“閉経しても貧血”は危険サイン、がんや白血病が潜んでる可能性も「おすすめはサラミソーセージ」
週刊女性PRIME / 2025年1月25日 15時0分
貧血といえば、急な立ちくらみやめまいを思い浮かべる人も多いだろう。それらの症状に襲われても、「よくあることだし」「少し時間をおけばよくなるから」と放置している人もいるのでは。
しかし、その裏に思わぬ病気が隠れていることや、貧血が招く重大な病気があることを知っているだろうか。
むくみに息切れ……それ貧血のサインかも
「血液には“全身に酸素を運ぶ”働きがありますが、血液細胞のひとつである『赤血球』がその運搬を担っています。貧血はこの赤血球の数が少なく、働きが悪くなっている状態のこと。
血液の量には変化がなくても、赤血球が減少したり、赤血球に含まれる『ヘモグロビン』の量が減ることで、身体が酸素不足の状態に陥ります」
そう話すのは、総合内科が専門の秋津壽男(としお)先生。私たちの身体は貧血になると、身体は酸素不足を補うために心臓の拍動を速めて大量の血液を流し、酸素不足を解消しようとする。
さらに、呼吸を増やして足りない酸素を身体に取り込もうとするため、少し歩くだけで息切れが起こる。
「ほかに主な症状として、めまいや立ちくらみなどが発生します。心臓や腎臓が悪くないのに、足などがむくむことも。さらに貧血が進んでいくと、原因は不明ですが無性に氷を食べたくなるという症状も認められています」(秋津先生、以下同)
急性の場合はこれらの異変にも気づきやすいが、慢性的な貧血の場合は自分で気づくことは難しいという。
「貧血は高山病と一緒で身体が慣れるんです。例えば、貧血ではない人が事故で血の3分の1を失って、輸血の代わりに点滴を補充したら血が3割薄くなります。ヘモグロビンの数値がいきなり3~4g/dl減ると、立ちくらみどころかベッドから起き上がることもできません。
けれど、めったに肉を食べずに野菜ばかりで、10年や20年がかりで貧血になった高齢女性などは、普通に階段も上がれて農作業もなんなくこなせたりします。進行がゆっくりだと高山病と同じで身体が慣れて病気が発見しにくくなるのです」
高齢者では、めまいや息切れなどが日常的に起こりやすいため、ますます貧血と自覚しにくい。だからこそ定期的な血液検査が不可欠になる。
中高年の貧血には病気が隠れていることも
貧血の多くは、鉄不足による鉄欠乏性貧血が原因と考えられる。女性の場合、月経による出血や、妊娠・授乳による鉄不足が起こりやすいため、若い世代を中心とした病気と思われやすい。しかし、更年期を過ぎた世代や高齢者でも貧血は多発している。
「加齢は身体全体のパフォーマンスを落としますが、血液を作る力も落としてしまいます。そして中高年で何よりも大きいのが食生活の変化です」と秋津先生。
「鉄分をいちばん多く含んでいる食品は肉ですが、50代や60代になると、若いころのようには食べられない。年齢的に味覚も変わるので、焼き肉よりはアジフライがいい、というように鉄分を含む食品の摂取量自体が減ることが大きいと考えられます」
さらに、貧血が別の病気の症状のひとつであることも。
「閉経前の女性では、子宮筋腫による月経過多などがあります。また、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のように、消化管から出血する病気も原因になります。がんの好発年齢が中年以降のため、がんによる貧血の可能性も高まります」
国立がん研究センターによると、がん患者の半数は貧血を示しているというが、がんと貧血にはどんな関係があるのだろうか。
「胃がんや十二指腸がん、食道がんなどの出血するタイプのがんは貧血を招きます。血液を作る骨髄にがんが転移したりすることでも、血を作る力が落ちるといわれます。
次に、“悪液質”といって、がんになるとなぜか倦怠感が出たり食欲不振になって、体力が落ちて痩せていきます。悪液質による身体の衰弱や、抗がん剤の影響で貧血になったり、治療による食欲不振などが重なり鉄分の摂取量が減ることも原因になります」
貧血の陰には重大な病気が潜んでいる可能性があるため、貧血を見つけることが別の病気の発見につながることも。ほかにも、造血細胞の病気である白血病関係の病気や、赤血球だけが壊れる溶結性の貧血などもある。
症状自体は同じでも重い病気の前兆の場合もあるので、“たかが貧血”と軽く見るのは禁物だ。
また、貧血が別の病気のリスクを高めることもある。
「貧血で脳などの大事なところに十分な酸素が届かないと、より多くの血液を送るために心臓は必要以上にムチを打って働き、結果、心臓の負担が増して心不全や心筋梗塞といった、命に関わる病気を引き起こすことがあります」
鉄のとりすぎもNG、基本は食事で摂取
そこで大事になるのが定期的な健康診断での血液検査だ。チェックするのはヘモグロビンの数値。成人女性では11.0~15g/dl、成人男性では12.5~16g/dlが基準値とされており、それを下回ると貧血と診断される。
「基準値が男女で差があるのは、女性の場合、月経や妊娠、出産が考慮されるからです。そのため男性で11g/dlぐらいだと何らかの病気が疑われることも。また病気で子宮を取ってしまった女性や、閉経した女性では、男性と同じ基準値で見る必要があるため、11.5g/dlを下回るようなら注意が必要です」
一方でヘモグロビンの数値が高すぎる場合にもご用心。
「赤血球の暴走や、ストレスなどが理由で過剰に赤血球が増加する多血症という病気があります。血が濃いと血液がドロドロになるので心筋梗塞や脳梗塞などの血栓症を引き起こす傾向も。がん患者でなければ、献血して血を薄めるのもいいでしょう」
日常生活で最も気をつけたいのは食事だ。
「鉄分は食事でとるのが大原則です。いちばん手っ取り早いのは肉類。血の多い食べ物が血の材料になるので、イチ押しは豚や鶏のレバー。
赤身肉では、鶏肉より豚肉、豚肉より牛肉がよく、羊肉や鴨肉などに加え、サラミソーセージもおすすめです。魚でいうとカツオやマグロ。“まな板が血で赤くなる食べ物”がいいんです」
また、赤血球のヘモグロビンは鉄とタンパク質でできているので、それらを含む食品を一緒にとることも大切。
「その意味でも、肉や魚は外せません。鉄分を含む野菜や豆類を食べるときも肉や魚を一緒に食べることで効果が高まります」
ただし市販のサプリや鉄剤には安易に頼らないのが賢明。
「自己判断で飲むのは避けて。貧血かと思ったら別の病気だったということもありますし、必要以上に鉄をとりすぎると肝臓に鉄分が沈着して肝臓がんのリスクが高まることもわかっています」
治療で大切なことは、ヘモグロビンの数値が正常になったからとすぐに治療をやめないこと。身体に鉄が貯蓄できていないと、すぐにぶり返すからだ。また過剰摂取もリスクになりうるので、治療は必ず医師の判断のもと行いたい。
「更年期を過ぎた女性は本来、貧血にはなりにくいはず。貧血が疑われる人は“ただの貧血”と思わずにまずは1回、受診してみることをおすすめします」
教えてくれたのは……秋津壽男先生●秋津医院院長。総合内科専門医。“スーパー町医者”として地域密着の診療の傍ら、“医療の雑学王”として多方面で活躍。『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京系)などでもおなじみ。
取材・文/荒木睦美
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