「“電池切れ”がまったくない」虎つば最終回目前、松山ケンイチが語る“伊藤沙莉のすごさ”
週刊女性PRIME / 2024年9月25日 6時0分
「桂場は長い間やらせていただいていますので、僕の中でもすごく大切なキャラクターだと思っています」
と話すのは、朝ドラ『虎に翼』で桂場等一郎を演じている松山ケンイチ。寅子(伊藤沙莉)が出会ったのは女学生だったころ。明律大学を経て日本初の女性弁護士、そして裁判官となった寅子の"はて?”に、一貫して"ド正論”を突き付け続ける。
武士の精神を桂場の中に取り入れたい
常に仏頂面で、何より大事にしているのは"司法の独立、裁判官の資質、あんこの味”。正しく&厳しくも、時にわかりづらい優しさを見せる。
「桂場のモチーフとなった方(石田和外さん)は小さいころからずっと武道に携わった人。そんな精神というか、ある意味、武士の精神を桂場の中に取り入れたいなと思いました」
本作の前には大河ドラマ『どうする家康』('23年)で本多正信を演じていた。
「武士って男性の職業というか、男性特有のものだったりもする。男性社会の中での立ち振る舞いや生き方、考え方、覚悟。自分自身もすごく研ぎ澄まされていく部分だったと思います。(桂場は)司法の独立に、ものすごいこだわりがあり、そのために生きているようなところがある。少しでもブレるわけにはいかないから、自分をすごく律している部分も。もしかしたら、司法に携わる人には同様であってほしいと考えているのかもしれない」
そんな厳格な桂場と松山自身の生き方は"全然違う”というが、甘いもの好きなところは似ていると微笑む。
「前に、花岡(岩田剛典)が"法がそうなっているから”と餓死しましたが、桂場はどこかで線引きしている。そういうところは、生きるうえでなくてはならない感覚だったりするのかなと思って。そこは自分にも理解できるというか、近いなと思いました」
無視して食べればいいのに、食べない表情を変えず、自分の心情を説明することもない桂場。演じるうえでの難しさがあったのでは?
「出てくるたびに煽り続けている感じ、するじゃないですか。僕はいつもそう思っていました。最初のころ"同じ成績の男と女がいれば、男を取る”みたいなことも言っていますし。ある意味、それが背中を押してもいるんですが、桂場ってそういうふうにしか表現できないんだろうなと思って」
もし、それだけの人物であったなら魅力に欠けていただろう。
「幅が狭くて、記号でしかなくなっちゃう。仏頂面をどこまで崩して、どこまで遊ぶのかは常に探っていましたね。表情で表現できない代わりに、他の部分でできることはたくさんあるので」
伊藤沙莉は「迷いがない」
その代表格は団子。食べようとした瞬間、寅子に話しかけられるのがお決まりだ。
「無視して食べればいいのに、食べない。話すなら(団子を)置けばいいのに、置かない。どういう人間性なのか、なんとなく伝わるじゃないですか。団子とトラちゃんの話、どっちを優先するのか迷ってるっていう表現になる。今回、そんな部分をいろいろと探れたし、試せた。記号的な桂場ではない、また違った見せ方をいつも考えていました」
ついに桂場は最高裁長官に就任。物語は尊属殺の重罰規定について、違憲か合憲かを争う裁判へ。
「桂場は平等性、公平性がすごくある人間だと思うんですが、穂高先生(小林薫)の思いを何とか完遂させたいし、任期の中で何とかしようと思っていたこともいろいろある。ついには自分の意見や公平性すらも切り捨てて、司法の独立のために舵を切っていく。トラちゃんや法曹界にいる人たちにとっての敵や壁になる瞬間があります。
(寅子と桂場の)理想と理想のぶつかり合いみたいな。ひとりの人間が最高裁長官になってジャッジをするのは本当に難しいことだし、時代によって正解も変わってくる。そして認めることは本当に大切なことだと思いますし、認めてからどう対峙し、付き合っていくのか。ぜひ最後まで見届けていただければと思います」
伊藤沙莉のすごさって?
桂場とは、何かと相対することが多い主人公・寅子。演じる伊藤沙莉をどう見ている?
「僕なんかよりも出番が多く、毎日撮影に励んでいる状況だと思うんですが、"電池切れ”みたいになることがまったくない。それは本当にすごいと思います。僕は大河ドラマ(『平清盛』'12年)で経験していることなんですけども、電池切れになると役の方向性が迷子になったりする。
それを修正しようとすることさえ考えられなくなる状態は何度か経験しているんですけども。なんとなく沙莉ちゃんを見ていると、迷いがないように感じていて。そこが本当にすごいなと思いますし、体力あるな〜って思います」
『虎に翼』 毎週月〜土曜、朝8時〜(NHK総合)ほか放送中
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