「格闘技好きとカレー好き」ニッポンの舵取りはどっちだ? 石破茂現首相vs野田佳彦元首相
週刊女性PRIME / 2024年10月25日 11時0分
衆院選の真っただ中、候補者たちは各地で思いの丈を訴え、各政党の党首や幹部も応援のため全国を飛び回っている。本命となるリーダー2人の素顔と、私たちの暮らしは――。
両氏とも女性活躍、男女格差の是正を掲げるが……
自民党総裁の石破茂首相と立憲民主党代表の野田佳彦元首相。石破氏が1学年上だが、この選挙期間中は同年齢だ。
「共に体格がよく、弁舌が巧み。野田元首相は石破氏が自民党総裁に選出されると、“がっぷり四つに組んでどっちが押し切るかの論戦をしたい”と記者団に語ったほど。
国会の党首討論では、野田元首相が石破首相に対し、政治資金収支報告書に不記載があった自民党議員の大半を公認する可能性を指摘して“裏金隠し解散ではないか”と迫りましたが、持ち時間30分では不完全燃焼だったようです」(全国紙の政治担当記者)
この選挙の勝敗によって、私たちの暮らしはどう変わるのか。
政治評論家の有馬晴海さんは、こう指摘する。
「石破さんが首相を続けても、野田さんが政権を奪取しても、消費税10%は据え置きになります。政権に遠く及ばない党は、減税とか、消費税をゼロにするなどと言って議席増を狙っていますが、立憲は政権を取る可能性があるので無理筋の話はできません。立憲は、公立小・中学校の給食費や国公立大学の授業料を無償化し、私立大学と専門学校には同額程度の負担軽減をすると公約に掲げています。そのためには税金が必要です」
両氏とも、景気回復で税収を増やす狙いという。
「いわば“市場任せ”です。ただ、景気がよくならないのに国民の負担だけを増やすことはないでしょう。景気が回復せず、税収が増えなかったら借金するしかなくなります」(有馬さん、以下同)
私たちに関わる選挙公約を見ると、自民は女性活躍の項目で《あらゆる分野における政策・方針決定過程に女性が参画する機会の確保に取り組む》ことや女性の所得向上などを掲げる。立憲はジェンダー平等の項目で《男女の経済的格差を、「同一価値労働同一賃金」の法定化や正規雇用化、女性役員登用についての目標引上げなどにより解消します》と公約する。
政治家が、女性の活躍や男女格差の是正を言い始めてからずいぶんと年月が流れた。本気度を推し量るには、リーダーが信頼に足る人物か見極める必要があるだろう。
議会で6時間演説して“千葉に野田あり”
両氏の政治家としての歩みは大きく異なる。政治家の父親を持つ二世議員の石破氏に対し、野田氏の父親は元自衛官。石破氏は銀行員からいきなり国会議員に転身したが、野田氏はガス検針などのアルバイトをしながら政治の勉強を続け、千葉県議会議員を経て国政に移った。
「野田さんは県議時代、議会で6時間演説して“千葉に野田あり”と、その名が中央政界に轟いた演説のスペシャリストです。38年間、毎朝、地元の駅頭に立ち、1人でビラを配ってきました。首相経験を経ても、行動が変わらないのは異色といえるでしょう」
地元・船橋市では有名な話。元首相がビラを配っても、通勤・通学で急ぐ多くの人が素通りするが、野田氏は「おはようございます」と頭を下げ続けた。政界では“会いに行ける元首相”と呼ばれているという。相田みつをさんの《どじょうがさ 金魚のまねすることねんだよなあ》という詩を引用して以来、泥くさい“どじょう”を自認し、二世議員を“金魚”に例えてぶった斬ってきた。
趣味は格闘技観戦。プロレスや相撲が好きで、ときの横綱のダーティーファイトを嫌って演説に取り入れたことも。
政府・自民党が森友・加計学園問題の国会審議から逃げるかたちとなった2017年の解散・総選挙でも怒りをあらわにした。当時、解散を格闘技で例えると――と本誌が問いかけると、
「いきなり横綱が突っかけてきたというか、立ち合いの前に張り手を仕掛けてきた。王道じゃないですよね。やり方がね。もうちょっと、堂々とした解散の仕方があったはずだと思います」
と答えていた。この衆院選についても同様の捉え方をしているに違いない。
一方の石破氏は、趣味が多彩。鉄道オタクで、キャンディーズなどの1970年代アイドルに精通し、軍艦や戦闘機のプラモデルを作るのが好きだった。今は老眼のためプラモは“卒業”したという。
「読書家で勉強家でもあります。人とは群れたくないようで、色紙に揮毫する座右の銘は『鷙鳥不群』。ワシのような強い鳥は群れない、という意味です。私も酒席にお誘いしたことがありますが“ちょうど読みたかった本があるので”と断られてしまいました。お酒は嗜むので銀座にちょいちょい1人で出没しているようです。要するに1人でいるのが好きなんです」(前出・有馬さん)
カレーをおいしく作るひと工夫
サービス精神は旺盛だ。地元・鳥取のフィギュアミュージアムの開館セレモニーで、求められるまま漫画『ドラゴンボール』のキャラクター『魔人ブウ』のコスプレで登場して盛り上げた。
好物はカレーライス。料理が得意で2018年に本誌がインタビューした際、おいしいカレーを作る秘訣について、
「玉ねぎをよく炒めることです。メーカーの人に伺うと、カレールウの箱に書いてあるとおりに作るのが一番おいしいそうで、その基本をはずしすぎないようにしつつスパイスでひと工夫します。ご飯はかために炊いたサフランライスがいいですね」
と丁寧に教えてくれた。
いずれも人間味あふれるリーダーといえそうだが、政治家として強みと弱みは何か。
「石破氏は質問をはね返す豊富な知識があります。飄々と追及をかわすのもうまく、相手の口車には乗りません。最強の“盾”です。おかしいものはおかしいと率直に言える政治家だったのに、自民党の悪いところを隠して選挙に突入しました。古い自民党の政治家に羽交い締めにされたのでしょう。そのうち“石破カラー”を出して自民党を変えてくれるんじゃないかと見ています」(前出・有馬さん、以下同)
一方の野田氏は、首相経験者ゆえに裏側も熟知しており、政権が都合の悪いことを隠そうとしても逃さないという。
「最近は、声を1オクターブ下げた迫力ある重低音で裏金問題を追及しています。長年野党だったから攻撃が得意で、質問で追い込むのも抜群にうまい。いわば最強の“矛”です。ただ、裏金はけしからんと訴えるだけで有権者がなびくでしょうか。
忘れられないのは、首相在任時の2012年に解散・総選挙を国会で約束し、結果的に当時の民主党の大惨敗を招いたことです。公示前の231議席を57議席まで減らし、自分の一存で仲間を“見殺し”にした罪は重いです」
同い年の政治家だが、二大政党のリーダーとして背景や特性は大きく異なる。盾と矛、どちらが有権者に対して効果的にアピールできるか。審判の日が迫っている。
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