お笑いテレビ裏方稼業② 「柳田さぁ、おめぇさぁ、岡本夏生って知ってるか?」

太田出版ケトルニュース / 2014年12月27日 17時37分

太田出版ケトルニュース

2014年秋。「放送作家」という仕事を夢見る人がいれば…もうその段階で才能はない。ましてや、AMラジオ番組の常連ハガキ(メール)職人から、得体の知れない職業をめざすなんて愚の骨頂。辛辣な言い方だが、これが本音。
俺からの遺言だ。

『作家』と『放送作家』。
同じような響きですが、根本的にまったくの異業種。
その違いを開口一番、俺(柳田)に叩きこんでくれたのが伊藤輝夫だった。

「柳田さぁ、おめぇさぁ、岡本夏生って知ってるか?」

「…はい。知っています!」

俺の口調は極めて穏やかだったと思うのだが、その瞬間…空気が崩れ始めた。

「…じゃよぉ、おめぇよぉ~!岡本の“アソコ”って見たことあんのかよぉ?」

「岡本の“アレ??”…ないですけど」

あまりにも突飛な“ことば”に思わず、笑ってしまった俺。
その瞬間、伊藤はブチ切れた。

麻薬が切れたベトナム兵のような錯乱状態。
どこを見ているか予測がつかない斜視が完全に俺をとらえた。
激昂しながら、俺の顔面30センチの距離。

「てめぇ~よぉ~~!それでもよぉ~放送作家志望かよぉ!
 オンナのよぉ、アレをよぉ、想像するだけならよぉ、家の中に引き籠って、
 チンポコしごきながらよぉ、小説書いてりゃいいんだよぉ~!」

「… … …」
何のことを、なぜこれほどまでキレられているのか?さっぱり見当がつかない。

だが、伊藤の血走った眼球が俺をとらえて離さない。
「ほほほほほぉ、放・放・放そうぉ、さ、さ、さ、作家ぁ~。テレビのよぉ、
作家って言うのはよぉ~~ぉぉぉ!土方のオヤジや家を建てる大工と同じでよぉ~、現場の空気を吸いながら、図面に線を引いていかなきゃ意味ねぇんだよ」

…言葉は乱暴。否、乱暴を超えた“凶暴”そのものであったが、納得できた。
そんな俺の表情をすばやく感じとった伊藤の表情は一気に穏やかになった。

「岡本夏生ってさぁ~、アイツ、かなりの馬鹿だと思うんだよなぁ…。
 でもよぉ~、アイツ、すげぇ~ イイんだよぉなぁ~。テレビ向きなんだよなぁ~!岡本ってさぁ、土台“ヒール(悪役)”なんだよなぁ…!プロレスのアブドラザ・ブッチャーと同じでよぉ、ヒール役ってさぁ、己自身を語ってチンコ見せた瞬間、頭がイイ文化人に落ちこぼれてしまうんだよなぁ…」

これぞ伊藤輝夫の凄味。
モノごとの肝を、即効で鷲掴みする演出能力の高さであった。

そんな伊藤との何気ないやりとりを頭の中で何度も再生しながら、俺は目的地に向かっていた。「全国ネットのテレビ番組で、整形手術をOKしてくれる女」を探し求めながら、新宿の外れにある雑居ビルの一室をめざした。

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