森永卓郎さん「18歳から死と向き合ってきた」カネにも人にも執着しない、“孤独との闘い方”
週刊女性PRIME / 2025年1月29日 11時42分
2023年12月にステージ4の末期がんと診断された経済評論家の森永卓郎さんが亡くなった。67歳だった。
森永さんに『週刊女性PRIME』が取材をしたのは昨年末。その時に「猛スピードで取り組んでいる」と語っていたのが終活だった。
身辺整理を甘く見てはいけない
「身辺整理を急ぐのは私自身が父の死後に相続地獄を経験したから。あんな苦しみを家族に与えたくない。きちんと死に支度をしてから逝こうと決めました」(森永さん、以下同)
森永さんは書棚にあふれた本や財産、仕事、家族との関係性などを対象に進め、ほぼ完了というところまでたどり着いたという。
「しかし身辺整理を甘く見てはいけません。いざ進めると、さまざまな壁が存在するもの。私の場合も予期せぬ事態に遭遇し、そのたびに知恵を絞って乗り越えてきました。仕分けをしようとすると、いろいろ思い出がよみがえってきたり、まだ必要な場面が出てくるのではないかと考え始めて、先に進まなくなったり。
たとえば大学の研究室にある数千冊の本の整理に関して私がやったのは、根こそぎ処分で何も残さないということ。いったん全部処分して、どうしても必要なものが出てきたら、買い戻すことにしています。ただ実際にやってみると、買い戻すものはごくわずか」
だから本などモノの類いは全部捨てても、未練は残らず何を捨てたのかさえ把握していなかったという。
「唯一の未練といえば、早くから少しずつやっていればコストがかからなかったのが、業者にまるごと処分を依頼したので、その分費用がかさんでしまったこと」
早いうちから資産を整理
先に述べた自身が経験した相続地獄は、亡き父親の資産整理で大変な作業を余儀なくされたことに端を発している。
「遺産分割協議や相続税の申告は法律上、故人の死亡届を提出してから10か月以内に完了させるのがルール。その第一歩となる父の資産を把握する際に、預金や株があちこちにあって膨大な時間をとられました。この教訓から私は早期に資産をリスト化し、まず預金口座の一本化に挑んだのです」
ところが簡単にはいかず、再び時間をとられることに。
「いまは銀行の窓口対応は完全予約制になっており、1週聞前や2週間前に予約してから足を選ばなければなりません。また、セキュリティ対策で通帳自体に印影を残さなくなったため、どの運帳にどの印鑑を使ったのかがひと目ではわかりません。こういった落とし穴により、預金一本化に向けた口座解約手続きに時間をとられてしまいました」
そこで時間短縮の方法として、通帳・印鑑・キャッシュカードの3点をセットできちんとそろえておくべき、と語った。
「そうすれば、口座解約のための銀行の時間は一度ですませられるでしょう」
カネにも人にも執着しない
物やお金に執着しないのが、森永さんの終活のあり方だった。仕事や人間関係の終活についても同様。仕事はやり残したことは一切なく、人間関係はそもそも親密な間柄の仲聞や友達などは一人もいないと明言。
「だからお礼を言っておきたい相手もいない。その人と交流しているときにギブアンドテイクで貸し借りなしにしていますし、未精算分があるとしても、その分はその人にではなく、社会に返せばよいと考えているからです。お礼を言うとしたら妻だけですね」
物や人の終活を進めると必然的に孤独になっていく。最期は誰もが一人だ。孤独に打ち勝つにはどうしたらいいのだろう、という問いに森永さんはこう答えた。
「人間は本来孤独な存在。孤独を嫌うのは、他人依存という一種の依存症だと私は考えています。アルコール依存症や業物依存症と同じで、その克服は容易ではなく、時間もかかります。私自身は18歳から死と向き合い、一人で闘い続ける生き方を貫いてきました。ただこれは簡単ではないため、なるべく早く人間関係を断って、耐える経験を積み重ねていくことが大切でしょう」
「権力と闘う。闘い続けて死ぬ」と言い続け、全うした森永さん。4か月と宣告された余命を全力で生き抜いたが、本人が希望した「2度目の桜」は見られなかった。
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