「“痛いから湿布を貼って安静に”は間違い」冬のツラい“ひざ痛”は伸ばして治す
週刊女性PRIME / 2024年11月29日 8時0分
「冬はひざの痛みを訴えて来院する患者さんが目立ちます。寒さによって血流が悪くなり、組織がこわばり、痛みにつながりやすいからです」
そう教えてくれたのは、柔道整復師などの資格を持つ高林孝光さん。ひざを温めて血流をよくすることも大切だが、痛みが起こってからの治療に注目してほしいと語る。
誤解や間違いだらけのひざ痛治療
「ひざに痛みがあるときは、まず安静と痛み止めと思っていませんか? これは間違いです! 実はひざが痛くても、運動を行うことが痛みの解消に大切なのです」(高林さん、以下同)
ひざ痛治療の常識と思われていた痛み止めと湿布、そして安静。これを続けていくと、逆に痛みが長引き、回復が遠のくというのだ。
「ひざ痛の原因の9割を占める病気は、変形性膝関節症です。ひざ関節の軟骨がすり減ることによって痛みや腫れを起こす病気です」
このようなひざ痛に国内ではどのような治療が行われているかというと、
「鎮痛剤と抗炎症薬、つまり痛み止めと湿布薬の処方です。しかし、このような方法は世界的にみても日本だけ。海外では運動療法が中心で多少の痛みがあっても、積極的に身体を動かすことで痛みを解消する方法を行っています」
湿布を貼って安静にし続けていると、ひざ周りの筋肉が萎縮して、痛みはますます激しくなるというのだ。
「軟骨には、酸素や栄養を運ぶ血管がありません。そこで軟骨は、関節全体を包んでいる関節包の中にある関節液から、栄養などを吸収しています。運動を行うことで、関節液の循環が促され、軟骨や周囲の筋肉のコンディションを整えてくれるので、運動が効果的なのです」
とはいえ、いきなり健康な人と同じ運動を行うのではなく、ひざの構造や痛みの原因を理解して、正しい運動をすることが重要だ。
痛みの原因は加齢!サインを見逃さない
「ひざの軟骨がすり減る大きな原因は加齢といわれます」
特に日本人に多いO脚の人は注意が必要だとか。
「変形性膝関節症を抱える人の9割はO脚。O脚は骨盤が後ろに倒れ、ももの前の筋肉が引っ張られるため、ひざに痛みが発生しやすいのです」
ひざ痛は突然やってくるものではなく、初期には痛みが起こらないこともある。
「ひざ痛につながるサインを見逃さないことです。今現在痛みがなくても、運動習慣がない人は40代以降、特に50歳を過ぎたら肥満や筋力の衰えに注意しましょう」
自分の「ひざ老化度」を、すぐチェックできる方法がある。
「ひざを伸ばして立ったとき、ひざ上の内もも側にシワが寄っていたら、ひざ周りの筋肉が働いていない証拠。ひざ痛がある人は必ずといっていいほど、10〜20度ひざが曲がっています。日常生活でひざを伸ばしきれていないと、太ももにある大腿四頭筋のひとつ『内側広筋』が衰え、シワができてしまうんです」
朝起きたときにひざがこわばっている、ひざの裏を押すと痛いときも注意が必要だ。
また、ひざを動かしたときの音にも注意したい。
「『キュッ、キュッ』という音は炎症が起きているときの特徴的な症状。関節軟骨の表面がざらざらしていると、ひざの皿と大腿骨とがすれて音が出ます。『ギシギシ』といった音がする場合は、関節液の不足が考えられます」
冬でも家でできるひざを伸ばす運動
「ひざの皿は滑車の役割をしており、関節を伸ばしきれていないとひざ全体に余計な負荷がかかります。ひざの皿が圧迫され、関節に炎症が起こり、痛みが発生してしまう。ひざがしっかり伸ばせると、軟骨がすり減りにくくなるので、痛みが和らぎ、水もたまりにくくなります」
高林さんが考案した運動は、曲がりやすいひざを伸ばし、内側広筋などの太ももの筋肉をラクに鍛えることができるという。
「太ももの筋肉がうまく使えないと、ひざの皿が本来の役割を発揮できないため、どんな運動や治療を行ってもひざ痛は解消しません。この運動を続けると、緩んでいた靭帯(じんたい)が正しく機能し、ひざ関節が安定するようにもなります」
加えて痛みの予防やO脚改善にも期待できる。
ひざ痛のキーになるのは、ひざの皿と大腿骨をつなぐ「膝蓋(しつがい)大腿関節」だ。
「あまり知られていませんが、この関節が硬くなるとひざの皿が正しく機能せず、軟骨がすり減って変形性膝関節症が進行してしまいます。ひざのお皿を浮かせて動かすことで、関節の炎症を取り除き、周辺の筋肉もやわらかくなり痛みを軽減できます」
この3ステップの運動を毎日、できればお風呂上がりなど身体が温まっているときに行う。そして、座りっぱなしにならない生活が大切だ。
「日本人は世界で一番座っている時間が長いというデータがあります。今回紹介した運動は、痛みがあってもできるもの。冬でもひざのコンディションを整え、痛みのない生活を送りましょう」
※「ひざ伸ばし」はひざに腫れや痛みがあってもできる運動です。ただし頑張りすぎてしまうのはNG。医師に相談のうえ、無理のない範囲で運動療法を行ってください。
ひざ痛を予防するための運動3ステップ
お風呂上がりなど、身体が温まっている時に行おう
STEP1:ひざ伸ばし 30秒×2回
ひざを伸ばすことで硬くなった組織をほぐし、血流を良くして関節の痛みを改善。ひざが伸びきることで筋肉の衰えをストップ。
イスに垂直に座り両手をひざ上へ
イスに浅く座り、足を肩幅に開く。片方の足を前方に伸ばしてひざを伸ばしたら、左右の手のひらを重ねて太ももの上にのせる。つま先を天井に向けて30秒キープ。反対側の足も同様に行う。
STEP2:かかと上げ 10秒キープ×左右各5回
太ももの筋肉、大腿四頭筋を鍛える。特に太ももの内側の内側広筋を使うのでこのトレーニングを行うと、ひざのお皿が安定する。
片足を上げて足首を90度に
イスに座り、片方の足を床と水平になるまで上げ、足首を前方に伸ばす。足首を曲げて90度の角度にして10秒キープ。上体が後ろに倒れないように注意。反対側の足も同様に行う。
STEP3:ひざのお皿浮かし 各10秒間
ひざのお皿を浮かせて動かすことで、ひざのお皿と大腿骨の関節の炎症を取り除く。ひざ周辺の筋肉もやわらかくなるので、ひざ全体の痛みを軽減する効果がある。
お皿を指で浮かせて動かす
床に座り両足を前に伸ばす。片方の足のひざのお皿を両手の親指と人さし指で左右から挟むように押さえる。ひざのお皿を軽く浮かせ、左右、上下、斜めにそれぞれ10秒間揺らす。反対側の足も同様に。
教えてくれたのは……高林孝光さん●アスリートゴリラ鍼灸接骨院院長。治療家(鍼灸師・柔道整復師)として10万人以上を施術。『ひざ痛がウソのように消 える!1日40秒×2 ひざのお皿エクササイズ』(CCCメディアハウス)などの著書も多数。
取材・文/ますみかん 写真・イラスト/『ひざ痛がウソのように消える!1日40秒×2 ひざのお皿エクササイズ』より
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