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能町みね子×吉田豪 対談『ヘイトとフェイクニュース』を語る|第一回 「あなたの正義」を疑え

TABLO / 2019年5月29日 11時17分

本サイトのキャッチフレーズは「人にやさしい」です。その「心」は反ヘイト、反フェイクです。

いつまで経ってもなくならない、ヘイト(差別発言)。本サイトはしつこく、そしてきっちりとそういった風潮に対峙していきます。しつこく対峙していきます。

今回は本サイト立ち上げからご協力いただいているコラムニスト・イラストレーター能町みね子さんとプロインタビュアー吉田豪さんに「ヘイトとフェイクの正体」について語って頂きました。(本サイト編集長・久田将義)

「あなたの正義」を疑え

能町みね子(以下能町):最近、怒ること自体がエンタメ化している気がしています。何でもいいから怒る対象が欲しい、っていう。対象がヘイトだったり、叩かれて当然のことだったとしても、その材料を叩くことそのものが楽しくなっちゃっている。

吉田豪(以下吉田):とりあえずスッキリしたいんでしょうね。それも自分の正義の心が発揮できる対象が欲しいってだけのことで、ヘイトとされるものにしても本当に悪意でやってる人ってごく一部で、基本はみんな正義の心でやってると思うんですよね。

能町:本気でそう思っているわけですもんね。

吉田:最初にわざと偏った感じで誘導しようとする人はいるけど、その後の人は基本、善意なんですよね。そこがむしろ怖い。

能町:「善意vs善意」なんですよね。

――「善意vs善意」だと落としどころがなくなるんですよ。

能町:そう。宗教戦争です。

吉田:最近ホント思うのは、人に自分の主張を伝えるためには、情報をある程度ゆがめてもいいぐらいの人が増えてきてて。本当に悪い人を駆逐するためには多少のフェイクは許されるはずだって感じの。

能町:そういう人、いますね。私自身、うっかりすると自分に都合のいいデマに乗りかねないから気をつけないと。

吉田:そこが最近の一番の問題点だと思うんですよ。果たしてあなたが叩いている人は本当に悪い人なのか? 「あなたの正義を疑いなよ」ってすごい思います。

――在特会が出てきて、明らかなヘイトが蔓延してきた。吉田くんや能町さんもそういう傾向に対して、「ちょっと待てよ」と言ってきましたが、それすらも指摘するのに疲れた、みたいなところはありませんか?

能町:ちょっとあります。私は最近Twitterでは少しおとなしいです。

吉田:単純に、「あ、この人はそういう人か」って判断できるようになりましたよね。言葉遣いなり拾うニュースとかで、だいぶジャンル分けできるというか。例えば「マスゴミ」って言葉を遣う人なんだな、とか。

能町:そうですね、言っても無駄な人だなってなっちゃう。文章に 「www」をたくさん使ってたり。すぐわかりますもんね(笑)。

ーーあと太いビックリマーク(笑)。

能町:絵文字の太いビックリマークを毎回使う人は、だいたい60代以上だと思ってます。

――アカヒ(朝日新聞の略)とかね。

ヘイト発言する人の実態

能町:Twitterで変な絡み方してくる人のほかのツイートを見ると、「これをRTするとローソンのからあげくんが割引」みたいなキャンペーンをことごとくRTしてるんですよね。こんな20円30円を必死で安くしようとしてる人が、いろんな人に絡んで……と思うと気の毒になってくるんですよ。ZOZO前澤社長の100万円プレゼントも必ずRTしてる。

吉田:ホント多いんですよ。「これをRTした人には何々が当たるかも」的なヤツをひたすらやってる人が大体ウザ絡みする人なんですよね。要は、金銭的に報われてない人がネット上で鬱憤を晴らしがちってことなんでしょうけど、そういう人って昔はもうちょっと「政府が悪いんだ」みたいな発想になってたはずなのが、いまは「左翼が悪い」になってるわけじゃないですか。左翼にそんな力ないですよ。

能町:確かに(笑)。敵を過大評価してますよね。日本だけじゃなく、世界的にわりとそういう傾向にあるのが不思議です。

吉田:不思議なんですよ。「あなたの経済的状況にダメージを与えてるのは誰?」「それがはたして外国の人なんですか?」という。お金がないと視野がだんだん狭くなりますからね。

能町:だいたいどこでも「移民が悪い」みたいになりますよね。

吉田:わかりやすい敵を探すっていう。移民があなたの仕事を奪ったわけじゃないと思うんですけどね。「俺のコンビニのバイトを奪いやがって!」とかじゃないだろうし。

能町:でも、多少は経済的に安定してそうな60代以上の人でもそういう考えの人はいますね。

ーー年齢的なものもありますか?

能町:年齢というか、ネットに触った時期じゃないですか。一足遅れてネットに触れて、そこで「真実」と言われている過激な考えに今さら心動かされちゃう。

吉田:一度そこにハマっちゃうと情報を上書きするのは難しいでしょうね。

ーーネットがそういった差別感情を助長させた部分はありますよね。

吉田:前に誰かが言ってたけど、朝日系のニュースサイトは会員登録が必要で最後までちゃんと読めない記事ばかりで、右寄りのサイトが無料で読めるのが大きいかもしれないっていう。朝日がそんなところでマネタイズしようとしたばかりに(笑)。

能町:そんなことが支持を広げる原因になったりするんですね。私が2ちゃんねるを見始めたのって99年頃だと思うんですけど、確かに最初はすごい斬新だったんですよ。世間に言っちゃいけないようなことをみんなが堂々と言ってる空間は、気持ち悪いというより、そのときは新鮮でした。

吉田:テレビでは誰も言わないようなことを当たり前のように言える場として。

能町:その感じを今の60代が味わってるのかもしれない。

――2ちゃんねるが出始めた頃からヘイトとフェイクはありました?

能町:ヘイトはひどかったです。フェイクもあったし。

吉田:「ネトウヨ」という言葉が生まれる前からネトウヨ的なものは存在していましたね。その流れで在日特権系のデマとかが生まれて。

能町:私も大学生ぐらいのときにそういうものに触れてるから、当時は「隠された真実」みたいに書かれたデマを信じかけていましたね。いろいろなものを読めばさすがに目が覚めますけど。

吉田:「マスコミが報道しない真実がある!」ってネットで信じちゃった人って、その瞬間にマスコミが何を言っても通用しなくなるから恐ろしいんですよね。

能町:「マスコミは嘘を言ってる」ってことになると、情報源が存在する意味がなくなりますよね。

吉田:陰謀論が入っちゃうと何を言っても通用しないじゃないですか。「それも嘘だ!」「陰謀だ!」ってことになっちゃうから。

ーーフェイクでもいいから、自分の都合のいいニュースが欲しいってことですよ。

吉田:それはすごくあると思います。自分が正しいことやってるっていうピュアな気持ちがあればなんでもできちゃうんですよ。たとえば、いまの政権は正しいことをやってて、それを邪魔するヤツがいるっていう図式ができれば。その反対に、いまの政権が間違ったことばかりやっているけれど、その裏側には何かの陰謀があるはずだ的な図式も危なっかしいなとは思ってます。(次回に続きます。聞き手◎久田将義)

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