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「この家で暮らす夏を思って胸が苦しくなった」 中禅寺湖畔に佇む〝別荘〟に羨望の1万いいね

Jタウンネット / 2024年8月7日 8時0分

「この家で暮らす夏を思って胸が苦しくなった」 中禅寺湖畔に佇む〝別荘〟に羨望の1万いいね

「世界でいちばん美しい夏の住まいを見た」――。

2024年8月1日、とあるXユーザーがそんなつぶやきと共に投稿した写真が、多くの人々を圧倒している。

世界でいちばん美しい夏の住まい。それは、栃木・奥日光の入り口に位置する中禅寺湖のほとりにあるという。

投稿者は観光社会学を専門とする社会学者・中井治郎さん。自身のXアカウント「ジロウ」(@jiro6663)で、イタリア大使館の夏季別荘として作られた建物を紹介した。

リプライツリーでは、「東京は35℃の日にここは25℃。縁側に立つと冷涼な風が湖面から優しく吹き上がってくるのを感じる」ともつぶやいている。

イタリア大使館別荘記念公園・本邸 (画像提供:中井治郎さん)

中井さんが投稿した写真が、この場所がいかに爽やかなのかを伝えてくれる。

広縁のガラス戸は開いている。この時期に、日中に窓を開け放っているのだ。

毎日のように熱中症警戒アラートが発表されているエリアの住人にとっては、信じられない光景かもしれない。窓を閉めきり、カーテンも閉じ、ようやくクーラーが効いてくる毎日だ。

しかしここでは、その必要はない。広縁には自然と、涼しい風が吹き込んでくる......。

中井さんの投稿には、1万1000件を超える「いいね」が付けられ(6日昼時点)、見た人からはこんな声が寄せられている。

「清冽な空気と切なさに思いを馳せました。一瞬涼しくなれたようです」
「日本の夏の家の理想を詰め込んだような、美しい家よ」
「存在しない記憶が蘇る...」
「其処此処に用いられる杉皮や竹。湖水や遠くの山並みを取り入れた借景。ある意味で開放的なモダンジャパネスクの数寄屋造りだと思います」

この場所での体験は、どんなものだったのか。記者は中井治郎さんに詳しい話を聞いてみた。

都心より10度も涼しく、目の前には雄大な風景

まっすぐ続く開放的な広縁(画像提供:中井治郎さん)

中井さんが中禅寺湖畔のイタリア大使館別荘を訪れたのは、2024年8月1日の午前中。

「前夜に日光の門前町で開催された講演会のために来訪していたのですが、奥日光は訪れたことがないと言うと日光でまちあるきのガイドもしている友人が案内してくれました」と語る。「午前中がおすすめ」とのことで朝から訪ねたという。

「酷暑の東京と10℃はちがうという気候の爽やかさが第一印象でした」と語る。

涼しい奥日光(熱中症予防情報サイトのスクリーンショット)

環境省の「熱中症予防情報サイト」を見てみると、奥日光エリアは確かに、かなり涼しい。

6日午後3時のデータでは、都内が「危険」「厳重警戒」のとき、奥日光は暑さ指数22.6で「注意」レベル。札幌よりも低い値だった。

過去一週間の実況値を見てみても「警戒」の暑さになることさえ、ほとんどないようだ。

桟橋・湖・稜線(画像提供:中井治郎さん)

その涼しさの次に中井さんが感心したのは、湖と山が連なる雄大な景色。

そして何より、それらの景色を大胆に住空間に取り入れた各国大使館の別荘建築。「こんなところで毎年、夏を過ごす贅沢な人生もあったのか」と圧倒されたと語る。

「夏を切り取るための窓」(画像提供:中井治郎さん)

「日光というと、日本人にとっては二荒山神社や日光東照宮などの信仰文化を中心に伝統的な観光地として栄えてきたわけですが、明治以降に入ってきた外国人たちのまなざしによって避暑地としての新たな魅力が発見されたということだと思います。
日本の伝統文化を象徴するような地域の奥に、西洋からやってきた人々がモダン建築の粋を競い合うような『ハイカラ』な世界も展開していたことに驚きました」(中井治郎さん)

ワーケーションも可能です

栃木県立日光自然博物館の公式ウェブサイト内の「イタリア大使館別荘記念公園」のページでは、このエリアについて次のように解説されている。

「明治中頃から昭和初期にかけて中禅寺湖畔には各国の大使館をはじめ多くの外国人別荘が建てられ、国際避暑地として発展しました」
「園内の建物は、昭和3年(1928年)にイタリア大使館の別荘として建てられ、平成9年(1997年)まで歴代の大使が使用していたものです。
『本邸』は床板や建具・家具などをできる限り再利用して復元し、副邸は往時の歴史を紹介する『国際避暑地歴史館』として整備しています」(「栃木県立日光自然博物館」サイトより)

中井さんが投稿で紹介した本邸は、著名な建築家であるアントニン・レーモンドの設計。横浜・元町公園にある「エリスマン邸」や東京・杉並区にある東京女子大学のキャンパスなどを手掛けた、日本の建築界に大きな影響を与えた人物だ。

2階建てで、1階は食堂と書斎で中央の居間を挟むワンルーム。そこから繋がる広縁から、中禅寺湖を眺められる。また、2階には寝室が並び、そこからも湖が見える。

ソファでくつろげる居間と、暖炉のそばの書斎(画像提供:中井治郎さん)寝室からも湖が見える(画像提供:中井治郎さん)

ああ、ここでのんびり過ごす夏。想像するだけでうっとりする。

「イタリア大使館別荘はとくにデザインも装飾的で、さらに当時、最先端のモダン建築というだけでなく、日光の環境や素材、文化との融合を強く意識したとてもユニークな建築であると感じました。
とくに避暑地の別荘という焦点を絞り込んだ用途から、夏の中禅寺湖の景色や空気を味わうことに特化した空間であることが感動的でした」

と中井さんも絶賛する。

中禅寺湖の景色や空気を味わうことに特化した空間(画像提供:中井治郎さん)

また、X上の反応については、こう述べていた。

「建物だけでなくやはり涼しい土地での避暑への憧れも多かったかなと思います。
リモートワークも普及してきましたし、これだけ酷暑が続くと、中禅寺湖に別荘を構えた各国の大使たちのように『夏のあいだは別の街で暮らす』というライフスタイルへの憧れは切実なものになりますよね」(中井治郎さん)

そういえば、栃木県立日光自然博物館の別荘公園のページでは、入館料として通常料金 300円という表記の他に、「ワーケーション利用も可能です。(有料)」とも書かれていた。

まさか、この見事な建物の中で働いてもいいというのか?

記者が同館に電話で確認してみたところ、別荘本邸2階のギャラリーを、ワーケーションに利用できるという。ギャラリーもまた、中禅寺湖に面した部屋のようである。

使用希望の場合は、電話・FAX・メールなどで申し込み可能とのこと。予約はいつもできるとは限らないそうだが、使える場合は室料920円、電源・照明などの使用料680円の計1600円がかかる。

本邸1階にはカフェがあり、コーヒーやクッキーが楽しめるらしいし......夏は、中禅寺湖畔のイタリア大使館別荘でワーケーションするしかないな、と思ったのは、記者ばかりではあるまい。

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