起業後最大の危機か 幻冬舎・見城徹氏の発言に日本を代表する作家たちが反論 謝罪するも論点ずらしと指摘
TABLO / 2019年5月18日 12時12分
ここ最近、幻冬舎がゴタついていることを皆さんご存じですか?
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経緯については、作家の津原泰水さんが自身のTwitterで百田尚樹さんの著作『日本国紀』(幻冬舎)を批判したところ、幻冬舎から刊行予定だった津原さんの文庫本の出版が取りやめに。これについて津原さんが「違法な圧力ですよ」と訴えたところ、幻冬舎の見城徹社長が「こちらからは文庫化停止は一度も申し上げておりません」と自身のTwitterでツイート。
さらに5月16日、「津原泰水さんの幻冬舎での1冊目。僕は出版を躊躇いましたが担当者の熱い想いに負けてOKを出しました。初版5000部、実売1000部も行きませんでした。2冊目が今回の本で僕や営業局の反対を押し切ってまたもや担当者が頑張りました。実売1800でしたが、担当者の心意気に賭けて文庫化も決断しました」と暴露したのです。
この見城さんの“本の実売を晒す”という禁じ手は文壇界にかなりの衝撃を与え、作家たちが続々と怒りを表明されるという大騒動に発展。事態を重くみたのか、見城さんは5月17日のTwitterで「編集担当者がどれだけの情熱で会社を説得し、出版に漕ぎ着けているかということをわかっていただきたく実売部数をツイートしましたが、本来書くべきことではなかったと反省しています。そのツイートは削除いたしました。申し訳ありませんでした」と謝罪したのです。
この見城さんの暴露行為に対し、多数の作家が次々と批判を自身のTwitterで展開しました。
作家の高橋源一郎さんは「見城さん、出版社のトップとして、これはないよ。本が売れなかったら『あなたの本は売れないからうちでは扱わない』と当人にいえばいいだけ。それで文句をいう著者はいない。でも『個人情報』を晒して『この人の本は売れませんよ』と触れ回るなんて作家に最低限のリスペクトがあるとできないはずだが」とツイート。
思想家の内田樹さんは「やはりここまで来たら日本の作家は『幻冬舎とは仕事をしない』ということを宣言すべきだと思います。僕はもともと幻冬舎と仕事をする気がないし、先方も頼む気がないでしょうから『勝手なことをいうな』というお立場の作家もいるでしょうけれど、それでも」とツイート。
漫画家の喜国雅彦さんは「僕は津原さんの友達ですが、これまで我慢して発言しませんでした。Twitterの自分ルールに反するからです。でも今回の部数発言はさすがにスルーできません。その本に僕は漫画で参加させてもらってます。どうもすみませんでしたね。安心してください。もう二度と貴社では描きませんから」とツイート。
作家の万城目学さんは「頼みます、幻冬舎。そこで連載し、出版することに作家が自信を持てる、日々原稿を書くことに納得ができる出版社でいてください。世間を狭く、息苦しくするのではなく、社会を広く、風通しのよいものにするために出版社はあるはずです」とツイート。さらに「昨日のツイート、見城徹さんまで届いたらしい。でも、いまひとつピンと来なかったらしい。会社のことを考え、『ツイッターをやめてください』と社長に直談判した幻冬舎の私の担当編集者は立派です。もし、来週ハローワーク通いすることになったら、たこ焼きでもおごらせてください」とツイート。
芥川賞作家の平野啓一郎さんは「やり過ぎだろう。見るに耐えない」とツイートされていました。
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またネットでは、見城さんだけではなく、部下である幻冬舎編集者・箕輪厚介さんのツイートも炎上する事態に。箕輪さんは幻冬舎から出版されるはずだった津原さんの文庫『ヒッキーヒッキーシェイク』(ハヤカワ文庫JA/6月6日発売)の担当編集者である早川書房の塩澤快浩さんが「僕の文芸編集者としての矜持をこめて、津原泰水『ヒッキーヒッキーシェイク』文庫版には、次のようなコピーをつけさせていただくことにしました。『この本が売れなかったら、私は編集者を辞めます。早川書房 塩澤快浩』。よろしくお願いします」と自身のTwitterに記したところ、それに対して自身のTwitterで言及。
「なんだそれ。笑 祈ってないで届けるための方法を死ぬ気で考えて必死で実行すればいいのに」
「俺も動画作ったりイベントやったり新しいマネタイズ方法考えるのやめて、帯に売れなかったら辞めますって書くだけにしようかな。余暇が増えそうだ」
と挑戦的な言葉を投げかけていました。
しかし、箕輪さんが塩澤さんの「矜持をこめて」という表現に「祈ってないで」と茶々を入れていたことに対し、ネットでは箕輪さんが矜持を“誇りやプライド”という意味でなく“祈り”と読み間違えているのではというツッコミが殺到。
それに対し箕輪さんは「なんか矜持を祈りと読み間違えたみたいな謎の話が湧いてるんだが、読み間違えてない。他社から持ってきた文庫に、これが売れなかったら編集者を辞めるって帯に書くって姿勢に、他力本願的な祈りを感じただけで。本って売るために死ぬほどやることあるから。まあ、僕には関係ない世界の話です」と反論されていました。
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見城さんから謝罪はあったものの、この“事件”は今後、幻冬舎にかなり暗い影を落とすのではないか、と出版関係者は予測します。
「会社的に一番きついのは世間から『幻冬舎の本はもう買わない』という不買運動が起きること、そして看板作家たちが書かなくなったり、過去の著作を引き上げるということでしょう。見城さんは実売暴露については謝ったものの、津原さんに対する圧力疑惑は解決していませんし…。今回の件で読者、書き手ともに幻冬舎に不信感を持った人は多いでしょうし、信頼回復がかなり遠い道のりなのは間違いない」(出版社勤務)
はたしてこの問題は、この後どういった展開を迎えるのでしょうか。(文◎小池ロンポワン)
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