこう語った。
「ひとり亡くなるだけでもつらいのに、一気に3人も失ってしまった。この3人に関わってきた人たちみんなが、しんどい思いをしています。なので大丈夫だろうって思って運転している方、ちょっとの油断がたくさんの人の人生を狂わせるということを覚えていてほしいです」
会見後、湊斗くんの母親のSNSは更新され続けている。
《たった数時間でも離れたら寂しいのに、もう4か月も会えてないよ。これが何年、何十年も続くんでしょ。さらに本人不在の誕生日が来るんでしょ。家族の記念日くらい会えたりしないの? 息子の成長した姿、見たいんですけど。なんで私会えないの?》
遺族の時間は、あの日から止まったままだ――。
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