年末年始の帰省時におすすめの“親孝行”、離れていても後悔しない「親の老い」との向き合い方
週刊女性PRIME / 2024年12月31日 16時0分
年を重ねるにつれ、育ててくれた親への感謝の気持ちは募るもの。多くの人は、親孝行をしたいと思いながらも、現実には「できていない」と感じていることが多い。その理由には、「離れて暮らしているから」「何をしたらいいかわからない」「忙しい」といった声が挙がるという。
親との時間は有限、孝行するなら“今”
「家庭や仕事の都合でなかなか親と会えない人も、年末年始の帰省時は、親孝行ができる絶好のタイミングです」
と話すのは、40年以上にわたり介護・福祉の仕事に携わってきたケアマネジャーの田中克典さん。
「普段から電話やメールでコミュニケーションをとることも大事ですが、やはり顔を見せることで親は安心し、喜ぶものです。直接会うからこそ、できることはたくさんあるので、今回の帰省を機会に、感謝の思いを形にして“恩返し”を考えてみてはどうでしょう」(田中さん、以下同)
恩返しというと、何か立派なことをしなきゃと構えてしまう人もいるかもしれないが、
田中さんは、実例を挙げて、こうアドバイスする。
「両親の金婚式に、ハワイ旅行をプレゼントしようと計画していた女性がいました。ところが旅行の半年前に父親が大腿骨頸部を骨折し、介護施設に入所。残念ながらハワイ旅行は実現できませんでした。『父が元気なうちに近くの温泉にでも連れていってあげればよかった』と悔やんでいた娘さんの言葉が忘れられません。
今の70~80代は元気で、自立生活を維持できている人も多いですが、年を重ねれば誰もが身体や脳の機能が衰えていきます。親の老いは確実に進行していくもの。ですので、恩返しは『いつか』ではなく、思い立った『今』実行することが最高のタイミング。ハワイ旅行といった大きなプレゼントより、今の自分にできる“小さな恩返し”を積み重ねることのほうが、実行しやすく、親の幸せにもつながるのです」
親がして欲しいこと、喜ぶことを探す
では、具体的に何をすればいいのか?
「年末の帰省時だからこそやっておきたいのが、親の日常生活のチェックと快適に暮らすための手助け。例えば、高齢になると、食品の在庫管理が難しくなったり、掃除が行き届かなかったりします。なので、冷蔵庫の中を一緒に片づける、親の手が届かない高い所などを掃除する。
また、年をとると、足腰と視力が弱って、家の中のわずかな段差や障害物で転ぶリスクも高まります。カーペットがめくれないように両面テープなどで固定する。段差に蓄光テープを貼る、といった家の中に潜む危険を防止するのもおすすめです」
こうしたささいな恩返しなら、たくさん見つけられそうだ。
「親の肩や脚をもむ、手足の爪を切ってあげる、といったスキンシップを伴う恩返しは、そばにいるときしかできませんから、ぜひやってあげてください。触れ合うことで、親への感謝や労いの気持ちが、より強く伝わります」
冬休みに休暇が取れたなら、親に“楽しみ”を提供するのもいい。
「自分の得意料理を作ってふるまう。あるいは、一緒に外食をしたり、推しのコンサートを聴きに行ったり。親子で幸せな時間を過ごすことは、忘れられない一生の思い出になるでしょう」
そして、子から親へ、お年玉や小さなプレゼントで愛情を届ける。
「子どものころにお年玉をもらったお返しに、新紙幣3枚をお年玉袋に入れて渡すのも一案です。また、読書好きの親には拡大鏡、ちょっと耳が遠くなった親には集音器付き骨伝導イヤホンなど、生活に役立つものをプレゼントするのも喜ばれます。あなたが帰ったあとも、親は『これは娘が買ってくれた』と使うたびに、子の愛情を感じてくれることでしょう」
言葉で、行動で、プレゼントで、あなたらしい方法で親への恩返し。元気に健康で、と願いながら温かい気持ちで新年を迎えよう。
恩返しで大事な2つのポイント
その1 理想を追い求めすぎない
ハワイ旅行、といった準備やお金もかかるプレゼントは、頓挫したり、一回こっきりの恩返しになってしまうことが。背伸びせずに、今の自分ができる小さな心遣いや、親を助け、親が喜ぶ行動を、長く続けることが大事。
その2 タイミング
恩返しは「思い立ったが吉日」。親が認知症や重篤な病になったら、恩返しできることも限られる。今どんなに元気でも、親は確実に老いる。「いつか」親孝行しようではなく、年末年始の「今」が恩返しの一番のタイミング。
田中さんおすすめ、小さなプレゼントでちょっとした恩返し
歩行補助用キャリーバッグ
高齢の親がスーパーなどで買い物をして重い荷物を持って歩くのは、腰を痛めたり、転倒のリスクも。「親がまだ一人で買い物に行ける状態なら、歩行補助用キャリーバッグをプレゼントするのがおすすめです。4輪式で両手でつかまれるので、杖よりも安定感があり、疲れたら椅子として座ることもできて便利」
拡大鏡
「老眼になると本や雑誌の小さな文字が読みにくくなり、読書から遠ざかってしまう人も。ほうっておくと脳の衰えにもつながります。読みたいときにさっと手にとれる拡大鏡は、親に読書習慣を続けてもらうために最適なプレゼント。手元を明るく照らすLEDライト付きのものや、卓上に置いて使えるタイプなど、種類が豊富なのもいいですね」
教えてくれたのは…田中克典さん たなか かつのり 1962年埼玉県生まれ。日本福祉教育専門学校卒業後、障害者福祉センターなどで介護経験を積む。2000年、介護保険制度の発足と同時にケアマネジャーの実務に就き、これまでに約500人の高齢者を担当。
取材・文/村瀬素子
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