柄本佑が語る、大河ドラマ『光る君へ』の長期撮影で改めて気づいたこと
週刊女性PRIME / 2024年12月15日 19時0分
12月15日、大河ドラマ『光る君へ』がフィナーレを迎える。柄本佑は、藤原道長の光と影を見事に演じきった。
「今回は、吉高由里子さんが演じる“まひろさん”のパートと、僕のパートで分かれていました。最初のころ、まひろさんが忙しいと、僕はあまり忙しくなかった(笑)。全部を1人で背負っていたらキツかったと思います」
現場の明るさにも助けられた。
「最初は変に力んじゃって疲れましたが、だんだん楽しくやらせてもらえるようになりました。まひろさんが、ずっと変わらず、いつも笑顔でおおらかな人柄でいてくれたのが最高によかった。
ファーストサマーウイカさんや、ほかのキャストも朗らかというか。そうそう、上地雄輔さんが現場にいると、すごく明るい雰囲気になりましたね」
スタッフといい信頼関係を築けたのも大きかった。
「脚本家の大石静さんの台本が、今までの大河ドラマで見たことのないような雰囲気だったのもよかった。同じチームで長いことやっていると、チャレンジできるというか。ちょっと違うと思ったら言ってくれるとか。そういう信頼関係が培われるし、最終的に“ツーカーの関係”で作れたという印象がありますね」
準備期間を含めて2年間、ずっと藤原道長を演じた
大河ドラマの撮影は、準備期間を含めて、およそ2年間。長期間ずっと道長を演じていると、役が抜けなくなりそうだが……。
「ならないです! 役に入り込む役者さんはいるけど、僕はそんなタイプではないです。それに道長は平安時代の貴族だから、なろうと思っても、簡単になれるような人物じゃない。
僕は基本的に役に近いとか、共感することはないんですよ」
父は柄本明。母は2018年に亡くなった角替和枝さんという役者一家。幼いころから芝居や映画が身近だった。
14歳で撮影に挑んだ、2003年公開の映画『美しい夏キリシマ』で俳優デビューする。
「家族でよく一緒に映画を見ていて、映画監督になりたいと思うようになりました。
森繁久彌さんの“社長シリーズ”とか、すごいと感じます。自分がこの世界で仕事をすると、三木のり平さんや小林桂樹さんも、究極的な芝居だなと思いますね。
あと、アメリカ人ミュージカル俳優のフレッド・アステアが好きです。
彼のすごさは、僕でもできそうと思えるところ。いざやってみたら全然できない(笑)」
アステア好きは、祖母の影響でもある。
「おばあちゃんはジョン・ウェインが嫌いで、アステアが大好き。海外へ日本未公開のビデオを買いに行くような人でした。とにかくアステアが好きで、玄関にポスターを張って、家の奥にはアステアのビデオをビッシリ詰め込んでいました。僕のコレクションする癖は、完全に祖母と母からの影響です」
角替さんも、ある俳優のビデオを集めていた。
「家を建てる際、母が“ここは私のコレクション用”として作った棚があるんです。そこにはレオナルド・ディカプリオが出演している映画のビデオがズラリ。“私、面食いのはずなのに、なんで父ちゃんと結婚したんだろう”って言いながらビデオを見ていました(笑)」
父から演技についてのアドバイスをもらうことも。
「僕のほうから聞いたことは、ほとんどなくて。ポロッと言われるんですよね。“今のでいいよ”みたいな感じで」
ダメ出しをされると安心する
2018年に出演した舞台『秘密の花園』は、かつて父が東京・下北沢にある『本多劇場』のこけら落とし公演として出演した作品だった。
「オファーされて、どうしようかと思ったけど、台本を読んだら、やたら面白いから、こんなチャンスはないと思ってやらせていただきました。
しかし、父が座長の劇団員がみんな見に来て。普段は僕の芝居なんか興味ないのに、父や母だけじゃなく、全員からダメ出しをくらって」
偉大な両親を持ったことで、比較されてしまうのは仕方がない。
「いや、全然ツラくないです。だって仕事だし。自分がやっていることが、合っているのか、いないのか、ジャッジしてくれる人たちで、すがりたい気持ちもあるんです。だから、ダメ出しをされると安心しますね。
子どものころからお世話になってきた人たちなので、芝居を見られるのは嫌だったけど、その反面なんかうれしかったんだろうな、今思うと」
劇団の先輩たち以外にも、尊敬する人がいる。父との共演もあった志村けんさんだ。
「僕はNHK『LIFE!』などで数回コントを経験しましたけど、志村さんはすごいと思いました。
僕は何回も撮り直し。志村さんの『だいじょうぶだぁ』は一発本番らしいです。
人を笑わすというのは本当に難しい。ただ普通にやればいいんだろうけど、普通じゃなくなっちゃう」
落語家の柳家小三治さんからも学ぶことがあった。
「小三治師匠が行き着いたのは“落語というのは、ただやれば面白くなるようにできている”ということ。落語をやるうえで邪魔になるものは、とにかく排除する。
気がついたら柳家小三治という人間もいなくなって、座布団の上にお話だけが乗っかっている。自分すら消すというのが究極なのかもしれない」
柄本佑が惚れ込む「TOKIO城島スタイル」
柄本が、以前から愛してやまないのがTOKIO。中でも城島茂に惚れ込んでいる。
「簡単に説明できないんですけど……。
グループというのは、それぞれに個性があるけど、その中である種、無個性でいるのが城島さん。目立たないでいる人がリーダー。そのおかげで、周りのメンバーは自由にキャラクターを出せる。
放牧スタイルというか“城島牧場”なんです。そして、城島牧場には“柵”がない。それがリーダーの気質だとも思うんです。
嵐の大野智くんもおおらかで、同じタイプですよね」
柵をなくすことが、俳優にとって大切なことだと痛感している。
脚本で縛られて役者は自由になる
「昨年、脚本家の山田太一さんが亡くなられて、山崎努さんが追悼文の中で、役者と脚本家の関係について書いていました。
山田さんはセリフの“てにをは”も変えてほしくない人だったそう。役者は、台本どおりに発音しなければならないわけですが、代わりに身体の自由を得るというんです。
脚本というのは、ある種、役者を縛るような行為。ただ、縛られることによって役者は自由になるという側面があるんです」
それは『光る君へ』で道長を演じていて改めて気づいた感覚であった。
「大石さんの脚本も、時代劇だから変えようがないということもある。その代わり、身体の自由を得る。縛られているんだけど、自由を見いだすみたいな。だから、そこに柵がないと感じるんです。柵を作っている行為なのに柵がなくなる。
城島さんの話をして、そこに行き着きました(笑)。役者と脚本の関係って、そういうことなんです」
のんびり屋の三男坊から栄華を極めるまで、道長の生涯を体現した。俳優としても成長し、これから何を目指すのだろうか。
「映画監督の夢は、今も持ち続けていますよ!」
“柵をなくす”という極意を身につけた柄本が監督を務める長編映画も見てみたい。
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