川崎逃走・杉本容疑者 友人の独占手記と「しばき隊炎上騒動」の深層~ネトウヨ論:番外編

TABLO / 2014年1月11日 10時0分

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 1月9日の東京ブレイキングニュースに、川崎逃走事件の杉本容疑者を知るという山口祐二郎の手記が掲載された。

 これに続き、翌1月10日には連載陣の草下シンヤによる逃亡犯に関する記事が掲載された。

 この2つの記事を比較してみると、感情的になり過ぎている山口と、達観というレベルで冷静な草下という色の違いが解るだろう。

 読者の心象としては、間違いなく草下の方が「当たり前のこと」を書いている分だけ良いと思われる。それに対して、山口の方は恐らく世間の理解は得られない。過去に街中で一回会っただけの関係なのに 「杉本君に会って説得して来ます!」だなんて、どんな炎上商法なんだという話だ。今回の山口の手記を読んだだけの方には、事件に便乗して名を挙げたいだけの無名ライターと思われて終わるだろう。山口はその現実を正しく認識しなければならない。ハッキリ言って下手クソ過ぎだ。

 ところが、私や草下のように実際の山口を知る人間からすると別の感情が湧く。特に草下は山口の兄貴分であり付き合いも長いため、私以上に思うところがあるだろう。一言でぶった斬るならば、山口祐二郎は若すぎて感情優先で暴走してしまうタイプの男なのだ。

 これを理解するには、彼の背景から見なければならない。山口は元いじめられっ子で酷い目に遭ってきた経験があり、それがこじれて今ではトラウマを払拭するためかのように直情的に行動する人間になってしまった。 過去に何度か事件や騒動を起こしているが、中でも2007年7月に防衛省に火炎瓶を投げ込んで逮捕された一件が最もインパクトが大きいだろう。

■義勇軍(http://www.giyuugun.jp/yamaguchi.php)

 また現在ではしばき隊(解散)の山口として、特にネットウヨク系団体の支持者から罵詈雑言を浴びせられる立場にある。(元は山口こそテロも辞さない活動派右翼だというのに)

 ただ、今回そんな山口が発した言葉の中に、聞くべきものがないかと言うとそうではない。 杉本容疑者はまだ容疑者の段階であり、逃亡という大下手を打って立場をこれ以上ないほど悪化させたものの、まだ犯行内容や刑罰が確定した訳ではない。

 であるにもかかわらず、ネットも大手メディアも杉本容疑者のプライバシーにまで踏み込んでお祭り騒ぎだ。特に妻や子供まで必要以上に晒し上げられている状況は、いつも通りの日本人の幼稚さを表す好例であろう。山口も幼稚ならば、それを批判しながら杉本容疑者の家族にまで危害を加えている連中も同様に幼稚である。

 私は過去に上記のような記事を寄稿したが、今回の一件もこれらと同じ展開になっている。 法治国家である日本において、犯罪者(容疑者)を調べたり罰を決めたりするのは警察・司法であって野次馬連中ではない。この国では私刑(リンチ)は認められていないはずなのに、このような事件が起きるといつも家族が犠牲になる。 仮にプロが「女房子供にも責任あり」 と見做すならば仕方ないだろうが、暇つぶしでネットを巡回している程度の輩がどうして他人を裁こうとするのか? また、どうして犯人個人ではなくその周囲の人間まで標的にするのか?

 これが大昔ならば「一族の中から罪人が出たら郎党皆殺し」 的な考え方も通用したのかもしれないが、残念ながら今は2014年である。お前らはいつまで中世の時代に生きているのかと問いたい。日本人を文明とは無縁の未開の部族にするのは止めてくれ。

 山口の話に戻すと、彼は色々と誤解を招きやすい浅はかな人間ではあるが、しばき隊として暴れるその裏で、いじめられっ子や、何かしら問題を抱えた逃げ場のない子を保護するような活動もしている。世間様から見たら明らかに大馬鹿野郎ではあるが「vsいじめ問題」という点ではブレていない。そんな男だからこそ、徒党を組んで新大久保の街で在日コリアンをいじめるネットウヨク団体が許せなかったのだろう。

 だが悲しいかな、彼はこのままでは野心を抱えた運動屋にとっての「都合の良い鉄砲玉」 で終わってしまう。草下を通じて人間関係が構築されたこともあるので、私としては山口の成長を気長に見守ってやりたい。感情のコントロールが苦手なアホの子なだけで、決して悪いヤツではないのだから、彼が二度と火炎瓶男にならないように見張るのが、私を含めた周囲の役目だろう。

 と、この私の山口に対する感情を、山口の杉本容疑者に対する感情と照らし合わせてみるとどうなるか? 山口は今回杉本容疑者を 「庇いたい」と言った。それが誤解を生む元ではあったのだが、山口の本心は 「自分が会えば説得できるかもしれない」だった。それが幼稚なんだと言われたらそれまでだが、杉本容疑者からすれば仮に刑が確定したとしても 「自分を庇ってくれようとした人間がいた」という事実が記憶に残る。よほどの悪人でもない限り、このような想いがあれば更正に繋がる可能性が増す。 刑罰とは、罪に対する制裁であると同時に、更正させる手段でもある事を忘れてはならない。それが日本の刑罰の大原則だ。

 私や草下が山口を鉄砲玉に逆戻りさせたくないと考える。そして山口は杉本容疑者を更正させたいと考える。そうやって個々の情が無理のない範囲で繋がって行って「犯罪者が同じ過ちを犯さず、結果的に治安が良くなればいいよね」という生ぬるい考え方が日本の治安を維持して来た。

 現在のネットでよく見かける「リンチ上等!」な連中の声が増せば、一度罪を犯した人間は更正の機会を永遠に失い、シャバに戻ってもハナから法など守る気もないアウトローにしかなれない。それは結果として日本の治安を悪化させる事に直結し、それが巡り巡ってアナタ自身やアナタの大切な人が犠牲になる事件を引き起こす要因になるかもしれない。

 犯罪者について語るな、事件について思うところがあっても口をつぐめとは言わないが、「なぜ犯罪者に更正の機会が与えられているのか?」を考え、どこまでならば許されるのかを判断した上で 「公の場=インターネット空間」 で発言すべきであろう。

 蛇足ながら、今回の一件で早とちりして「杉本はしばき隊だ!」と騒ぎ、全くの他人の写真をネットにばら撒いた連中が、現在 「謝罪祭り」 になっている事を付け加えておきます。リンチする側(正義の多数派)だから安全だと思い込んで調子に乗っていると、思わぬ落とし穴にハマる場合があるので気を付けましょう。

Written by 荒井禎雄(山口は友人だがしばき隊は大嫌い)

Photo by sleep tålk

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