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『明日ママ』軌道修正でハッピーエンドは無責任? 施設OBが語る過酷な現実

TABLO / 2014年2月5日 12時55分

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 児童養護施設を題材にしたドラマ『明日、ママがいない』(日本テレビ)だが、スポンサー降板や関連団体から批判ばかりが注目されているが、実際の児童養護施設とはいったいどのような場所なのかは語られていない。

「あのドラマは別に気にならないです。テレビが児童養護施設の実態を伝えるはずがないし、実際の生活はどん底でしたよ。ドラマだからしょうがないとは思うけど、『明日、ママがいない』は所詮、"きれい事"の世界でしかないです」

『明日、ママいない』の感想をそう語るのは、児童養護施設で育ったという男性(34)。2歳の時に両親を亡くし、親戚をたらい回しにされた挙句、4歳で施設に入ったという。

「当時は幼児から高校生まで100人前後はいましたね。ボクがいた施設は大所帯だったので、ドラマのように毎週誰かが里親に引き取られたり、施設内で子供たち同士で助け合ったりなんてことは一切ありません(笑)。むしろ、イジメだとか先生からの体罰だとか、誰かのモノが盗まれたりとか、そんなことばかりの毎日でしたね」

 児童養護施設内で繰り広げられる特殊な人間関係は外からでは絶対に分からないという。

「ボクたちは施設内では助け合ったりなんてしないんだけど、外に出ると一転して結束力が強いんです。中学生くらいになると、かなりの人数がグレていくんですが、施設の人間は学校の不良グループの中でも恐れられていましたね。それは失うものが何もないから、暴力でも窃盗でもとことんやるからです。施設の先生も『お前らは助け合え』とことあるごとに教えていた。だから、施設の誰かがイジメられたりすると、施設の人間は一丸となって復讐しましたね。その辺の執念深さは両親健在な坊ちゃんに負けるはずがないんで」

 同世代には徹底抗戦する一方、「社会」からも陰湿な差別を受けることも多かったようだ。

「たとえば学校で授業参観になると、デリカシーのない教師が、『今日は誰々のお母さんが来てないけど......』とか必ず言い出したりして。ボクはそれを聞いて、その教師に植木鉢を投げつけましたよ(笑)。これはあくまで個人的な意見だけど、中年の女教師はその辺のデリカシーがないですね。社会での差別を感じたのはほとんど学校の教師からでした」

 男性は高校卒業と当時に社会人として独立して、今では施設での餅つきや夏のキャンプ、クリスマスなどの行事にも参加してプレゼントを贈るなど積極的に支援を続けている。

「施設には今でも感謝していますからね。過酷な体験も今も生きています。人間は何も失うものがないと怖くないんです。ボクはそれをここで教わった。それと社会に向けて、平々凡々として生きている奴らには絶対頭を下げさせてやると心に誓いましたから。『明日、ママがいない』で児童養護施設が注目されていますが、その善悪はどうだっていい。だけど、実際はもっと過酷な環境なんですよね。このままドラマが軌道修正してハッピーエンドになるんだとしたら、それこそ無責任でしょ。児童擁護施設での暮らしって、数カ月とか半年とかの短い期間じゃないんです。実際にボクらは18歳までじっと耐えて暮らしてきたんだから」

 施設出身で成功している人間も数多くいる。それは自身の経験をマイナスととらえていないからだ。この男性も「失うものは何もない」という気持ちだけで他人にも誇れる生活基盤を築くことができたという。それは現実の施設には、ハッピーエンドがなかったことを示している。

Written by 西郷正興

Photo by ドラマ『明日、ママがいない』公式ホームページより

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