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原点は若者文化…五輪で注目「アーバンスポーツ」の現場 「クリーンさと格好良さと」制約と自由のはざまで葛藤

カナロコ by 神奈川新聞 / 2024年6月25日 5時0分

2023年に、室内練習場を設立して指導に励む寺井さん(左)=5月22日、相模原市中央区

 今夏のパリ五輪開幕まで1カ月に迫った。今大会は追加競技のブレイキン(ブレイクダンス)をはじめ、スケートボード、自転車のBMX、3人制バスケットボールといった「都市型スポーツ」の熱戦にも注目が集まる。全国2位の人口都市・神奈川でも各競技で世界的プレーヤーを生み出すなど盛んだ。若者を中心に新たなスポーツへの価値観も広がる一方、多様な課題もある。県内のストリートスポーツの現場へ足を踏み入れた。

◆場所を求めて

 「うわ、できたー!」。カワサキ文化会館(川崎市川崎区)で開かれたスケートボード教室。4歳の男児がバランス良くパイロンをかわしてフィニッシュすると、とびきりの笑顔がはじけた。

 「よく友達のお母さんから『将来の夢はオリンピック選手かな?』と言われる。縁はないかもしれないけど、楽しくやっているのでうれしい」。横浜市西区在住の30代母親は愛息の上達していく様子に目を細めていた。

 ただ、気をもむこともある。「家の近くでもやらせてあげたいけど、公園内や道端に『スケボー禁止』という注意書きを見る。もう少しやれるところがあれば…」

 同市内なら新横浜公園や本牧市民公園など滑走スポットは多数あるが、この親子の場合は「車がなく、電車で行くしかないので駅から近いところを探していた」と同館に月3回程度通っている。

◆時代の変化

 2021年の東京五輪以降、スケートボードや自転車BMXなど都市型競技の人気の高まりは著しく、県内では次々とパークが新設されている。一方、夜間の騒音や器物破損などトラブルも相次いでおり、警察や自治体が取り締まりを強化している地域もあるという。

 「昔は夜な夜な駅前とかで滑っていても何も怒られなかったんですよね」。相模原市内でスケートボードのスクールを運営する寺井裕次郎さん(40)は時代の変化を感じながら、そう振り返る。

 寺井さんがスクールを開催してきた小山公園ニュースポーツ広場(同市中央区)は、ランプや手すりなどを装備する本格的な練習場。ただ、近年の老朽化で市は22年から再整備に乗り出した。

 そうした状況を踏まえ、寺井さんは昨春、同区の空き倉庫を活用してスクール専用の室内練習場を新設。近隣住民に理解してもらおうと「ここ(練習場)をやると決めた時から(近所にいる)全部の人にあいさつして回った」。東京五輪代表の白井空良(ムラサキスポーツ)ら同市出身スケーターの写真付きチラシを見せて丁寧に説明するなど心を砕いた。

◆ルール作り重要に ジレンマも

 スケートボードや自転車BMXはアクロバティックな技もあり、衝突、落下も起きることから、「アクション競技」とも呼ばれる。

 4年前、藤沢市にオープンした自転車BMX・マウンテンバイクのスクール「KOASTAL」。スクール生が使う自転車は一般的な車両と異なり、ブレーキは一つ付いているか皆無。ハンドルは360度回る設計だ。

 安全対策を徹底しており、練習トラックでの逆走や走路の横切りは禁止。フリースタイルの練習場ではジャンプをするランプ付近での接触を避けるため、競技中以外の者はランプの上での待機や車間を空けるといったルールを定めている。

 代表の宮本祐太郎さん(35)は「(ルールを守る)空気感があるので間違ったりすると、注意し合ったりできる」と話す。ただ、「教室」でなく、自由な空間で互いに高め合っていくのがストリートカルチャーでもある。「でも空気感だけでは難しいものがある。ルールを作っている方だけど、ストリートの格好良さや自由度は残していきたい」と、指導者としての葛藤もあった。

 スケートボードも自転車BMXも街中で生まれたもので、そもそも「競技」というより、独自のファッションなども結び付いた若者文化が原点。一方で、競技発展の観点からは安全性を考慮したルール作りが今後ますます重要になる。ジレンマを抱える宮本さんは「人に受け入れてもらうためにはクリーンなイメージを持っていきたい。ただ、格好良さもないと、広がるものも広がりにくくなる」と強調した。

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