被災した高岡市伏木の青果店 この夏解体 店の今後は
KNB北日本放送 / 2024年8月2日 19時7分
能登半島地震から7か月が過ぎました。7月にエブリィで紹介した、液状化現象の被災地・高岡市伏木地区の青果店がこの夏、解体されます。住民に親しまれてきた店を今後どうするのか、店主の思いを取材しました。
7月2日に紹介した、高岡市伏木中央町の青果店、林傳商店。
上野キャスター「地域の方がこうやって座ってお話されてー」店主の林傳一さん「今またお茶も出さんなん」上野「そういう場所なんですか」林「そう、憩いの場なんです」上野「こうやってみなさん集まって地震でどうだった?という話をされていたわけでしょう」客「そうそう」
店は、液状化の実態を映し出した交差点の近くにあり、被災しました。
営むのは、林傳一さん74歳。祖父が創業し、3代目です。
今年4月、まだ薄暗い早朝の伏木駅に一人、傳さんが立っていました。「ここも全部液状化でぼこぼこや」
春夏秋に月に2回開く朝市は、傳さんが運営しています。地震後初めてのこの日、出店したの傳さんだけでした。
「(いつもは)最低でも5店は来る。ひとつは魚屋さん。地震でお店がくちゃくちゃになって。伏木の人に少しでもスーパーよりも安く提供する、というその気持ちがひとつです」
明るくなるにつれ、お客さんが増えてきました。
女性客「今まで待っとったが」「いつも朝市になったらここ来るのが楽しみ。またみんなとしゃべるのも楽しい」
割安な価格でにぎわう朝市。傳さんは重い荷物を車まで運んだり、持ち帰れない人には、配達したりしています。「頼むねよろしくね。ありがとう」
傳さん「今ほど来ておられたお年寄りが、やはり買い物難民。朝市を待っていてくれて、せめて1週間分ほど買っていこうかな」
記者)被災して店を辞めようと思わなかった?
傳さん「よぎりましたね。いやまてまて、これから年寄りも買い物するところがなくなったら何だから、何らか伏木の中で商売をしていこうかなというふうな思いです」
思いは、伏木の住民のために。妻の京子さんを去年4月に亡くしてからも一人で店を営業してきましたが、日ごとに土間の亀裂が広がり、70年ほど続く店の解体を決めました。8月にも工事が始まります。
記者)解体しようかなと言っておられますけど?
高齢の女性客「都合悪いけどどうなる?どうしたらいいがやろか」傳さん「(交通手段がなく)大変やと思うわ」女性「大変やわ」傳さん「俺、御用聞きに来ようかなと思って」
伏木のまちなかに残る青果店は、傳さんの店を含めて2つだけ。もう1つの店も被災し、閉店を決めています。
この日、災害復旧支援のトラックでプレハブが運び込まれました。今の店から歩いて10分ほどの、息子の家の敷地で秋にも店を再開する計画です。
傳さん「今現在売っている品物を、店舗の中でこじんまりと売るつもり。ちょっとした果物と野菜とお菓子と少し並べればそれで十分だと思う。なかったらまた明日ねという」
記者)憩いのスペースは?
傳さん「この椅子でどうかなと思って。自分の部屋から取ってきた。今から家の周りにいろんな花を飾ります。俺花好きなんよ。めっちゃ好きなんよ」
プレハブを見かけて、住民が集まってきました。「運ばれましたって」「ここやと、見に来たがけ?」「見に来たが」「まだ空やよ」「こうやって来てくれたからうれしいわ。あーうれしい、ありがとう」「で、秋ながけ?」「早めてと言っとるが」「早めて、うちのも免許証返納したから、80になって」
傳さんの周りには、笑いがあふれていました。
傳さん「いすを置いて、ここでしゃべらんまいけ」女性「座っていたらみんな集まってくる、あそこなんかにぎやかやよって」
傳さん「集まればいいが。買わんでもいいが。俺の思いは。ありがとうありがとう。そんながで、またよろしく」
女性「いろんな話して笑顔が出ていたら何よりのごちそう」夫「あとわずかな余生を楽しもう」女性「すぐそう言わはる、このごろ」
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