波紋を呼ぶNHK特集「若年女性の貧困」と「デブ専売春あっせん女」のその後

TABLO / 2014年2月2日 11時6分

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 1月27日に放送されたNHK『クローズアップ現代/あしたが見えない ~深刻化する"若年女性"の貧困~』の内容が波紋を呼んでいる。

 この番組では貧困状態にある若い女性が取り上げられ、彼女達の置かれた「あまりにも明日が見えなすぎる」苦しい状況がレポートされている。番組の調べでは、10~20代の働く女性は全国で約500万人おり、その内の約半数が非正規雇用者なのだそうだ。

 こうした働く若い女性の中でも、特にシングルマザーの苦しさが際立っており、働きたくてもまともな職がない。仮に労働時間や勤務地など条件に合う職があったとしても、子供が預けられなければ働けない。では万策尽きて生活保護を......と申請を出しても、役所によってはすぐに受理してくれないとか、実際にお金が入るまでに何ヶ月もかかるなど、今日明日食べる物に困っている人間への対応とは思えないお役所仕事をされてしまう。

 ところが、女性向けの求人募集の中には給与が良く、寮も託児所も完備されており、子供の心配をせずにお金が稼げる夢の様な業種もある。それが「性風俗産業」いわゆるソープだヘルスだの類だ。

 上の記事の場合は「身体が規格外すぎて普通の生活が送れない」という女性が、他に選択肢もなく、風俗に落ち着いてしまう現実に触れた。これと同様に、頼る人間のいないシングルマザーも風俗くらいしか行き場がないのである。しかも風俗業界の方が給与が良く、そして女性の身体自体を商品とするだけに福利厚生や安全管理が手厚い(※ただしこれについては後ほど補足があります)。さらには身体を売る事に変わりはないが、その中でも「自分にどこまでのプレイが可能か?」によって、業務の内容を細かく選べてしまう(本番がOKなのか、口や手だけにしたいのか、もっとニッチなプレイも可能なのか......)。ここまで条件が揃っていたら、そりゃ「正業とはなんぞや?」という結論に至るのも仕方ないだろう。そもそも正業に就いたって未来がないのだから、お金が必要な一時だけ風俗の世界に身を置く決断をしたとして、誰がそれを責められようか?

 そもそも、我が国の治安維持に関する根本の部分には「真っ当に生きる手段がいくらでも用意されている」という大前提がある。厳密に言えば "あった"。わざわざ罪を犯さなくても生きていけるからこそ、犯罪に手を染める人間が減らせ、結果的に治安が維持できるという考え方だ。

 ところが、こうまで生活苦に陥る人間が増えてしまうと、もはや「真っ当に生きればいいじゃん」 とは言えなくなる。真っ当な方法では食えない人間が増えすぎたからこそ問題視されているのだ。成功法だろうが奇策だろうが、極論を言えば犯罪行為だろうが、まずは食べられてこそである。ルール・マナー・モラル以前の問題で、自分の命を守る事こそが"生き物"として当然の最重要課題なのだから、他に食い繋ぐ手段がないのならば、犯罪に走ろうと何をしようと仕方がない。ただそうなっては世の中が無茶苦茶になってしまうから、税金の再配分などを行って万民がそれなりの生活が出来るように取り計らい、国が荒れるのを防ぎましょうというのが政治家の仕事だったはずである。 しかも、いま苦しんでいるのは主に若者だ。少子化問題が叫ばれている中で、少子化を解決する最も大事な武器のはずの若者が、子供を作る事はおろか将来の不安から結婚すらできず、国に見捨てられたかのような生活を続けている。

 しかしこの状況で政治家の先生方が何を考えているか、今回の都知事選のマニフェストを眺めて確認してみて欲しい。有力候補と言われている連中は脱原発だのオリンピックだのなんだのと、見当違いの「バカを騙すのにちょうどいい派手な台詞」ばかりをがなり立てている。彼らはいったい誰のための政治を行おうとしているのだろう? 原発問題やオリンピックって、都民の生活にそこまで大きな影響があるのだろうか?

 またオリンピックといえば、いま東京都内ではオリンピックに向けて街の浄化中である。このままで行けば、いずれ新宿・渋谷などの大繁華街からセックスワークに絡む様々な店や物が駆逐されるだろう。 知人の歌舞伎町の夜の住民らなど、オリンピックまでに自分の商売が潰される事を予期し、手段を選ばず金を貯めるのに必死になっている。それこそ治安の悪化を招いていると思うのだが、彼らだって食べて行く権利はあるのだからしょうがない。自分が飢え死ぬと解っていて、ただ座して死を待つバカはいないのだ。だがこうした浄化が進めば、アンダーグラウンドにしか生きる場所がない人間はどうなるのか? 彼女ら彼らに対する代替案は用意できているのか? そうしたフォローが何もなく稼ぐ手段だけ奪われるというならば、腹を括ってより悪質な何かを始めるだけだと思うのだが。

 よく二世政治家の存在が問題視される場合があるが、何がマズイかというと親の利権をそのまま引き継ぐからどうこうではない。 こうした末端で塗炭の苦しみを味わっている人間の姿が見えない、もしくは見た事もないヤツばかりが政治家様になって権力を振りかざし、税金を弄るから問題なのだ。 中世の貴族政治を今やるなよという話である。中国の王朝などが末期を迎えると、必ずと言っていいほど「民の苦しみが見えない皇帝や王侯貴族」が登場するが、今の日本がまさにそれであろう。 ただしこの場合の貴族とは皇族ではなく、勝手に貴族化した世襲政治家達だ。

 さて、最後にひとつ裸商売を選ぶ際の危険についても触れておこう。冒頭では「真っ当に働くよりもあらゆる面で風俗の方がいい!」と受け取られる書き方をしたが、そこには大きな落とし穴がある。 まず合法と認められているヘルス・ピンサロ・AVなどとは違い、ソープやストリップなどは摘発(逮捕)の危険がある。また裸商売なのだから世間の目が厳しくて当たり前だし、金は稼げてもまともな暮らしは出来ないかもしれない。将来的な事で言うと、大きく稼げる期間は限られているので、一時的に裕福になれたとしても、貯蓄を考えないと「裸で稼げなくなった時」に本当の意味で地獄行きになる。さらに何より問題なのは、そもそもがグレーな業界であるから、関わっている人間すべてが善人という事ではない。むしろ女の身体を金にしてガッツリ中抜きし、女を使い潰しながら自分だけいい暮らしをしようと考えている人間も大勢いる。そんな連中は冒頭に挙げた至れり尽くせりのケアを本気でやってれる訳がないし、むしろ口八丁で騙して脱出不可能な蟻地獄に蹴り落とすような悪人だっている。風俗業界の外にいる人間であっても、弱みに付け込んで様々な手段で金をむしり取ろうとするヤツもいるし、ハナから孤独な風俗嬢を目当てにしたスキームの詐欺だって山ほどある。

 アナタがもしどうしても身体を売ってでも食べなければならない状況なのであれば、仕事を探すのと同じくらいの重要度で、自分の身を守る手段を学ぶべきだ。生きるために身体を売る覚悟をしたのだから、死んでは(もしくは死んだも同然の状態になっては)意味がない。今はセックスワーカー向けの相談所も増えているので、少しでも変だと感じたら、すぐにそうした場所に駆け込みましょう。

 何より、裸仕事の世界に身を置いて必要なだけの金を稼げたら、とっととその業界での事は忘れてシャバに戻って下さい。女性の身で長居してもロクな事がない業界です。

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 この記事に対し非常に大きな反響が寄せられ、はてなブックマークのランキングではウィークリー3位にまで食い込みました。

 あまりにもニッチすぎる性の世界の出来事なのに、ここまで皆様に注目して頂け、また予想以上に好意的なご意見を賜り、恐縮するばかりでございます。

 で、皆様に対して恐縮しているのは執筆者の私だけではございません。 当の 「体重の重いAV女優に売春を斡旋した容疑で逮捕された女性」 自身も記事の存在を知っており、掲載を許可してくれた東京ブレイキングニュースや、色々な意見を下さった読者の皆様に感謝しておりました。

 この女性は逮捕こそされたものの、すぐに出して貰え、ついでに言えば罰金すらなかったそうです。本文中にも書きましたが、売防法ではなく職業安定法違反でアゲられた時点でおかしいなとは感じていたのですが、やはり裏に何もなかった(誰もいなかった) という点と、事情が事情だという点から、悪質さはないという判断が下されたようです。

 手短ではありますが、当人に成り代わりその後についてご報告させて頂きました。

Written by 荒井禎雄

Photo by SashaW

NDO(日本のダメなオトナたち)http://ch.nicovideo.jp/ndo

様々なジャンルの、何かしらの専門知識を持つ様々な業界の人間(オトナ)「ダメそうなオトナたち」による、マジメなんだかいい加減なんだか解らない情報バラエティチャンネル『東京ブレイキングニュース』の執筆陣(草下シンヤ・荒井禎雄)らによる 「勝手に公開編集会議」 を放送しています。記事に対するご意見ご要望などありましたら、ぜひご参加ください。

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