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鎌倉出身の画家・沼田さん 後遺症乗り越え、箱根で大病後初の個展

カナロコ by 神奈川新聞 / 2024年5月26日 5時0分

作品展を開いた沼田博美さん(右)と妻の薫くみこさん(箱根写真美術館提供)

 脳出血の後遺症で右半身にまひがある画家の沼田博美さん(76)による発病後初の作品展「おかえり」が箱根写真美術館(箱根町強羅)で開かれている。重度の障害を負い一度は絵画制作から離れるも、過酷なリハビリを乗り越えて利き手ではない左手で描き上げた作品は訪れた人の胸を打つ。6月6日まで。

 鎌倉市出身の沼田さんは東京芸術大卒業後、グラフィックデザイナーとして活動する傍ら江ノ電など国内外の鉄道を題材に描いてきたが、2019年に脳動静脈奇形破裂による脳出血で右半身まひや失語症を患った。20年春にリハビリの一環として左手で絵を描いたが、以前のようなタッチを出すことができず、1年半以上絵を描こうとはしなかったという。

 復活のきっかけは21年冬、言語聴覚士によるリハビリ中の変化だった。単純な図形を組み合わせて家を描くように求められた沼田さんは、筆を取ると透視図法を用いた立体的な家を描き、その回復ぶりに家族から歓声が上がった。それから沼田さんは50点以上の作品を描き上げ、発病後初めてとなる個展開催にまでこぎ着けた。

 会場には発病後に初めて沼田さんが自らの意思で描いた「一輪挿し」のスケッチのほか、サインペンや筆ペンで描いた江ノ電や花瓶などの作品58点が並ぶ。沼田さんのリハビリや制作風景を切り取った映像も上映。日を追って作品に表現力や繊細さが増し、沼田さんが回復を遂げていく道程を知ることができる。

 沼田さんを隣で見守ってきた妻の薫(くん)くみこさん(66)は「絵を描く前は目つきがぼーっとしていたが、描き始めてから表情も豊かになった。ここまで絵を描けるようになるとは思わなかった」と振り返る。同じような脳出血による後遺症を患っている人たちへ「好きなことを行うのが回復につながると思う。絵の変遷を見て少しでも前向きに生きてほしい」とエールを送る。

 午前10時~午後5時。大人500円、中学生以下300円、未就学児無料。問い合わせは、同館電話0460(82)2717。

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