「異性問題より国民の手取り」玉木雄一郎は“針のむしろ”状態でも、レッドカードが出なかった事情
週刊女性PRIME / 2024年11月14日 9時0分
約30年で100以上の選挙を統括し、国会にも豊富な人脈を持つ選挙プランナーの永田太郎が政治の深層を語ります。
永田町の風景が一変、初登院や第2次石破茂内閣の発足どころではなくなりました。総選挙直後に行われる特別国会11月11日、8時前の国会正門前。初登院を待つフレッシュな顔ぶれや後援者らは、これから議員バッジがつく喜びに満ちており、その話題は出なかったのです。
朝6時に配信された国民民主党・玉木雄一郎代表の高松市観光大使・小泉みゆきとの不倫報道です。
それが急遽8時17分に会見の予告が出され、9時30分に衆院会館で謝罪会見となります。そこから「玉木は終わったか」「今後どうなるのか」「来月の税制調査会が103万円の壁のヤマなのに」という空気が広がっていきました。
13時から衆院本会議を前にし、沈痛な面持ちの国民民主党の両院議員総会。首班指名の直前とあっては、躍進の象徴である玉木代表にどうするもこうするもできず続投を了承します。
本会議場は、30年ぶりの決戦投票を目の前に、傍聴席も大盛況。しかし、最も注目された男は石破茂総理でも立憲民主党の野田佳彦代表でもなかったのです。この男、玉木がどんな顔をして現れるのか。
聴衆の間にも怖いもの見たさが見え隠れしていました。
私も眼下の渦中の人を凝視していましたが、脂汗がにじむ中でも歯を食いしばって立ち切ったように見受けられ、総選挙で躍進した政党代表としての矜持は、辛うじて保たれていたようです。
そして臆せず19時から有楽町駅前で直接、国民に街頭演説で謝罪し「一定のみそぎ」を済ませた格好となりました。
フジテレビ系は、FNNで議場退出直後の玉木代表に政策実現への意気込みをとうとうと語らせ、関西テレビでは橋下徹氏が新たな政策形成プロセスを作ってとエールを送りました。
国民民主党は中堅政党に格上げされたばかり、玉木代表以外に一般国民に知られた議員がいません。ここを持ちこたえないと、党の存亡に関わる危機になります。
肝心の国民世論ですが「私事である不倫よりも、公の政策で手取りを増やせる期待感が勝る」と怒りは盛り上がらず、初動の反応には安堵していたことでしょう。
SNSなどを見ても、「不倫うんぬんより政治家としての働きぶりが大事だ」という声も多いようです。
そしてお家の一大事とばかり、翌日12日10時30分から再度の会見で「火消し」に全力を挙げる結束力を見せます。
自民党の異性問題との大きな違い
しかし仮に石破茂総理が、同じ事をしたらこれで済むのでしょうか。まず家族のうちでも最も当事者となる佳子夫人が「私や娘たちが叱責して許しても、国民が許さないわ。平身低頭自分でけじめをつけなさい」と鈴をつけ、数日で辞任したのではないでしょうか。
次に所属政党である自民党の執行部も、総選挙での惨敗もあり、同様に「総裁として支えられない。この大変な時に、党にどれだけ迷惑をかけるんだ。地方創生は国民の期待、とか政策を語る以前の話だ。出処進退を早くつけるべし」と断を下すはずでしょう。
自民党では、女性問題の報道で、宮崎謙介氏や宮沢博行氏はただちに議員辞職、吉川赴氏が離党、山田太郎氏も文部科学大臣政務官を辞任するなど、厳しい対応が多いのです。
野党の幹部では2017年9月、民進党代表に選出された前原誠司代表は翌日、幹事長に山尾志桜里氏の大抜擢を決め安倍政権を追及するヒロインの誕生と思われました。しかし4日後、週刊文春電子版が不倫疑惑を報道し、スターになったはずの山尾氏はその翌日に民進党を離党する事態に。腹を切ることで責任を果たし、メディアでも活躍しているケースも多いようです。
こうして政治家のスキャンダルへの処分を見ると、次の3つのステークホルダー(利害関係者)への対応となります。元々好意を持って不倫関係となったりお金での“交友関係”なので、相手方とどうこう、というのは「共同責任」であまり問題となりません。また、家族も一家の大黒柱なので、不祥事であっても支えねばならない。そうすると「所属政党、中でも執行部」が、世のそしりを一緒に浴びてでも守る気があるかが分かれ目となります。
今回、国民民主党は一丸となって玉木代表を支えました。一応今週末にも行われる世論調査での支持率の減少幅が、最大の試金石となるでしょう。
テレビのコメンテーター達は、通り一遍の批判止まりで政策遂行への「障害」とまで断じてはいません。パーティー券の不記載問題と全く異なる姿勢といえるでしょう。自民党も立憲民主党も、人気者となった玉木代表を表立って追及できず静観。ただ実際の政策協議で強硬に出ても「だいぶ威勢が良いですね。ただ下半身は…」といった目で見られ、迫力はなくなるかもしれません。
犯罪ではない異性問題は、興味本位の要素があり、党の公金を使っていたとか公的行事のさなかだったかなど、世の批判が沸騰するには何か新事実が必要となります。公人としての玉木代表の脇の甘さは、総理を目指すには不適格の烙印を押されました。公党としての国民民主党も、与党の中核となるガバナンスを備えていないのが浮き彫りとなりました。いずれも人気がバブルの状態だったが、ポテンシャルの「上限値」が見えてしまった。
しかしそれでも、手取りに直結する政策実現への期待感を崩すには至らないでしょう。もちろん「家族を大事にしない政治家に国民を守れるのか」といった厳しい声もあります。
しかし躍進政党が吹っ飛びかねない恐怖感で始まったこの不倫問題は、このまま収束していくレアなケースになる気配といえそうです。
政策への期待、党の一枚看板であったこと、重ねての会見で火消しに努めたこと、など様々な要因がありますが、もしかしたらこのケースは政治家の「異性問題」が殊更に問われなくなるきっかけになっていくのかもしれません。
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