「バレたら退去?」都市部で頻発の“猫のコッソリ飼育”、9年飼っている実例をもとに弁護士が解説
週刊女性PRIME / 2024年12月20日 20時0分
都市部で意外に多いのが、ねこのコッソリ飼育。NGなことはわかっているけど、ねこの魅力にあらがえずに飼い始めたものの、色々と問題はあるようです。実際に飼っている40歳男性と弁護士にお話をお聞きしました。
約9年前、知人が拾った生後推定1か月・オスのこねこを譲り受けたAさん。ねこを飼いたいとは思っていたもののペット不可物件に住んでいたため、いずれ引っ越してから……とほとんど諦めていた。
こねこのかわいさについ“衝動飼い”してしまった
「でも、こねこの写真を見てしまったらもう我慢できなくて。すでに数年住んだ部屋でしたし、ラッキーなことに片側の隣室には人が住んでおらず、倉庫のような使い方をしていることがわかっていたので、思いきってお迎えしたんです」
Aさんが住んでいるマンションは、築約40年、6階建てで60戸ほどの鉄筋コンクリート造。出入り口はオートロック式ではないが、日中は週に3日、管理人がいる。出入り口はメインエントランスと他2か所、エレベーターには監視カメラがある。
「道端に一匹でいたところを拾われたようで、おそらく野良猫のお母さんとはぐれてしまったんだろうとのことでした。となると、すぐにでも病院で健康状態を診てもらう必要があります。
そこでさっそく壁にぶちあたりました。キャリーに入れるとピャーピャー鳴くので、初めてマンションを出入りするときはすごくドキドキしました」
動物病院に連れて行くときは、なるべく人に会わないように、カメラに映らないように。エレベーターとメインエントランスは使わず、監視カメラがない棟の端の階段を、5階の部屋から駆け下りては駆け上がる。
こねこのうちはまだよかったが、その後、体重6.5キロのガッチリ系オスねこに成長したため、キャリーケースもサイズアップして、今では大きめのトートバッグでキャリーケースを覆い隠して出入りしている。
子育てに奮闘しながらねこバレにおびえる日々
受け入れ当初は手にのるほど小さく、まだ授乳期。数時間ごとに哺乳瓶でねこ用ミルクをやり、その後は離乳食に移行した。
そんな“子育て”の苦労とともに、ペット不可物件にこねこと暮らすのも想像以上に大変だった。
「お腹がすくと夜中でも朝方でも関係なく、ごはんをくれ〜って大きな声で鳴くので、育児ノイローゼになりそうでしたね。そのたびにご近所に聞こえているんじゃないかと心配で仕方ありませんでした」
分譲マンションならではの飼いにくさ
居住者=オーナーが半分以上(推定)、その他はAさんと同じ賃借人。近隣住民の入れ替わりがあまり激しくないのはメリットか、それともデメリットか?
「2つ隣の部屋に口うるさいおじいさんが住んでいたんです。昼間はいつもマンション内や周辺をウロウロして、何か問題がないかと目を光らせていましたね。このマンションには来客者用駐車場があって利用時間の上限が決まっているんですが、管理人でもないのに時間をチェックしていました。
ちょっとでも超えると怒鳴り込んでくるようなおじいさんで。その人だけには絶対見つからないようにと思っていたんです。でも1年くらい前に転居していって、今はホッとしています」
たしかに、分譲オーナーが隣人の場合は、短期間で退去する望みがかなり薄くなる。また、他にも分譲マンションならではのわずらわしさがあるという。
「古い建物ですが維持・管理はしっかりしています。年2回の排水設備点検があり、かなり大規模な修繕工事も数回ありました。もちろん拒否はできないので、ねこはその都度、ペットホテルなどに預ける必要がありました」
1週間にわたる室内工事が入ったこともあった。その際は「1週間もボックスに入れられたままだとかわいそう」と、部屋貸しタイプのペットホテルを探した。出費は5万円ほどだった。
「2〜3歳くらいまでは毎日ドタバタと活発に走り回っていたし、共用廊下に何度か脱走したこともあります。正直、隣の人にはバレているのかもしれません。
見て見ぬふりをしてくれているのか、何も言われたことはなくて……いつバレてこの部屋を追い出されてもおかしくなかったけれど、ラッキーとしか言いようがないですね」
いろいろあって今は安定。引っ越すのがむしろ不安
飼い始めた当初は近いうちにペット可物件に引っ越そうと思っていたというAさん。手狭なので転居したい気持ちは変わらずあり、常に探してはいるものの、引っ越せずに賃貸契約を更新し続けている。その理由は何より、ペット可物件が少なすぎることだ。
「物件検索サイトでほかの条件を入力・検索してから、“ペット可”を追加すると件数が10分の1くらいになったり、ゼロになったりします。貸主さんがペット禁止にしたい気持ちはわかりますが、なんとかならないですかね……」
これは、ペットを飼うすべての人につきまとう悩みだろう。さすがに次もペット不可物件に引っ越す選択肢はありえないというAさん。
「今の家はなんとなく環境がわかっていたからねこを飼う決断ができました。ナイショで飼い始めてもうすぐ10年。私もねこもこの環境に慣れすぎていて、今はあまりストレスなく生活できています。
ペットOKの家が見つかれば何よりですが、隣人がどんな人か、実際の住み心地がどうかわからないまま、ペットNGの家に引っ越すのは怖いですね」
もしも、ねこを飼っていることがバレたなら!?
「捨て猫をどうしてもほっとけなくて」など、ねこを飼いたい理由は人によってさまざま。ただし、住んでいる家がペット不可物件の場合、「バレなきゃ大丈夫」なんて安直な「こっそり飼い」はトラブルのもとだ。
「令和5年の時点では、全国のねこの飼育頭数は約907万頭。一方で、ペット可物件の割合は総物件数の12%ほどに留まるというデータもあります。“こっそり飼い”によるトラブルの件数は、統計がないので正確にはわかりませんが、おそらくそれなりの件数の問題が発生していると考えられます」(正木絢生弁護士、以下同)
Q1.バレたらすぐに退去になる? ねこを他に譲渡すればいい?
ペット不可の物件で、大家さんや管理会社の許可を得ずにねこを飼っていることがバレた場合、どのような事態になるのだろうか。
「すぐにねこを手放すように求められることもあれば、損害賠償を請求される、強制退去を求められるといったことも考えられます。一方で、家賃や共益費を値上げするなどの条件変更で柔軟に対応してもらえるというケースも。
ペットを手放しさえすればよいということであれば、ねこを他に譲渡すればそのまま住み続けることが可能な場合もあり得ます」
Q2.短期間ねこを預かるだけでもやっぱり問題になる?
知り合いに頼まれて、ねこをやむを得ず預かることに……。短期間であれば「飼う」わけではないので、特に問題にならないのでは?
「基本的には、ねこを室内に入れた時点で、フローリングや柱、クロスなどを汚損する可能性はありますし、近隣にねこアレルギーの方がいる場合のリスクも変わりません。
そのため、短期間預かるだけの場合も、同様にトラブルになる可能性があります。こういったケースでも、オーナーや管理会社への事前の相談が必要でしょう」
Q3.損害賠償を請求される場合、請求の内容や金額の相場は?
ペット不可物件でねこを飼っていることがバレた場合、賠償の内容としてはどのようなものが考えられるのだろうか。
「金額の相場を算出することは難しいですが、壁紙や柱に爪とぎの傷跡がついてしまった、おしっこがクロスや床材に浸透していたなど、物件を物理的に損なってしまった場合は多額の修繕費を請求される可能性があります。
また、ペットの鳴き声や臭いが原因で近隣の入居者からクレームがでたり、近隣の入居者が退去してしまったりした場合、損害賠償を請求されたり、退去した部屋分の空室補填を請求されたという例もあります」
Q4.アレルギーによる健康被害、治療費負担や慰謝料は?
近隣の住民にねこアレルギーの人がいて、「こっそり飼い」のために健康被害が……、という事態も考えられる。
「動物アレルギーの住人がいる場合、どんなに迷惑をかけないように気をつけていても、服などに付着した毛などから症状が出る可能性も。相手の治療費負担を求められたり、慰謝料などを請求されたりする可能性は十分にあり得ます。
実際にかかった治療費の額や、どのくらいの損害が出たかにより金額が変わるため、相場を算出するのは難しいですね」
Q5.ペット不可物件の場合でも大家さんと交渉はできる?
どうしても今住んでいる物件でねこを飼いたいという場合、大家さんや管理会社と交渉をすることは可能だろうか。
「ペット不可というのは、物件のオーナーの意向を反映した結果ですから、交渉をしてみること自体は可能です。
誠実に飼いたいという気持ちを伝えることや、敷金や家賃、退去時の修繕費の増額など、物件でペットを飼うための相応の負担を申し出るといった内容で交渉してみるというパターンがあるようですね」
お話を聞いたのは……正木 絢生弁護士●弁護士法人ユア・エース代表。BAYFM『ゆっきーのCan Can do it!』にレギュラー出演するなどメディア出演も多数。YouTube やTikTok の「マサッキー弁護士チャンネル」にて、法律やお金のことをわかりやすく解説、配信中。
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