【子どもの権利擁護センターかながわ10年】虐待や性暴力…傷ついた子どものために、大人は何ができるのか
カナロコ by 神奈川新聞 / 2024年12月15日 5時0分
虐待や性暴力を受けた子どもへの聞き取りから診察、心身のケアまでを一括で行う施設「子どもの権利擁護センター(CAC:Children's Advocacy Center)かながわ」(伊勢原市)が日本で開所して、間もなく10年を迎える。傷ついた子どもを救うために、大人は何ができるのか。運営する認定NPO法人「チャイルドファーストジャパン」理事長で、内科医の山田不二子さんに聞いた。
─CACかながわは、どういう施設でしょうか。
「虐待やネグレクト(養育拒否や不十分な養育)などの人権侵害を受けたり、ドメスティックバイオレンスや犯罪を目撃したりした子どもが『司法面接』、『系統的全身診察』、『こころのケア』を受けられるワンストップセンターです。2015年2月の開所時、司法面接と系統的全身診察だけでしたが、今年4月に児童精神科医を迎え、こころのケアも可能になりました」
─司法面接とは。
「児童相談所や警察、検察など関係機関が集まり、専門的な研修を受け、実績も積んだ面接者が聞き取る面接のことです。聞き取りは原則1回。虐待の疑い例が発覚した場合、これまでは関係機関が個別に聞き取りをしていましたが、何度もつらい体験を話さなければならず、子どもに身体的、心理的な負担がかかります」
─つらい体験だからこそ1回なのですね。
「実態把握の正確性を上げる目的もあります。何度も質問されると、子どもは『期待されていることを言ったほうがいいかな』などと思い、記憶と異なることを言うことがあります。誤った聞き取りは、事実と異なることを話させることになります。内容が変わったり、客観的事実と齟齬(そご)が生じたりすると、子どもが受けた被害はなかったものとみなされます。こうした事態を防ぐため、子どもの発達段階や心理的反応を十分に理解する専門家が担当する必要があります」
─司法面接で気を付けていることはありますか。
「子どもに被害の記憶を想起してもらい、それをそのまま語ってもらうのが司法面接です。そのため、誘導せず、自発的に語れるように質問しなければなりません」
─「自発的に」がポイントなのですね。
「被害に遭った子どもは『自分のせいだ』『家族を悲しませる』と思っていたり、加害者に口止めされていたりするなど、語ることを妨げるブロック(障壁)を抱えています。面接者はブロックを丁寧に取り除きながら、やりとりを重ねます。信頼関係を築けた時、子どもは胸の奥の『誰かに知ってもらいたい』という気持ちに到達し、記憶のまま被害を語ってくれます」
「語りやすい環境であることも大切です。司法面接は検察庁や警察署でも行われていますが、その場所に出向くこと自体、負担になります。重要なのは『子どものための施設』であり『子どものための司法面接』です。だからこそ、CACが必要なのです」
─「CACかながわ」の出発点はどこにあるのでしょうか。
「虐待防止の活動に取り組み始めた1998年、中学1年の女子生徒が体調不良を訴え、訪ねてきました。尿検査で異常が認められたので、紹介先の病院で調べたところ、膣内に異物が見つかりました。長時間放置され、炎症を起こしていたのです。手術で除去し、幸い後遺症は免れました」
「同居家族による虐待が強く疑われましたが、彼女は決して口にしませんでした。体の治療はできても、心のケアは何もしてあげられませんでした。こんなことがまかり通っていいはずがない、何か治療のシステムがあるはずだと調べた結果、米国にCACという施設があることを知りました。それがスタートです」
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