「夫と不倫女を引き離して」3万件の相談にのってきた“別れさせ屋”が語る、男と女のリアル実態
週刊女性PRIME / 2024年11月7日 8時0分
夫と不倫相手を別れさせたい、元カレと今の彼女を別れさせたいなど、依頼者の希望に応え、自然な別れへと導く「別れさせ屋」。調査の仕方からターゲットに近づく驚きの方法、そして、週女世代の女性に多い「ある依頼」とは―。35年以上の歴史を持つ、業界最大手のプロがこっそり明かす。
「SNSが普及したことで出会いの場が広がり、世代を問わずネット経由で交際に発展することも一般的に。それに伴い不倫も増えていて、私たちへの依頼も、リアルではなくネットで知り合ったケースが5割近くを占めています」
そう話すのは「別れさせ屋」事業を営む1stグループの専務、望月雄介さん。
カップルの縁を切るのが仕事
「文字どおりカップルの縁を切るのが仕事で、当社では夫や妻と不倫相手を別れさせてほしいという案件が半数以上。『別れさせ』のご依頼は月に20~30件あります」(望月さん、以下同)
人間の感情を第三者が操り、ビジネスとしてやっていけるのかと疑問を抱かずにいられないが……。
「取り扱うものが人間関係そのものなので、成功率などを数字で伝えることはむずかしいです。たまに、いくらでもお金を積むので成功させてほしいという人もいるのですが、絶対ということは確約できません。また、相談の段階で、暴力やDVが絡む事件性があるものは、警察に任せるべきなのでお断りします」
別れさせ屋は探偵業から派生した仕事で、1stグループも、もとは探偵社だ。
「探偵社は浮気調査のご依頼が多く、例えば夫を調査して女性とホテルに入る写真など不貞の証拠が取れたとき、妻が離婚したい場合は離婚調停や裁判でその証拠を使う。でも実は、クロとわかっても離婚したくないというお客さんも一定数いるんです。証拠を夫に突きつけても、探偵を使ったとわかれば夫婦の信頼関係は崩れて、再構築は困難。そこで、“不倫相手が特定できたなら別れさせたい”という要望に応えるべく生まれたのが、この事業です」
別れさせ屋は、いわばどうしても気持ちの整理がつけられない人たちの最後のとりで、というべきか。
綿密な工作で別れさせる道へ誘導
まずは、浮気相手などターゲットの調査から始まる。
「夫が不倫している場合、相手の女性の住居や仕事、毎日のルーティンについて尾行や張り込みで徹底的に調べます。それをもとに女性工作員がターゲットに接触して友人関係を築き、なぜ不倫関係になったのかを聞き出す。夫が独身だと偽って不倫と気づいていない場合は、既婚者だと気づくよう仕向け離れさせたり、相手女性に男性工作員を知り合わせて、気持ちが別に向くようにさせたりします」
別れるように相手を真正面から説得するのではなく、人間関係の環境を変えて選択肢を増やすことで別の道に誘導し、本人の意思で関係を終わらせるのだ。
「そのためにはターゲットと工作員を自然に接触させることが重要なので、心理的なテクニックを用います。例えば何度も会うことで親近感が湧く“単純接触効果”を狙い、ターゲットの通勤のバス停に工作員が毎日並んだり、ターゲットが住むアパートの空き部屋を借りて顔見知りになるんです」
ターゲットと親密な関係が築けたら、別れさせるまでのシナリオを作って実行していく。内容は一件一件異なるが、基本的にはカップルが連絡を取り合ったり、デートする“共有時間”を半減させていくという。
「人間関係は相手への好感度によって、この共有時間が増減します。なので1週間に2回会うカップルであれば、週1回に減るように、片方に工作員をつけて共有時間の半分を奪い取る。すると半分にされたほうに不平不満が出るので、別の工作員がその愚痴を聞いてストレスを癒し、自然に工作員への好意が高まるようにします。
さらに工作員とのLINEやツーショット写真など浮気の証拠を相手に見せ、別れの決定打に。しかし想定どおりにいかないケースも多いので、修正をしながらトラブルにならないように慎重に進めていきます」
工作員として約300人が在籍。俳優のように見た目がいい人たちなのか。
「そんなことはありません。自分はモテないとわかっている男性に美女が近寄ってもだまされていると思う人が多いですから、ターゲットの容姿や好みに合わせてさまざまな外見の人を用意しています」
料金は、どのくらいの頻度で工作員を何人使うか、車や部屋を用意するかなどにより変わるが、経費と成功報酬を合わせて100万円くらいが目安。
「期間は実働が約3か月、別れさせた後によりを戻さないように監視するアフターフォローが2~3か月。トータルで半年くらいとお伝えしています」
週女読者の50~60代から多い依頼は、夫と不倫相手の別れさせ。代表例を紹介する。
中年不倫カップルの意外な出会い方
依頼主のAさん(55歳)は、結婚30年のパート主婦。夫(57歳)が家でスマホを離さずコソコソ電話するなど、怪しい行動が増えたと感じ、まずは、浮気調査を依頼。
「尾行してもしっぽを出さないので、“餌まき作戦”を決行。Aさんに“3日間実家に帰る”と嘘をついてもらい、夫を自由にさせる機会をつくりました」
すると、夫は女性と2人でカラオケに行き、そのあとラブホテルへ。不倫の証拠をつかんだうえで女性工作員が相手の50代女性に接触すると、出会いは某フリマアプリの「カラオケ友達募集」の掲示板と判明。
工作員がその女性に男性工作員を紹介していい仲にさせ、偶然を装い夫に2人のデートを目撃させると、関係に亀裂が入り、夫婦は元のさやに収まった。
「最近の傾向として、中高年はマッチングアプリに加え、Aさんの夫のようにアプリを通じてご近所友達をつくりたいという動機から不倫に陥る事例が増えています。例えば、とあるフリマアプリは同じ趣味の仲間を募集できるのですが、そこで知り合った同世代の異性に会ううちに恋愛感情が湧き、良からぬ関係に発展することも多い」
50~60代の母親からは、子どもと恋人を別れさせてほしいという依頼も多いという。
Bさん(60歳)は地方都市の開業医の妻。大学進学で東京に出た研修医の息子(26歳)から、配属先で知り合った20代前半の看護師の女性と同棲を始めたことを電話で聞かされる。将来は実家の病院を継ぐのだから、嫁は女性医師でなければと交際に猛反対すると、息子と連絡が取れなくなってしまった。そこでBさんは別れさせを依頼。
「カップルそれぞれに別の選択肢をつくると確実性が上がるので、彼女と息子さん両方に工作員をつけました」
そののち息子が彼女を振るかたちで、関係は自然消滅。Bさんは胸をなでおろした。
「親の過干渉の面もあるので、親御さんの中には相談しているうちに考えが整理され、依頼をあきらめる方も」
悪質な業者が次々に参入
そんな別れさせ屋だが、近年は詐欺まがいの業者が増加している。
「探偵業の届け出には特別な資格は必要なく、簡単に許可が下りてしまうので、悪質な業者が次々に参入しています。例えば、別れさせるのは無理な案件でも安価で引き受け、結果が出ないまま多額の追加費用を取られるといった被害も出ています」
業者選びはネット検索が多いが、ここが落とし穴に。
「現在、別れさせ業者を比較したランキングサイトが乱立しているのですが、これは悪徳業者が主導してつくったものがほとんどなので、信用しないでください。そもそも守秘義務のある業界で、依頼者の声を集めて順位づけすることはほぼ不可能。信頼できる業者かは、実際に電話や面談で的を射た回答をしてくれるか、返金システムがあるかどうかでチェックを」
また、利用には慎重になってほしいと、離婚や男女関係の問題に詳しい法律事務所Z東京オフィスのマネージャー弁護士、溝口矢さんは言う。
「別れさせ屋を利用すること自体がただちに違法ということではないですが、万が一裁判などに発展した場合は、倫理観や道徳観を問題視されることも。また、費用が高額なため契約をめぐってのトラブルが多いのも事実です。
行きすぎた調査で違法な盗撮をしたり、婚姻関係を破壊するために肉体関係を持たせるような行為は、依頼者自身も法的責任の対象になりかねません。利用の際には、どういった方法で調査をするのか、料金は明確に提示されているかなどを慎重に確認する必要があります」
何にせよ、駆け込むような状況にならないのが一番なのは間違いない。
望月雄介さん●別れさせ屋、復縁屋、婚活屋を請け負う株式会社1stグループで専務を務める。探偵として21年のキャリアを持ち、調査員、工作員、相談員を歴任。直接対応した相談数は3万件を超える。
取材・文/小新井知子 イラスト/ますみかん
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