有名大学教授が暗躍...永田町を震撼させた「大物政治家の愛人」を巡る顛末
TABLO / 2014年3月13日 11時40分
3月1日、I教授の最終講義がH大学の大教室で行われた。所用のために少し遅れた私は、大教室の後ろの席に座り、ある人物の姿を探していた。もう16年前のことになるが、永田町を激震させた張本人である。
「総理にしたいナンバーワン」だった政治家がいた。I教授はそのブレーンと知られていた。いや「ブレーン」は本人にとって不本意な言葉だった。I教授は「ただ相談を受けている関係だ」と言っていた。
実際は「ブレーン」以上の関係だったに違いない。「総理にしたいナンバーワン」の政治家に、突然に女性スキャンダルが持ち上がった時、その政治家と相手の女性を一番かばっていたのはI教授だった。教授のゼミに出ていた彼女を狙って、週刊誌の記者が押しかけたこともあったが、その都度教授は身体を張って彼女を守った。
いちどなどは週刊誌を発行する出版社に抗議に出向いたこともある。教授は真剣に憤っていたのだけど、同行者は表向きは怒りつつも、「いずれあなたと一緒に仕事をしたい」と編集者にそっと囁いていたらしい。あかんやん!
いろいろな思い出が浮かんでくる。全部書くとしたら、1冊分くらいになりそうだ。最も印象に残るのは、最初にスキャンダルを掲載した週刊文春の発売前日のこと。私はH大学近くのデニーズにいた。
この日はI教授のゼミで武村正義氏を招いて講演をしてもらうことになっていた。提案者は武村氏と親しかった彼女だった。
社会人大学院のゼミなので、開始は6時半。終了するのは10時近くになる。その前に軽くお腹の中に入れておこうと思い、クラブハウスサンドとコーヒーを注文した。食べ終わって席をたとうとすると、別のテーブルに上原公子氏がいた。後に国立市長になる上原氏も、I教授の「門下生」だった。
講演開始時刻までまだ時間があったので、上原氏のテーブルでしばらく話していたら、携帯が鳴った。知り合いの永田町関係者からだった。
「明日、発売の文春で、例の女性のスキャンダルが出ます」
それだけ述べて電話は切られたが、断片的な情報では中味がさっぱりわからない。
「え? スキャンダル?」
私の言葉に上原氏が反応した。
「何かあったの?」
「いや、別に......」
スキャンダルというと、金銭か男女関係。しかし電話は何も言わなかった。男女関係だとしたら、いったい誰との? この時はまだわからなかった。当時は「総理にしたいナンバーワン」以外に、彼女と噂された男性政治家が何人かいたからだ。
いつものようにI教授のゼミは始まった。武村氏は何事もないように穏やかな調子で講演した。しかしお膳立てしていたはずの彼女の姿はそこにはなかったのである。
ゼミが終わると、駅前の居酒屋で打ち上げをやるのが恒例だった。私も一行と一緒に大学院が入るビルを出て、駅に向かって歩いていった。ただし歩幅を狭め、一行から徐々に離れるようにした。そうして知っていることを打ち明けた1人の男の子と、再度デニーズにはいった。今回のオーダーは和風ハンバーグ定食だったと記憶している。
その男の子とあれやこれや話していると、また携帯が鳴った。かけてきたのは、大手新聞社の幹部だった。
実はこの幹部は2005年の衆院選の時、不倫相手の女性候補とのメールのやり取りが週刊文春によって暴露され、以来永田町からすっかり消え去ることになる。
「明日発売の週刊文芸春秋にね......」
「週刊文春でしょ」
「えっ? もう知っていたの?」
「はい、あるところから電話で教えてもらいましたけど、詳細についてはわかりません」
「なんか2人、ホテルに行っていたらしいよ」
うーむ、これも具体性に欠ける。やはり翌日に掲載誌を買って読むに限る。
そして翌日の朝、自宅の電話が鳴った。
「おはようございます。出ましたね」
知り合いの女性秘書さんからだった。
「昨日、代議士のところに記者さんたちが来て、『女性スキャンダルが出るそうですよ』と言ってきたので、地下の政調から文春を持ってきたのですが、おいてあったのは前の号だったみたいで......」
さすが永田町一情報にうといと言われた代議士の事務所! そもそも早刷をどこかから手に入れるという発想がないのか? だが民主党はこういう人たちが代表だったわけで。もうなんというか......。
ちなみにスキャンダルの主の女性は、この代議士が大嫌い! 旧民主党が旧新進党系の議員らと合併した時は、自分の思いのままになりそうな若手議員が政調会長代理にまわされ、この代議士が政調会長になったため、「あんなのに遠慮ばっかりして、バカみたい!」と、都内のホテルのバーでプロポーズしてくれた若手議員をなじったことがある。はい、ちゃんとこの耳でそのセリフを聞きましたから。
今から思えば登場人物はいずれも豪華な面々だが、かなりの割合で「お亡くなり」になっている(笑)。栄枯盛衰とはよく言ったものだが、当時の私はこのスキャンダルを「世紀末の自浄作用」と位置付けていました。
Written by 安積明子
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