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ピーター・アーツ引退試合で感じたK-1時代の完全なる終焉

TABLO / 2013年12月26日 10時0分

ピーター・アーツ引退試合で感じたK-1時代の完全なる終焉

 12月21日。 有明コロシアムで一つの伝説が幕を閉じました。

 「20世紀最強の暴君」ピーター・アーツの引退試合。 アーツと言えば豪快なハイキックを武器にKOの山を築き上げ、アンディフグ、マイクベルナルド、アーネストホーストらと共にK-1四天王と呼ばれ、K-1グランプリ3度の優勝を誇るK-1の象徴的存在。 既にホーストは引退、アンディ、ベルナルドは故人となっています。

 四天王の最後の一人、43歳のアーツが引退試合の相手に選んだのは自分より19歳若いリコ・ベホーベン。 10月に行われた世界最大のキックボクシング団体、GLORYのヘビー級トーナメントで優勝しています。現時点でキックボクシング世界最強の男と言っていいでしょう。飛ぶ鳥を落とす勢いの若き王者に対するアーツ。関係者の予想は圧倒的にアーツのKO負けが多数です。果たしてどうなるのか。

 試合前に流れるいわゆる煽りVでは亡きアンディの墓前に手を合わせるアーツの姿。オールドファンならこれだけでグッと来ます。おなじみの入場曲『Misirlou』が流れる中、これまたおなじみ木こりのコスチュームで小走りで入場するアーツ。最後のリングに向かう悲壮感を感じさせません。

 いよいよアーツ最後のゴングが鳴ります。守りに入ることなく果敢に攻めるアーツ。悲しいかな衰えは隠せず、足元もふらついています。ファンの期待に応えるように得意のハイキックを繰り出すも往年の破壊力はありません。

 対する若きチャンピオンはどっしりと構えて的確に反撃。アーツを何度もマットに転がします。 攻撃を食らいながらも新人のようにガムシャラに攻撃を出し続けるアーツに場内から一斉のアーツコール。 昨今寂しい話題が相次ぐ格闘技界で会場があれだけ盛り上がったのは久しぶりなじゃないでしょうか?

 アーツが懸命に耐える中で終わりを告げるゴングが鳴り響きました。ヨーロッパ式のGLORYの通常のセレモニーで終わるかと思ったその時、長年K-1のリングアナを努めたボンバー森尾氏が登場です。

 ボンバー森尾氏のコールの中、フジテレビK-1中継のテーマ曲のプリンスの『エンドルフィンマシーン』が流れます。明らかに旧K-1を意識した演出です。そしてリングから消えていくアーツ。 

「KからGへ」という演出が大会中になされていましたが、これで本当にK-1が終わったと強く印象付けるものでした。

 20世紀最後の暴君と呼ばれながらも、時には傷つきやられても必死で前に出続け見るものに感動と勇気を与えてくれたピーター・アーツの伝説はこれで幕を閉じます。今まで夢をありがとう。長い間お疲れ様でした。

 日本に一大格闘技ブームを巻き起こしたK-1のように、GLORYがまた新たなムーブメントを起こせるのでしょうか。ネットの台頭により、テレビなど旧メディアに勢いがない現状では、今まで通りのやり方では難しいはず。期待を持って見守りたいところです。

Written by 大野崇(プロキックボクサー、元K-1 JAPAN選手、トレーナー)

 

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