【なぜ】母子生活支援施設 富山県内ゼロ 支援者ら設置求める声
KNB北日本放送 / 2025年1月14日 20時8分
「母子生活支援施設」をご存知でしょうか。
児童福祉法に定める施設で、事情を抱えた母親と子どもに対して、相談や援助を行いながら自立を支援する施設です。
しかし、富山県内には全国で唯一、施設がなく、支援活動をする人たちから疑問の声が上がっています。
施設設置の必要性を訴える取り組みを取材しました。
【沙魚川万紀子さん】
「母子生活支援施設、富山県にはありません。不適切にもほどがあると(チラシに)書きましたけど、本当にその思いがあふれている」
去年11月、高岡市で開かれたワークショップ。
「母子生活支援施設」について知ってもらおうと、高岡市などで困難を抱えた女性を支援する沙魚川万紀子さんらが開きました。
会合では、福井県あわら市で施設を運営する渡邉総合施設長が、その必要性について講演しました。
【社会福祉法人聖徳園 渡邉一幸総合施設長】
「ちょっと前まではDV(被害者)が主流でした。今はDVプラス、もっと複雑な問題を抱えている。DVだけでなく借金を抱えていたり、精神的な病気を持っていたり、子どもたちが発達障害であったり、これらが全部かぶっている。そういう人たちがどんどん利用されている」
高岡市でコミュニティハウス「ひとのま」を運営する宮田隼さんは、父親の暴力から逃げた自身の体験を語りました。
【宮田隼さん】
「母は僕を連れてよく逃げるということをやっていた。福岡県内を10校くらい転校している。全部逃げ方は一緒。母さんがいきなり逃げるよと言って逃げる。寝ているのか寝ていないのかよくわからないまま1日が過ぎてそれが何日も、そういう状態。はたから見たらホームレスだった。そんななかで助かったのが母子寮(母子生活支援施設)なんですよね。とりあえず住むところがちゃんとあった。これにどれだけ救われたか。ちゃんと寝られるところがある。食べるものの心配がいらない。そして何より母さんが安心して眠れている。それが本当にどれだけありがたかったか」
県内には、去年3月まで、富山市に県内唯一の施設、「和光寮」がありました。
それを市が廃止した理由はー。
【富山市・藤井市長】
「入所者がいないことや施設としての必要性が薄れてまいりましたことなどから廃止を決定させていただいた」
全国の母子生活支援施設は、DV加害者から被害者を遠く離すためなど、広域で入所者を受け入れています。
一方、富山市は、2021年11月以降、入所者がいないことを廃止理由に挙げました。
【宮田さん】
「ちょっとふざけるなと思ってしまう。僕は言う権利があると思っている。だってそういう人たちを泊めてきましたから。親子で行き先がなくて泊めてくれないかという方を何人も泊めてきた」
あわら市の施設にも、これまでに何人も富山県民が入所しています。
【渡邉総合施設長】
「今、定員は15世帯です。実際に入っているのは6世帯。県内から2世帯入っている」
参加者からも、富山市の対応を疑問視する声が相次ぎました。
【NPO法人えがおプロジェクト 出分玲子さん】
「富山市が母子寮をまだやっている時に利用したいという方がおられて市役所へ行ったが利用は難しいと言って断られた」
【富山市で支援活動をする女性】
「経済的DVもあり困窮している状況なのでお願いしたんですが受け入れは難しいと断られて」
【高岡市で放課後等デイサービスを運営する伊藤則子さん】
「実際に私も施設がなくて、自分の家の方でお預かりしたことも1年に何件かあるんですよ」
県内にも、施設のニーズがあることが分かります。
暴力を振るう夫から自立するため、県内から逃げて県外の母子生活支援施設を利用していた女性に話を聞くことができました。
【まきこさん(仮名)】
「とにかく本当に毎日どう怒鳴られないで生きていくかだけを考えて。でも結局、エスカレートしていくだけ。自分がリストカットをするようになって何を見ても泣けてくるし、次男がティッシュ持って来て血が垂れているのをふきふき、と言って拭いてくれたり」
女性は、子どもと暮らした施設での5年間があるから今があると言います。
「何もない状態でも布団とか借りられる。電子レンジとか全部借りて。逃げて本当によかった。もっと早く逃げたかった。生きているんだから、ちゃんと楽しもうよというところにまで来られた。子どもたちも本当に生き生きとのびのびとしている、確実に必要だった施設ということ」
宮田さんは、子どもの視点で必要性を考えてほしいと訴えました。
【ひとのま 宮田隼さん】
「こどもまんなか、ときれいごとで言っている。本当にこどもまんなかでやろうとしたら、そうはならんやろということがいっぱいあると思う。ただ住むところと安心して寝られるところ、食べるものがほしかった。今もそういう子どもがいっぱいいる、それを考えたときに、こういう施設をなくすという選択肢が本当にこどもまんなかになっているのか今一度、考えてほしい」
母子生活支援施設を取り巻く現状について知ってほしい。
その思いは、参加者に響いたようです。
【沙魚川万紀子さん】
「行政を変えるのはとても難しいと思うので、民間サイドからいろんな波を起こして少しでも揺り動かせたらいいのかな。次にまたつなげたいと思うし、何かこう波がね、広がっていくとうれしいです」
沙魚川さんたちは、今後、県へ設置を働きかけたいとしています。
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