多くの高齢者が発症する「白内障」進行を遅らせる生活習慣と、頼れる名医の“見分け方”
週刊女性PRIME / 2025年1月30日 7時0分
「白内障は80歳を超えていれば、ほぼ全員に関係する病気です。ただ手術が絶対に必要かというとそうではありません」
そう話すのは眼科医の平松類先生だ。
日々の生活で、ある程度進行を遅らせる
そもそも白内障とは、眼球でレンズの役割を果たす水晶体内のタンパク質が、酸化して白く濁ることで視力が低下する病気。
症状は目がかすむ、二重や三重にだぶって見える、視界が暗くなったり、まぶしく感じたりとさまざまだ。一般的には加齢が原因のことが多いが、同じ年齢でも人により症状の出方は違うという。
「白内障の手術では水晶体を取り出し、代わりに人工レンズを入れるんです。安全性は高いですが、感染症が起きたり大出血したり、乱視が強く出るなどのリスクはあるので、控えたいという患者さんの気持ちもわかります。
平均すると70~80代で手術対象になることが多いですね。老化を抑えれば白内障がまったく進行しないというわけではないですが、日々の生活で心がければ、進行を遅らせることはできるでしょう」
先生がまず気をつけたいというのが紫外線。
「サングラスや紫外線カット効果のある眼鏡をかける、つばの広い帽子をかぶる、日傘を差すなどしましょう」
これは紫外線による酸化ストレスで、白内障の進行が促進されるためだ。
「水晶体はもともと透明ですが、例えるなら卵白のように、熱が加わると白くなるとイメージしてください。つまり熱や紫外線が良くないとされています。実際、北欧に住む人と赤道近くに住む人では、日照時間が短い北欧のほうが、白内障になる年齢が遅いというデータもあります」
物理的な刺激を避けることも大切。目を引っかいたり、ぶつけたりしないこと。
「アトピー性皮膚炎の患者さんは白内障になりやすく、10代や20代で罹患(りかん)することも珍しくありません。そうでなくとも目の違和感を我慢するのは難しいので、目がかゆかったり目ヤニが出やすい、ゴロゴロするなどの症状があれば治療を受けましょう。
花粉症の場合は、帰宅時に服についた花粉を払ったり、すぐに洗顔して部屋着に着替える、空気清浄機を使うなどしていただければと」
寝起きに目をこするのも良くないので、注意したい。
血糖値を上げない食事を意識
日々の食事を改善することも、白内障になるのを遅らせることにつながるそう。
「糖尿病になると合併症で白内障に罹患しやすく、40~50代で手術する方も多いんです。もちろん糖尿病でなくても血糖値が高くなる食生活を続ければ、白内障は徐々に進行します。高血圧や血流が悪いことも原因になりやすい」
小麦粉など血糖値が急上昇する炭水化物はなるべく控えたい。もし摂取するなら運動の前後にすれば、身体に必要なエネルギー源になり、血糖値の上昇を抑えられるという。
「小麦粉よりは全粒粉のパン、白米よりはもち米や大麦をまぜて食べるのが良いですね。食事でいうと、老化や糖尿病の合併症の原因のひとつである、終末糖化産物AGEsという物質が良くないという情報もあって。
これは焦げたものやキツネ色の揚げ物などに含まれます。あくまで参考程度で構いませんが、調理するなら焼く・揚げるよりは煮るほうが良いですし、食べ方にも気をつけましょう。
体調管理をして運動をすること、太りすぎず痩せすぎず、適正体重に保つことも重要です。このような老化を防ぐ生活は健康にも良いですし、続けることで一生見える目をつくっていけるでしょう」
ちなみに、白内障の進行を抑えるといわれる目薬も存在するが、効果はいかほどなのか。
「ピレノキシンという処方薬や、クララスティルという海外の目薬を個人輸入する患者さんが多いですが、いずれも効果は限定的。これらの目薬の医学的なデータも、比較的昔に研究されたものしかなく、情報はざっくりしています。効果は実際にはあまりないかもしれませんが、予防的に点眼するのは悪くないでしょう。
輸入目薬が良いという人もまれにいらっしゃいますが、どちらも効果に大差はないです。しかし輸入目薬でトラブルがあったときは患者さんの責任になるので、処方薬を使うのが安全でしょうね」
手術に対しては、医師の中でも積極派と消極派に分かれるそうだ。総合病院で実際に手術を行う医師ほど積極派で、地元のクリニックなどで自ら手術を行わない医師は、経過観察をすすめる傾向があるという。
「症状が悪化するとその後の治療に苦心しますし、手術で早く治そうという考えもわかります。一方で手術を避けたい患者さんの気持ちも酌みたい。日本の医療制度は、総合病院で手術や大きな治療をして、あとは開業医に診てもらうというシステムです。
ですので、手術を希望しないのであれば地元のクリニックで経過観察を続けましょう。網膜剥離や緑内障、黄斑変性などほかの病気が潜んでいる可能性もあるので、少なくとも半年から年に1回は眼科でチェックしてください」
白内障手術で頼れる名医の条件
それでも手術が必要となれば、誰しもが信頼できる名医にお願いしたいはず。そこで参考にすべきことがある。
「ひとつの指針になるのは、手術件数が多いこと。月間30件ほどだと多いとも言われているので年間300件以上の手術件数があれば良いでしょう。
ただ300件行う医者と1000件行う医者なら、多いほうが絶対にうまいとも限らないのが難しい。それでも手術件数が極端に少ないと、技術力に不安があります」
気をつけるべきは、施設ではなく術者を基準にすることだ。
「複数の病院に勤める医師の場合、A施設では60件しかなくても、B施設では1500件実施する場合もあります。
つまり施設単位の手術数よりも術者の件数が重要です。1施設で医師1人が1000件行う場合と、1施設で医師5人が2000件行う場合などもあるので、1人当たりが担当する手術数で判断してください」
そして、医師が自分と合うかはとても重要。
「白内障手術はほかの病気と違い、手術は成功しているのに、思った見え方と違うということが起こり得るんですね。なぜかというと白内障手術で使う人工レンズにも種類があって、選ぶことができるからです。
だからこそ技術力だけでなく、事前の相談が非常に重要になってくる。患者の話を聞かず、意見を押しつける医者は良くないですね」
レンズ自体も高ければ良いというものではない。人工レンズは、性能の良しあしで価格差があるとは必ずしもいえないのだとか。
「高いレンズは特殊な加工をしていたり、少量しか流通していないせいで結果的に値段が上がることが多いんですよ。高いレンズばかりすすめるのは利益重視で、患者さんを第一に考えているとは思えません。
手術で人工レンズを入れたら、基本的にはそれを一生使い続けることになるので、値段にかかわらずそれぞれのメリット、デメリットを相談できると良いでしょう」
そして地元の評判を聞くことも重要だ。
「技術に問題のある先生は確かに世の中にいますが、たいていは評判が伝わるため、地元の人に評判を聞いてみるのも良いと思います。そうすれば最低限大丈夫かはわかりますよ」
教えてくれたのは……平松 類先生●眼科専門医・医学博士。二本松眼科病院にて副院長を務める。登録者25万人以上を誇るYouTube「眼科医平松類チャンネル」をはじめ、各種メディアにて目の健康情報を提供している。著書に『その白内障手術、待った! ―受ける前に知っておくこと』(時事通信社)ほか多数。
取材・文/植田沙羅
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