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ドラマ『明日、ママがいない』抗議騒動の真意を全養協・事務局長に聞いた

TABLO / 2014年1月23日 12時10分

ドラマ『明日、ママがいない』抗議騒動の真意を全養協・事務局長に聞いた

 全国児童養護施設協会と全国里親会は21日、厚生労働記者会で日本テレビのドラマ『明日、ママがいない』に関して、放送中止、あるいは、内容の改善を求めるように求めた。児童福祉施設を舞台にしたドラマで、子どもが入所する際に恐怖を感じたり、おどろおどろしい表現ががある。また施設長が暴言を吐いたり、体罰をするシーンもある。これらが現実に即さず、当事者の子どもたちが傷付いていると訴えた。赤ちゃんポストがある慈恵病院(熊本県)が「人権侵害」として放送中止を求めていたが、20日、放送継続を病院に伝えていた。

 日本テレビのドラマ『明日、ママがいない』は1月15日から毎週水曜日午後10時から始まった。制作会社は日本テレビの100%子会社「日本テレビAXON」( http://www.ax-on.co.jp/ )。放送は10回を予定している。舞台はグループホーム「コガモの家」で、母親が彼氏を鈍器で殴ったことにより、殺人未遂で逮捕されたことで、その子どもが「コガモの家」に入所することになる。それを理由に「ドンキ」というあだ名がつけられる。一方、「コガモの家」には、「赤ちゃんポスト」に預けられたために「ポスト」というあだ名の子がいた。その施設には、「魔王」と呼ばれる施設長がおり、暴言をはいたり、体罰をするといった設定だ。

 グループホームとは「地域小規模児童養護施設」のこと。2000年から制度下された、定員6人の児童養護施設だ。大規模の児童養護施設ではなく、家庭的な雰囲気や地域との関わりの中で生活をする場だ。運営は地方公共団体や社会福祉法人。児童指導員や保育士ら二人以上の職員を置くことになっている。比較的新しい制度のために理解が十分ではない。そのため、いくらフィクションだからといって、現実とかけ離れた設定や描写をされれば、児童福祉施設やそこで働く職員、子どもたちが傷付く、として、二団体は放送中止か、内容の改善を求めている。

 会見では、放送前からドラマ制作会社や放映する日本テレビとの協議をしてきたことを明らかにした。12月にドラマの予告宣伝を知ったことで施設長から「内容がひどい。抗議したほうがいいのでは?」との声が寄せられた。

 そのため、全養協は制作会社と連絡をとり、12月16日に内容を確認。制作会社の担当者に対して「内容がひどすぎる。現実が反映されるように、内容の改善、訂正をお願いをした」(武藤素明事務局長)。同月24日には、全養協の事務局に日本テレビのデレクターがきた。そして26日にも事前に申し入れている。その際、日本テレビ側は「フィクションであって、正しい制度はこうだ」ということをホームページに載せたいと、全養協側に原稿を依頼したが、「ドラマの正当性を認めることになる」(藤野興一会長)として拒否した。

 また、第一回目ですでに子どもが傷付いている、ともした。会見で示した事例によると、あるグループホームに入所している女子高生が「『魔王」みたいな職員がいるの?あんなところに住んでいるの?」と聞かれ、嫌な思いをしたこと、高校一年生の女子生徒が見て「勉強が手に着かない」と言っていた、学年は不明だが、「お前らももらわれていくのか?」と聞かれた子どもがおり、「放送をやめてほしい」と言っているという。

 また、施設に子どもを預けている親から「子どもが学校でいじめられるのではないか?」と心配し、施設に連絡があった、という。ただ放送から一週間も経っておらず、子どもの反応は集計中だ。

 星野崇・里親会会長は「メーリングリストではいろんな意見が出ていて、一つひとつ整理している。内容と成り行きによってが、スポンサーと話してもいいと思っています」とも話した。現場の批判がこれ以上大きくなれば、制作会社やテレビ局を飛び越し、スポンサーとの話し合いになることを示唆した。

 ネットでは様々な反応があり、Twitterでは施設出身者のつぶやきもあり、賛否両論だ。会見後、そうした出身者の声があることについて武藤事務局長に聞いてみた。

ーーTwitterで施設出身者の意見で、賛否両論がつぶやかれている。

「施設出身者も施設に対して肯定感を持っている人もいあれば、否定感を持っている人もいる。それ(施設への否定的な意見)はそれできちんと受け止めたいし、否定するものではない。そういう声は十分に聞かなければならないと思っている。ただ、みんなが施設に対して否定的な意見ばかりではない」

ーーそうした意見がでることで、施設内の改善ができればいい?

「当事者たちから話を聞いたほうがいい。今回の件でいい意味で、社会的養護の問題を関心を持っていただきたい。ある時代だったら、もしかすると、(ドラマのように)そんな状況もあったかもしれない。いまはそういうことがあってはダメだとなっている。施設内虐待の根絶を目指して取り組みを行なっている。私たちは(施設内虐待を)なくそうとしているし、改善をしてきた。改善するためには当事者の意見を聞いていかなければならない」

ーー映画などでも社会的養護の問題を取り上げいるが。

「こういう脚本がありきで進んでしまったのでは? 時間をかけて放送をしたとは思えない。あまりにも問題点は多すぎる」

 連蔵ドラマは、途中では論じにくい。一本の映画であれば、すべてを見てから、あるシーンをどう捉えるかを解釈できる。しかし、連続ドラマの場合は、その意図が一回一回、明示されるとは限らない。また、「子どもが傷つく」や「事実と違う」ということだけで、ドラマが否定されるのもどうなのか?と思ってしまう。そうしたドラマはこれまでにも無数にあったに違いない。もちろん、差別を助長すべきではないことは言うまでもない。ただ当事者の子どもたちの声を聞いてみてから、もう一度、考えてみたいと思った。

Written by 渋井哲也

Photo by 「明日、ママがいない」公式サイト

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