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《「もはや死語」な流行語ランキング》2位の一発屋芸人を抑えた1位は今や“セクハラ”ワード

週刊女性PRIME / 2024年12月3日 10時0分

左から、香取慎吾、タモリ、林修

 冬の風物詩として例年、注目を集める「ユーキャン新語・流行語大賞」。第41回を迎える今年は、「ホワイト案件」「はて?」「界隈」など30の候補の中から、TBS金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』の略称である「ふてほど」が年間大賞に選ばれた。

 一年の世相を表す「新語・流行語」だが、過去の流行語を振り返ると、定着する言葉がある一方、“一発屋”として消えていく言葉も─。

「新語・流行語には、瞬間風速を味わう言葉と、汎用性があってそのまま使われ続ける言葉がある。残るか残らないかはその違い」。そう指摘するのは、選考委員を務める漫画家のやくみつるさん。そこで、30代~60代の男女500人に、もはや死語だと思う流行語、今も使っている流行語をアンケート。やくさんとランキングを見ていこう。

もはや死語になった流行語」トップ5

 まずは「もはや死語になった流行語」から。

 5位は「おっはー」(2000年)。

「あまりにも古すぎる」(北海道・48歳・女性)、「今では元ネタを知らない人が多いと思う」(香川県・35歳・男性)、「10年以上使っていなくてダサい」(千葉県・42歳・男性)と、62票を集めランクイン。フジテレビ系のバラエティー番組『サタ☆スマ』で香取慎吾扮する慎吾ママが使い、ブームとなった。

「当時は子どもたちはもちろん、いい大人が若い人に媚びようとして使っていた。私の感覚としてはこれがいちばん古い印象がありますね」とやくさん。ただし、死語入りも決して不名誉なことではないと話す。

「本当に廃れたら出てこない。言葉によって当時の風景を鮮やかに思い出す、一つのツールになっている。だから光栄なことだと思います」(やくさん、以下同)

流行りの食べ物は“常連”

 4位は「じぇじぇじぇ」(2013年)。

「一時的なブームでもう耳にすることがない」(北海道・69歳・男性)、「意味不明のまま言葉だけが突っ走ってたイメージ」(長崎県・47歳・女性)、「懐かしいけど使う機会がない」(千葉県・49歳・女性)、「今さらカッコ悪くて言えない」(奈良県・50歳・男性)、「耳ざわりが悪い」(東京都・49歳・男性)と71票。

 岩手県の一部地方の方言で、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』で注目された。

「自分のルーツは東北なので、今も何かあるとあえて言っちゃいそうですけど。みんな冷たいなぁ」

 朝ドラ発の新語・流行語は多く、今年は『虎に翼』の「はて?」がノミネートされた。

「朝ドラはあえて流行らせようとしているところがあって、そこはくみ取ってあげたい気持ちもある。ただ今期の朝ドラはどうもウケが悪いようで、どう巻き返してくるか。流行語の一つも入れ込んでくるとまた違うのでしょうけど」

 3位は「タピる」(2019年)。

「タピオカを飲んでいるのも見かけなくなった」(香川県・53歳・男性)、「ここ数年、周りで聞いていない」(千葉県・61歳・女性)、「この言葉を周りで一度も聞いたことがない」(京都府・38歳・女性)、「まったく覚えていなかった」(山口県・66歳・女性)と80票獲得。

 タピオカドリンクのブームで使われるも、その人気に陰りが訪れた今では死後に。

「ブームの衰退とともに消えていく運命の言葉。あのころ栃木県の足利駅前でタピオカ屋さんが出ているのを見た覚えがある。それだけ流行っていたということ。そこもハナからずっとタピオカ店をやるつもりはなくて、ブームが去った今はたぶん業態を変えているでしょうけどね」

 流行りの食べ物は「新語・流行語」に入りがちで、過去には「マリトッツォ」(2021年)や「食べるラー油」(2010年)などが、今年は「アサイーボウル」と「インバウン丼」の2つが候補に。

「ただ『インバウン丼』は単なる流行り言葉とは性質が違って、円安が続いて海外から観光客が押しかけているうちは廃れそうもない。できれば早く消えてほしい言葉だけれど、日本がそういう国になっちゃったということ」

いまや“セクハラ”な流行語がトップに

 2位は「ラッスンゴレライ」(2015年)。

「一発ネタで翌年には消えていた」(愛知県・58歳・男性)、「記憶には鮮明に残っているが、あっという間に使わなくなった」(千葉県・62歳・男性)、「そもそも8・6秒バズーカーが短期一発で終わっており、もはや多くの人の記憶から遠ざかってしまっている」(東京都・59歳・男性)、「今ではまったく聞かないし、そもそも何が面白かったのかも覚えていない」(京都府・54歳・女性)と87票獲得。

 お笑いコンビ『8・6秒バズーカー』のリズムネタで、一躍ブレイク。

「恐ろしいことに、選考委員の自分自身、選んだことを覚えていない。わずか10年前なのに、完全に忘れていた。そんな悲しい流行語」

 “流行語に輝いたお笑い芸人は消える”というジンクスがあるが─。

「いやいや、やっぱり一度当てた人は強いですよ。この秋、三重県の温泉地のイベントにお笑いコンビのクマムシ(「あったかいんだからぁ」で2015年にノミネート)が出ていたのを見たけれど、トリを務めているし、お客さんもいちばん集まってた。演歌の人と同じで、一生ものの大切な営業ツールとしてしたたかに生きている。お笑いの方はみなさんそこを狙っていると思うけど、今はそうしたネタを披露する番組がないので厳しい」

 1位は「だっちゅーの」(1998年)。

「今言うと恥ずかしい」(大阪府・56歳・男性)、「発言者がもう表舞台から下りている」(東京都・50歳・女性)、「今使ったら引かれると思う」(東京都・60歳・女性)、「26年前の言葉で、さすがに今さら使っていたら驚き」(奈良県・48歳・男性)、「お笑い系にありがちな一過性の流行語だから」(福岡県・58歳・女性)と、133票獲得。

 お笑いコンビ『パイレーツ』の決めゼリフで、胸を寄せて谷間を見せるセクシーポーズとともに流行した。

「当時、パイレーツにお会いしてサインをいただいていました。ただ『ラッスンゴレライ』もそうですが、キャラクター自体が消えてしまうとそれを使う機会がなくなってしまう」

 加えて今となっては、社会的な問題も横たわる。

「一過性の流行という意味でもそうだけど、だいたい今ではあのポーズは無理ですよね。当時はノリでやれていたけれど、今はハラスメントにとられてしまう。過去の流行語の中には時代的にムリな言葉がたくさんあって。例えば『オバタリアン』(1989年)などもそうで、おばさんを貶めるような側面もある。だから言葉としては永遠に葬り去られてしまう気がします。でもそうして時代を反映する言葉だからこそ、逆に記録しておかなければいけない。“そういうのが許された時代だったんだね”と後から思い返すのも興味深い」

「今も使う流行語」トップ5

 お次は「今も使う流行語」トップ5のランキング。

 5位は「今でしょ!」(2013年)。

「林先生の人気は今でも健在。何かにつけて『今でしょ!』のポーズを見る。日々の生活に完全に溶け込んでしまっている」(東京都・59歳・男性)、「テレビでも使っているところを見る言葉で、自分も使っている意識がある」(新潟県・51歳・男性)、「まだ巷でも聞こえてくる」(大阪府・59歳・女性)と、31票を獲得。

 東進ハイスクール講師の林修がCMで言った「いつやるか? 今でしょ!」が注目を集め、同年の大賞を受賞。

「従前からある言葉が突然、流行語になってそのまま定着するケース。この年は『じぇじぇじぇ』『お・も・て・な・し』『倍返し』と合わせて4つが最終的に残った。流行語の当たり年でした

 3位に同数で2つの流行語がランクイン。1つ目の3位は「ととのう」(2021年)。

「このご時世は心までととのえたいから」(宮城県・60歳・男性)、「サウナに行くと今でも使う」(岐阜県・65歳・男性)、「日常で使う機会が多い。準備ができたときなどに使用する」(大阪府・60歳・女性)、「サウナブームによって今でもよく聞く」(広島県・58歳・女性)と、34票。

 サウナブームを発端に多く使われ流行語に。

「サウナブームを機に汎用性が広がった。今年のノミネート語になった『ホワイト案件』や『界隈』もそうだけど、堅めの言葉があえて日常会話の中で使われるとぐんと存在感が増してくる」

 同数の3位は「半端ないって」(2018年)。

「何か強調するときによく感嘆詞的に使用する」(広島県・62歳・女性)、「会話の中に織り込みやすい」(大阪府・62歳・男性)、「周囲にサッカー好きが多く、応用可能なフレーズ」(東京都・62歳・男性)と、34票獲得。

 2008年の全国高校サッカー選手権で活躍した大迫勇也選手を「あいつ、半端ないって!」と称賛したのが始まり。

「極上の褒め言葉として定着。最近は略されて“ぱない”とも」

断トツ1位の“関西弁”

 2位は「へぇ~」(2003年)。

「話を聞いているときについ言ってしまう」(神奈川県・53歳・女性)、「流行語というより、普段から使っている言葉がたまたま流行った感じ」(東京都・53歳・男性)、「流行語とは知らない。驚いたときには普通に使う」(大阪府・64歳・男性)、「流行り廃りの前になじんでる」(鹿児島県・59歳・女性)と、51票獲得。

 フジテレビ系の人気バラエティー番組『トリビアの泉』で多用された。

「今ではNHKのアナウンサーがリアクションで普通に使ってる。オフィシャルに近い場面で使われて、言葉として昇格しているなという気がします」

 1位は「知らんけど」(2022年)。

「関西人が昔から普通に使う言葉」(大阪府・62歳・男性)、「大阪人なので以前から使っていたが最近は使うとウケるのでうれしい」(愛知県・65歳・女性)、「結構な人が臆測でものを言うときに使っている」(広島県・64歳・男性)、「大阪人の口癖なので、消滅することはないと思う」(島根県・67歳・男性)、「友人などから毎日のようによく聞く」(京都府・38歳・女性)と、ダントツの146票を獲得。

 もともと関西で使用されていた言葉で、汎用フレーズとして定着した。

「流行語としてのブームはやがて収束するけれど、言葉自体は従前からあり、流行りを超え日常の中で使われていくその好例」

 トップ5に並んだ死語の流行語、今も使う流行語。やくさんが改めて分析する。

「瞬間風速を味わう言葉と汎用性がある言葉、その2つが見事に並んでいる。今年のノミネート語も分類してみると、これは使っていく言葉だな、瞬間風速を楽しむ言葉だなと分けられるはず。大賞の発表結果を楽しんでもらえれば」

 来年はどのような流行語が生まれるのだろうか─。

やくみつる 漫画家。早稲田大学商学部卒業。1981年『まんがタイム』誌でデビュー、1996年文藝春秋漫画大賞受賞。コメンテーターとしても活躍中

取材・文/小野寺悦子

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