今や世界が嘘に麻痺 フェイクをネタとして笑い、消費する危うさ

太田出版ケトルニュース / 2018年9月7日 15時25分

『フェイクの時代に隠されていること』より イラスト:小田嶋隆

「嘘をついてはいけない」ということは、世界中の子どもが大人から教えられたはずだが、現実には立派な立場にある大人が嘘をつき続け、社会全体が嘘に対して麻痺している。政治家にとって言葉は唯一にして最大の武器だが、なぜ政治家の言葉は軽くなり、ワイドショーにネタを提供する道具に堕ちてしまったのか? 7月13日に『フェイクの時代に隠されていること』を上梓した立憲民主党幹事長・福山哲郎と精神科医の斎藤環は、同書でこのように語っている。

 * * *
斎藤:トランプは出鱈目ばっかり言って、それが多すぎていちいち咎められないという状況になっていますよね。あれは「木を森に隠す」ようなもので。「嘘の林」ができてしまっているので(笑)。一個一個の嘘はもう区別がつかないし、目くじら立てられない。量で質を凌駕しちゃった感じがしますよね。まあそれが戦略だとは思いませんけど。

福山:だんだん麻痺してくるんですよね。国会議員のとんでもない発言だって、「ああ、またか」という感じになってしまって……。

斎藤:麻痺ですね。なんだか多すぎて(笑)。

福山:どんどんハードルが下がる。さすがに東北の地震を「首都圏じゃなくて良かった」と言った大臣は辞めさせられましたけどね。

斎藤:あれはそれこそ「情緒的な反発」が起こったと思うんですよ。「それはないだろう」と。大臣は人情に対する配慮ができなかった。

福山:そうですね。そう思うと、何が反発を受けて炎上するか、かなり事前に想定できるのかもしれませんね、斎藤さんから見ると。

斎藤:ええ。今でも「被災・原発ネタはけっこう炎上しやすい」と思います。同じ失言でも。リアルにまだ被災者が苦しんでいる状況下では、炎上案件になりやすいのは当然ですよね。被災地がまだ被災のトラウマから十分に回復していないのに、その痛みを否認するかのような政治家の発言は叩かれて当然です。

片や「政治的な正しさ」一般の水準で見ると、ちょっと前なら大騒ぎになったような発言にしても、今は反応がずいぶん鈍っている印象があります。中曽根康弘さんが「不沈空母」って言ったときは、まだ戦争体験者がいっぱいいたわけじゃないですか。だから、彼らが反発の声を上げられた。

今は戦争体験者の多くが亡くなられて、リアルな戦争体験の記憶が受け継がれにくくなっている。だから三原じゅん子議員が「八紘一宇」なんて言っても、さほど情緒的な反発が起こらなかった。そもそも言葉の意味がわからない。どのぐらいやばいかもわからない。「戦争証言者が減ると次の戦争の準備が始まる」とよく言われますけれども、ああこういうことか、と思いましたね。

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