「触ってもいいんじゃないか?」 電車内で女性に性器を握らせる痴漢行為で逮捕された男の裁判傍聴 女性には一生涯の心の傷が
TABLO / 2019年6月24日 11時23分
伊藤忠寛(仮名、裁判当時51歳)は1人の女性を標的にして約1年間にわたって電車内での痴漢行為を繰り返していました。被害女性は乗車する車両を変える、出勤時間をずらす、等の対策は取りましたがそれでもいつも待ち伏せされ同じ車両に乗り込まれ痴漢の被害に遭い続けました。
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彼が痴漢行為をするようになったきっかけは、出勤時の満員電車内で被害女性の胸が彼の背中に当たっていたことでした。被害女性は身体の向きを変えたりイヤがる素振りもなく、そのままの体勢を維持していました。
「この人…触ってもいいんじゃないか?」
彼はそう思ってしまったそうです。
その次の日から痴漢行為は始まりました。初めは少し身体を密着させる程度でした。それを繰り返しても被害女性はいつも同じ電車に乗っていました。
「やっぱりイヤがってない!」
その後、時間や車両が多少変わることはありましたが何も言われることはありませんでした。彼は痴漢行為を繰り返すようになり、犯行はだんだんエスカレートしていきました。
犯行を目撃した人は、初めは座席で眠っていました。膝に何かが当たったような気がして目を覚ますと、目の前に性器を露出し、それを握った手を細かく動かしている男の姿がありました。男の前にいる女性はスカートと下着を下ろされている状態でした。
「おい! 何してんだ!」
すぐに男のベルトを掴んで詰問しましたが
「何がだ! 放せ! 失敬な!」
と抵抗されました。
駅のホームで男をおろし、他の乗客と協力して駅事務所まで連行しようとしましたが、「事務所まで行くと冤罪にされるからイヤだ!」と最後まで抵抗しましたが駅員に取り押さえられ逮捕されました。
彼は勤め先の会社では営業マネージャーという地位にいました。証人として出廷した彼の上司の話では「勤務態度は実直で、若手に範を示すタイプです。勤続19年の間にセクハラなどのトラブルはまったくありません」ということでした。
同じように証人として出廷した妻は、
「事件のことはとても信じられません。そんなことをするような人じゃないと思ってました」
「私にとっては大切な家族です。20年以上一緒に過ごしてきた家族なんです。離婚をしようとは思ってません」
と話し、今後の監督を約束していました。
2人の証人の話からは、普段は彼はとても真面目でとても痴漢をするような人間だと思われていなかったことが窺えます。
犯行時、彼はコンドームを装着していました。嘘か本当かはわかりませんが「射精をしたときに、まわりに飛び散ってしまったら迷惑がかかるから」という理由でした。以前にもコンドームを着けて痴漢行為に及んだことは何度かあるようです。
そんな気遣いまで出来るにもかかわらず、彼は被害女性がずっと苦しんでイヤがっていたことにも、恐怖で声を挙げられなかったことにも、まったく気がついていませんでした。
「いつも同じ時間、同じ車両に乗ってて心底イヤがってないと思ってました。他の人に痴漢をしたことはありません」
「やってる時に『自分がおかしいことをしている』と少しは思ってましたけど…特にやめようとは思いませんでした」
彼は保釈後にすぐ依存症治療のための病院に通い始めています。そこで依存症克服プログラムを受けグループミーティングに参加する中で、少しずつ自分の認知の歪みに気づいていったそうです。逆に言えば、逮捕され病院に通うまで彼は自分の行動のおかしさにほぼ気づいていなかった、ということです。
被害女性は被害弁償金の受け取りを拒否しました。その上で、
「絶対に許さない」
と供述しています。
犯行はいつも30分以上にわたって行われていました。以前の犯行については起訴されていませんが、性器をお尻に押しあてられたことも、性器を握らされたこともあるようです。
「男性が怖いです…」
そう話していた彼女の傷は、たとえ痴漢の被害が止んでも癒えることはありません。(取材・文◎鈴木孔明)
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