「ワイドナショー」はなぜネットニュースになりやすいのか 松本人志「不良品」発言|久田将義
TABLO / 2019年6月6日 11時30分
ネットニュースを編集するうえで一番楽なのは、テレビ番組を見てタレントが「こんな事言った」と書き起こすものです。それは編集側の意見が入らず、抗議が来た時は「この人がこういう事を言っただけ。それを『事実』として載せただけ」というエクスキューズで逃げられるという一因もあるでしょう。
ですから、時々過激な、あるいは世間的に「?」というコメントがアップされ、話題になります。
「ワイドナショー」(フジテレビ系)は最も、ネットニュースに取り上げられがちな番組です。松本人志さんや三浦瑠麗さんや古市憲寿さんらのコメントがニュースに乗りやすくなっています。
中でも芸能界の大御所の一人、松本人志さんのコメントはよく使われます。基本、松本さんは放送作家の高須光聖さんとラジオ番組(「放送室」)をやっていた時から、時々政治的発言していました。「放送室」と「ワイドナショー」とで共通するものは、松本さんは本格的な議論を、恐らくしたことがない人なのだろうという点です。従って松本さんのコメントはファイナルアンサーに近いものがあります。
例えば「ワイドナショー」。あの番組で松本人志さんに異論を唱える人など、ほとんどいないでしょう。「異論らしきもの」を唱える人はいても、それは「お約束の範囲内」です。とても論戦にはなりません。喧々諤々とはなりません。番組自体が松本さんあっての番組で、ゲストもそれに応じた人をセレクトすることになりますし、放送作家がかなり忖度することと思います。
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そもそもバラエティです。番組の流れを壊すような不届き者は「ワイドナショー」には不必要です。バラエティと言うより正確には「バラエティを装った報道っぽい番組」というグレーな位置づけの番組です。
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今回話題になった「人間には不良品がある」という主旨の松本人志さんの発言ですが、以前、ジャーナリスト立花隆さんが唱えた論と似ています。「暴走族など悪いヤツのDNAは悪いヤツに引き継がれる」「劣性遺伝子は劣性遺伝子のまま」(大意)という論です。
確かに「不良品」というか、常人では想像もつかないような犯罪者はいます。生まれついての異常者(あえて使いました)がそういう言葉に当てはめられるなら。戦後の小平義雄や大久保清、近年の宅間守、海外ではジェフリー・ダーマ―、テッド・バンディ、アンドレイ・チカチーロなどが個人的にはそう感じています。松本さんは、そういった異常犯罪者を頭に浮かべて発言したのかも分かりません。
立花隆さんに対しては、ルポライター朝倉喬司さんが反論記事を出し、本にもなりました(『立花隆の正体 “知の巨人”伝説を斬る』リム出版新社)。一番初めに反論記事を書いたのは僕が編集長を務めていた「ダークサイドJAPAN」(ミリオン出版)という雑誌でした。
朝倉さんは当時、かなり怒っていました。「この考えは差別」だからです。それを言えば例えば「犯罪者の子供は犯罪者の遺伝子を受け継いでいるから犯罪者予備軍だ」という考えにも行きついてしまいます。
現在批判されている「不良品発言」の趣旨は、差別につながるという点ですが、こういう事を言う人は「知の巨人」とまでマスメディアに持てはやされた立花隆さんにまでありました。「またか」という思いを僕は持っています。
メディアで事件、ニュースを話す人はある程度「嗜み」が必要となり、ヒートアップした視聴者を冷ます役割があると思います。が、近年煽る人が増えています。それに乗っかるネットの存在。今回の事件に限りませんが、自分を律する必要がテレビに限らずコメントする立場の人にはあると思います。視聴者はバカではありません。(文◎久田将義)
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