認知症予防!上から読んでも下から読んでも同じ「回文音読」脳に効くXで大バズリの作品
週刊女性PRIME / 2024年9月28日 12時0分
「回文」とは、「竹やぶ焼けた(たけやぶやけた)」や「新聞紙(しんぶんし)」のように、順方向に読んで意味を持ちながら、逆方向から読んでも同じ音になる単語や文章のこと。
言葉遊びを超えて心を動かす作品に昇華
子どものころに言葉遊びとして口にしていた人も多いはずだが、昨今ではもはや遊びを超えた「文学」として認知されるまでに進化しつつある。人気の回文作家が登場し、SNSでは遊び心や世界観を感じる回文作品が発信されているのだ。
例えば「良い骨格とふくよかな腹シワなき手ステキなわしらは仲良く太くかっこいい」の一文。なんだか、物語の登場人物のような、貫禄ある風貌の仲間たちの様子が思い浮かぶが、これも実は回文。逆から読んでも同じ音だ。
「この回文をXで発表後、たくさんの“いいね”やコメントをもらいました。それをきっかけに、新聞やテレビで取り上げてもらったり、作曲家の方に曲をつけていただいたりもしました」
というのは、作者で回文作家のコジヤジコさん。福祉施設から、施設の資料に載せたいという申し出もあったという。実際、高齢者施設で回文を脳トレに活用しているという話も聞くが、その効果について脳科学者の加藤俊徳先生に話を聞いてみると、
「回文を味わうことは、記憶系の脳番地を刺激し、会話に対する集中力がアップしたり、一度聞いたことを忘れにくくなったりします」
回文を読み解くことで脳がぐんと活性化!
回文で脳を刺激するには、逆から読むことが効果的だと先生は言うが、特に声に出すことが脳を活性する。
「回文を逆から読もうとする時、順方向から読んだ時の文言を、無意識に一時的に記憶しながら読む人が多いと思います。なぜなら、順方向と逆方向で、音は同じでも区切る位置が違うため、素読みでは読みにくいからです。
ここが回文の逆読みの難しい点といえますが、だからこそ脳を鍛えることができるのです。また、一度順方向に読んだものを、逆方向に“反復する”ことも脳の刺激になります」(加藤先生、以下同)
回文を逆から読んで、音が同じだと確認できた時、脳は“発見の喜び”を感じる。
「これが“理解のマッチング”です。例えば、“ポテトサラダ”を逆から読んだら“ダラサトテポ”。これだけでも脳の運動にはなるのですが、回文であれば、逆読みで意味が通じた時、正しく読めているという自己採点ができ、パズルを解いたような快感を得ることができます」
問題を解いている時、つまり回文を逆から読もうとしている時は、脳が働いて酸素を消費しているため、低酸素状態になる。そして回文を読めた(解けた)瞬間に上昇していた脳圧が下がり、低酸素が解消。この瞬間に脳が快感を感じる。長い回文ほどこの感覚が大きく、脳の活性になるといえる。
「そういう意味では、回文を作ることが一番脳を使う作業といえます。その次が音読です。かくいう私も聴覚記憶が苦手なので回文音読は得意ではありません(笑)。苦手な人は短いものからチャレンジをするといいですね」
音読がうまくできたら回文作文にもトライ!
回文という、不思議な言葉の連なり。一体どこからヒントを得て作っているのだろう。
「ゴールを決めて作る、ということはほぼやりません。まず、何かしら言葉や単語を決めて、作り始めます」(コジヤジコさん、以下同)
言葉には回文になりやすいものとなりにくいものがあるという。なりやすいものには、例えば「よる(るよ)」や「わたし(したわ)」などで、コジヤジコさんの回文作品や、絵本のテーマとしても登場している。
「ポイントをまとめると『ひっくり返してくっつけて、一文字足してできあがり』です。そこにどんな一文字を入れるかがアイデアになります。『よるよ』という私の絵本も、この作り方をベースに作りました」
これは回文のもっとも基本的な作り方。脳に負荷を感じながら、早速作ってみよう!
回文は誰でも作れる!偶然性を楽しもう
「回文はどんな人でも作れる」とコジヤジコさんは言う。
「“発表のハードルが低い”ことが理由の一つです。例えば『詩を作って発表してみましょう』と言われたとしますよね。自由に考えて、恥ずかしがらずにあなたらしく、と。いや、そう言われてもやっぱり初心者には恥ずかしい。
でも回文なら、言葉をひっくり返したら偶然できてしまった、というある種の“言い訳”ができます。なので、照れや躊躇(ちゅうちょ)を感じることなく、作ったり発表したりすることができると思います」
何か表現をしてみたい、でも一歩目が踏み出せない。そんな人に回文はうってつけ、とコジヤジコさんはすすめる。
「まずは、気になった言葉をひっくり返してみることから始めてみてください。そのうち、目に入った単語を無意識に反対から読んでしまうくらいハマってしまうかもしれません。
なんでもひっくり返したくなっちゃう、というのは、回文作りの初期には“あるある”なんです。自分も、文字を見ると無意識に反対から読んでしまいますよ(笑)」
目に入った単語を無意識に逆読み、という習慣も、脳を活性化してくれそう!
自由で不自由。だから脳を刺激する
ある種の制約があるからこそ、難しくて面白い、そして心に残る回文。その魅力は?
「ネット上でバズる回文は、たいていナンセンスでユーモラスなものが多い。もちろんそれも回文の面白さではありますが、魅力はそれだけではありません。
グッとくるもの、ちょっと切ないもの、想像が広がるもの、そんな回文も作れるし、作りたいと思っています。回文だからこそこんな素敵な詩になった、そんな心に届く一文に出会いたいです」
すべてを表現しすぎないことで、読む人が自由に想像できる、そんな作品を目指しているというコジヤジコさん。回文の形式も定型にとらわれず、さらに不思議で迷路に迷い込んでしまいそうな作品も。
脳を柔らかくほぐして、回文の世界を楽しんでみよう。
「情景が思い浮かぶ」回文
詳しい描写がなくても、不思議なリズムの中にワンシーンが浮かぶ
バクも乗る夜の木馬(ばくものるよるのもくば)
坂の下歩いている、あたしの傘(さかのしたあるいているあたしのかさ)
読むよ手にミステリ借りて隅にて読むよ
(よむよてにみすてりかりてすみにてよむよ)
「物語を感じる」回文
お話の一文を切り取ったように、言葉のパズルが想像力を刺激
悔いて、聞いて、目覚めて、生きていく(くいてきいてめざめていきていく)
よしなさい蝶よ 小さい蝶よ 小さな詩よ
(よしなさいちようよちいさいちようよちいさなしよ)
夜 詩を読み 優しい子は歌う 歌うは恋しさ 闇夜を知るよ
(よるしをよみやさしいこはうたううたうはこいしさやみよをしるよ)
「心に寄り添う」回文
日々のストレスに疲れている時、そっとやさしく心をほどいてくれる
なら軽く頑張るか、光る番が来るからな
(ならかるくがんばるかひかるばんがくるからな)
なんか辛かろ、風呂から浸かんな(なんかつらかろふろからつかんな)
さあ生まれ変わり、別れ舞う朝(さあうまれかわりわかれまうあさ)
解説してくれたのは……加藤俊徳先生●脳内科医。医学博士。加藤プラチナクリニック院長。独自に開発したMRI脳画像診断法を用い、1万人以上の脳を診断、治療。『1日1文読むだけで記憶力が上がる!おとなの音読』(きずな出版)など、著書多数。
回文を作ったのは……コジヤジコさん●回文家、言葉遊び作家。主にXで回文作品を発信。回文絵本に『よるよ』(偕成社)、『まくらからくま』(岩崎書店)、回文集に『よるのいぬいのるよ』がある。X:@cozyar_kaibun
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