建設現場が嫌になり逃走しホームレスになった男が賽銭泥棒で逮捕 裁判で問われた42歳の将来

TABLO / 2019年6月4日 10時46分

写真はイメージです

深夜、人気のない神社境内に伊良部隆史(仮名、裁判当時42歳)は忍び込みました。手には軍手を着け、以前働いていた解体現場から盗んだバールと懐中電灯を握りしめていました。

事前の下調べでこの神社には防犯センサーがないことは確認済みでした。周囲を確認しながら“賽銭箱”に近づき、バールで南京錠を壊して引き出しを開けて中から現金を取り出した時のことです。

そばにあった社務所から若い男が飛び出してきました。彼は逃げようとしましたがその若い男に取り押さえられ窃盗の現行犯として逮捕されました。若い男は宮司の実習生として神社で働いていた男性でした。

「以前から賽銭泥棒が相次いでいました。夜間はみんなで交代で社務所から監視してました。犯行を目撃したのですぐ110番通報して捕まえにいきました。賽銭箱は信仰のあらわれです。犯人を絶対に許せないので厳しく処罰してください」

逮捕された伊良部は、前科2犯、前歴2件を有していました。いずれも窃盗罪で全て賽銭泥棒です。最終前科は10年以上前のものですが、その時には8ヶ月の実刑判決を受けて刑務所に服役しています。

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彼は出所後、建設作業員として数年間アパートで一人暮らしをしながら働いてきました。その後別の建設関係の会社に転職し、会社の寮で生活していました。この転職先の会社の人間関係がうまくいかなかったようです。

「人間関係がイヤになって寮を飛び出しました。誰にも言わず衝動的に飛び出したので住む場所などは決めてませんでした」

彼は寮を出てから江戸川の河川敷で暮らすようになりました。初めてのホームレス生活です。

「ホームレスはキツかったです。以前実刑を受けた時は『もうやらない』と決めたんですが、誘惑に勝てませんでした」

こうして彼は前にやったこともある賽銭泥棒を再び行うことを決意しました。

「賽銭箱から持ち出したのが4961円、これだけ盗んでその先どうするつもりだったんですか?」

と質問された際には

「その日暮らしで先のことは何も考えてませんでした。考えられませんでした」

と答えています。

証人として出廷した、元の職場の社長は彼を再び会社に受け入れることを裁判所に約束していました。

「何故被告が寮から黙って出ていったかは正直わかりません。相談してくれればよかったのに…と思います。でも自分がそういうことを言い出しづらい立場にしてしまったのだと思います。何でも言いやすい環境にしてあげればよかったと思います。1人の人間がそうなった、ということは他にもそうなる従業員がいるかもしれません。職場環境の改善をはかっていきます」

傍聴席に社長がいたこともあったのかもしれませんが、彼は職場のどこが不満だったのかはあまり話そうとしませんでした。

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弁護人が聞いたところによれば「建設現場特有の上から目線で話す同僚がイヤになった」ようです。社長は彼の仕事ぶりや勤務態度は高く評価していました。

ここからは憶測になりますが、基本的には彼は真面目な人間のようです。過去に犯歴こそありますが、少なくとも今回の事件当時の彼は本来なら犯罪を犯すような人間ではなかったのではないかと思います。

しかし、その真面目さゆえに自分の抱えている悩みや不満を誰にも相談できずに自分1人で抱え込み、どうにもならなくなって職場を飛び出してしまいました。周りよりも少し繊細で少し弱い人間だったこと、それが彼を犯罪に走らせた要因です。それが裁かれなくてはならないような悪だとは思えません。

賽銭泥棒などという罰当たりな行為はほとんどの人間はしませんし、やろうと思うこともないはずです。しかし、当時彼が置かれていた立場そのものが「罰」に思えて仕方ありません。ではそれは何に対する「罰」なのでしょうか?

人間関係を築くのが下手で不器用なことが、「罰」が当たるような罪なのだとしたら…。犯罪まで犯さないにしろ、彼に似た人は世の中に多くいるはずです。(取材・文◎鈴木孔明)

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