《能登地震から1年》防災士が教える「備蓄の新常識」携帯トイレや非常食にカップ麺はNG
週刊女性PRIME / 2025年1月1日 8時0分
能登半島地震から1年。「もし都心で震災が起きた場合、避難所に入れるのは2割です」と専門家・草野かおるさん。自然災害が多発するようになった昨今、自宅での防災備蓄、最新の常識をアップデートして。
「東京都防災ホームページによると、東京都の非常時の避難所はおよそ3200か所(協定施設を含む)で、収容人数は320万人。都民の数は約1400万人ですから、22%の人しか避難所には入れない計算です。
もちろん全世帯が被災するわけではないでしょうが、それでも“自分の身は自分で守る”準備をしておくことが欠かせないと思います」
こう語るのは、防災士の草野かおるさん。
多くの人は避難所に行かず、そのまま自宅にとどまる“おうち避難”となる可能性が高い。ライフラインが止まった自宅で1週間から10日を目安に過ごせるように準備しておきたいという。その際、重要なのが「停電」「断水」「トイレ」「食料」対策の4つ。
停電対策はスマホ用充電器の確保から
草野さんによれば、「停電」に関して、まず行ってほしい災害対策が、携帯電話の充電器の確保。
「家族との連絡から正しい情報の入手まで、いまではスマホが命綱になっています。2018年9月の北海道胆振(いぶり)東部地震で起きた停電では、役所が設けた携帯電話の充電サービスに車の長蛇の列ができたほど。
モバイルバッテリーとともに、電池式の充電器も用意しておくといいですね」(草野さん、以下同)
停電による明かりの確保には、「100均で売っているヘッドライトが超おすすめです。これを頭でなく、首から下げて使います。両手が使えて足元を照らしてくれますから、暗がりの中でも安全にトイレに行けます」
実は発災時の知られざる災害が、転倒によるケガや骨折。それがきっかけで寝たきりになってしまった高齢者は決して少なくないという。首から下げた100均ヘッドライトは、そうした事故防止に有効だ。
「停電してしまっても、ロウソクの使用は火事の原因になりかねないのでなるべく避けたい。照明に関しては、コップやマグカップの中に懐中電灯を入れ、その上に水入りペットボトルを置くとペットボトルが光を拡散してランタンの代わりになります。その際はスポーツドリンクなど白濁したものだとより効果的です」
断水には2Lのペットボトル1ケースを確保
「水」に関しては、実際にどれくらいの量を備蓄したらよいのか。
「2~3L×家族の人数×日数が備蓄の目安とされています。ですが備蓄スペースを考えると、普段これを実行するのはなかなか難しい。まずは未開封の2Lのペットボトル1ケースの備蓄から始めるのがよいでしょう」
まずは断水した、“3日間をどうにかしのぐ”を目標に備蓄しよう。
「自治体が発行している防災マップには、飲料水が入手できる給水所が必ず記載されています。近くの給水所を確認しておきましょう」
お風呂の水は、非常時を考えれば残しておきたい。
「下水管が無事であれば、お風呂の水でトイレを洗浄することができます。ただし、家の排水管、公共の下水道、下水処理場までが無事でないと流せません」
トイレ対策はペーパー類の確保を
「携帯用トイレが発売されていますが、1回限りの使い捨てで1つ100円もします。1日5回はトイレに行くことを考えれば、コスパ的には500ml吸収可能のペットシートのほうがおすすめ。
45Lのポリ袋にペットシートを入れ、それをトイレにセットして使用します。使用後は、ゴミ袋ごと処分します」
トイレ対策で注意しておきたいのがペーパー類の確保。
「何か非常時となった場合、店頭から消えるのがトイレットペーパー。コロナ禍でもトイレットペーパーの買いだめ騒ぎが世界中で起きました。トイレットペーパーのおよそ4割は静岡県で生産されています。
南海トラフ地震が発生したら、トイレットペーパーや生理用品等々の紙製品が不足することは避けられません。経済産業省も、1か月分のトイレットペーパーの備蓄をすすめています。
女性の場合は、生理用品のストックも忘れないようにしてください。支援物資として生理用品を用意している自治体もありますが、被災時にすぐに手元に届くかは定かではありません。
45Lのポリ袋は、ぜひとも備蓄しておきたいアイテムです。水害で下水が逆流、トイレから汚水があふれる前に水嚢(すいのう)で便器にフタをします。45Lのポリ袋を二重にして3分の1ほどの水を入れると水嚢になります。逆流を防ぐことができますよ」
ポリ袋は給水の際のポリタンク代わりにもできる。
「阪神・淡路大震災では、通常400円ほどのポリタンクが4000円で売られたとか。ポリ袋とショッピングカートがあれば、水は運べます」
パスタ、小麦粉をローリングストック
食料に関してはローリングストック、つまりは普段から少し多めに買い置きし、古いものから消費して、消費した分を買い足していく備蓄法を行いたい。ただ、長期保存がきく食品でも、こまめに確認していないと、いざという時に賞味期限が切れていたりもする。
「カップ麺の保存期間は半年くらいと案外短いものが多いです。パスタやそうめんといった乾麺類であれば保存期間が2~3年と長いのでおすすめ。
ちなみに、パスタは3時間ほど水に浸けておくと、生麺に戻ります。後は1分ほどの加熱でこれをインスタントのコンソメに加えれば、おいしいスープパスタのできあがり。災害時にはカセットコンロのガスの節約も考えなければなりません」
小麦粉もストックしておきたい食材の一つ。
「水に溶いて焼くだけでシンプルな主食になります。ジャムやソースを添えれば意外とおいしくいただけますよ」
最後に草野さん、防災士としての立場からこんなアドバイスもしてくれた。
「昨年の9月の奥能登の豪雨では、亡くなった犠牲者の6割が“中小河川の洪水”で被災しています。国も対策を急いではいるものの、中小河川に関しては、ハザードマップにはまだ反映されていない地域も多くあります。
100年に1度、1000年に1度といわれる災害が多発しており、どこでどのような災害が起こるかわかりません。誰しもが防災の備えをしておくべきですね」
月に一度は「防災点検日」
□食品の日常備蓄はありますか?
□期限切れのものはありませんか?
□懐中電灯は用意していますか?
□液漏れはしていませんか?
□電池の予備はありますか?
□収納場所は、家族全員知っていますか?
□ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ポリ袋、ぺーパータオル、消毒液、生理用品などの衛生用品は十分に備蓄していますか?
□非常用トイレの準備はありますか?
□家族全員分、家のトイレを災害用トイレに変更できますか?
□家に帰れない時、外での「家族の集合場所」を決めていますか?
お話を伺ったのは……草野かおるさん●防災士・イラストレーター。16年にわたり地域の防災勉強会や防災訓練などで防災活動に関わったことを生かし、役に立つ防災メモを4コマにしてブログで発信。その後、防災関連の著書も数冊刊行。
取材・文/千羽ひとみ
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