一斉摘発された中国・覚醒剤村の真実「俺はあの村へ招待された...」
TABLO / 2014年1月8日 10時0分
新年早々、奇妙なニュースが駆け巡った。3日付の中国・南方都市報などが伝えたところによると、中国広東省の公安当局はこのほど、中国最大規模の覚醒剤の生産拠点よとして知られる同省陸豊市の博社村を一斉捜索。182人を拘束、覚醒剤約3トンを押収したという。
同紙によると、2012年に中国全土で押収された覚醒剤のうち、3分の1が陸豊市産だった。約1万4千人が住む博社村では、2割以上の家庭が覚醒剤の販売や製造に関与していたという。拘束者には同村の共産党支部書記ら幹部14人も含まれている。
また、周辺の省から原料を集め、各家庭内で製造するなど、村の「産業」となっていた。村人が拘束されると村支部書記が当局者に賄賂工作し、釈放させていたという。捜索は昨年12月29日早朝に行われ、武装警察など約3千人を動員。ヘリコプターや船も使って、陸海空から村を包囲、77カ所の覚せい剤製造工場を摘発したようだ。
このニュースを聞いて即座に、ある人物を思い出した。それは昨年の夏頃だった。
「中国に覚醒剤村があって、そこの村民は殆どがポン中。そして製造している。俺はそこの村に招待されて、取引を持ちかけられた」と得意げに話す男がいたのだ。
その時は男の言葉を軽く聞き流していた。そんな事などありえないと思ったからだ。しかし、今回の報道により、その男の言葉が俄然真実味を帯びたものになった。男に改めて取材を申し入れた。
――以前に話していた中国の覚醒剤村の話をもう一度聞きたい。
「だから言ったろ、信じてくれないから。別にいいよ。俺は取引断ったから」
――どんな状況で取引の話が出たのか。
「2年前にある仕事で香港に行ったんだよ。そこで知り合った中国人と話しをして、俺が昔暴力団にいた事も話したんだ。そうしたら、いい儲け話があるから聞けってね」
――どんな話の内容だったのか。
「広東省に覚醒剤を製造している村がある。そこから日本に輸出しないか、という話だ。一緒に組まないかという取引の誘いだな。それで今すぐその村まで連れて行くって言うんだよ」
――その村に行ったのか。
「行ったよ。香港から車で。夜に出て朝に着いた。いやあ、凄かったよ。村に入る前に厳重な検問所があるんだよ。中国はどこもそんな感じだけど、あの村はとくに厳しい。今から考えると、本当によそ者を入れたくなかったんだな。しばらくその検問所で待たされて、そいつの知り合いが迎えに来て、ようやく村に入れた」
――そのまま村を見学できたのか。
「できたよ。覚醒剤の製造工場にも行った。だけど、見学して本当に嫌になったね。とにかく汚いんだ。環境が。汚い水の中で精製してるんだよ。汚いザルを使って。それで作ってる奴はみんな目がいっちゃってるだろ。村で歩いてるのはほとんど動きが怪しいやつばかり。覚醒剤をやってる人間は自分がおかしい行動を取ってると気付かないけど、やってない人間が見たら一発で挙動不審だとわかる。その村ではみんながそんな感じだったよ」
ーーなぜ、取引を断わったのか。
「仕入れても輸入が難しい。輸出は中国人が責任を持ってするから、輸入の段取りはやって欲しいって言われたけど、こっちが逮捕されたら無期もありえる。だからやめて良かったよ」
――そこで作られたブツが日本に流れている可能性はあるか。
「あるだろ。ちょっと話しただけでその村に連れて行かれたんだよ。馬鹿な奴が話しに乗っかる可能性は十分あるだろうな」
今回、この村で押収された覚醒剤について、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは末端価格にして推定2億3200万ドル(約240億円)に上ると伝えた。中国にはこのような「覚醒剤村」が複数あるとも言われている。中国の薬物汚染は我々の想像以上に広がっているようだ。
Written by 西郷正興
Photo by GUANGDONG PUBLIC SECURITY BUREAU
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