覚えているだろうか「女子大生ブーム」を 私が完全に乗り遅れた原因は“西武線のせい”だ|中川淳一郎
TABLO / 2019年7月2日 16時37分
バブル経済が最高潮になった1989年に平成の時代は開始した。若い男女がせっせと恋愛に励むトレンディドラマがブームになり、1980年代初頭から続く女子大生がテレビでチヤホヤされるなどする「女子大生ブーム」の時代にもなっていた。
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私は1987年から1992年までアメリカに住んでいたため、この狂騒はよく知らなかった。だが、「どうやら日本の若者は恋愛を無茶苦茶楽しんでいるらしい」「大学に入れば華やかな女子大生とお近づけになり、日夜デートに勤しむらしい」といった知識を植え付けられていた。
一ツ橋大学があった西武多摩湖線て知っていますか
だが私が入学した1993年、バブルはすでに崩壊しており、通った東京・小平市の一橋大学は「男7:女1」というすさまじき男女比の偏りのある大学だった。入学式の段階で「あっ、こりゃオレモテねぇ」ということはもう分かった。しかも、トレンディーの総本山たる六本木までは1時間45分はかかる。当時は大江戸線もなかったため、以下のルートで行くしかなかったのである。
一橋学園(西武多摩湖線)→国分寺(JR中央線)→新宿→恵比寿(JR山手線)→六本木(営団地下鉄日比谷線)
ここで厄介なのが、西武多摩湖線は単線で、ラッシュアワー以外は15分に1回しか電車が来なかったことである。電車を逃したら「あぁ、もう六本木なんて行くの面倒くせぇ。駅前の『村さ来』で飲むか、『一松』で白菜鍋でも食うか」みたいな気持ちになってしまった。
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高校3年生まで必死に勉強をし続けてきた男どもは、「大学に入ったらついにワシは“女日照り”状態から脱出し、トレンディーな生活を送るのじゃ、ガハハ!」などと思ったら、同級生は男だらけ。他の大学の学生が容易に六本木での合コンに参加でき、西麻布のカフェバーなどに2次会で行き、後はトレンディーなハッスルターイム! みたいな話をしている中、我々はとにかく六本木に着くだけで疲労困憊。
いつしか「オレら、国分寺より東に行きたくねぇ……」となってしまったのだ。当時、一橋大学は1・2年生が小平で、3・4年生は国立(くにたち)だった。小平キャンパスの本館は私の記憶だとエンジ色か紫っぽいボロボロの監獄のような建物で、初めて行った時は「えぇとぉ、ここって本当に大学なのか?」と思ったほどだった。
何しろ、デザイン性もクソもないような薄汚い建物だらけで、「ちょっと広い高校」みたいな感じでしかないのだ。しかも、整備されていないグラウンドからは砂埃が舞うのである。夕方、家に帰る時にティッシュを鼻の穴に詰めて壁面をこすると砂が大量に付着した。
『あすなろ白書』? 知らねえよ!
一応、津田塾大学が近いため、女子大とのインカレサークル的なものは多数あったし、当時の俗説として「津田塾生の3分の1は一橋男と付き合う」といった話はあった。だが、同大学の数学科の学生から期末試験の数学を教えてもらうなどした私と周囲の男どもは「負けた…」なんてことも思い、彼女たちに劣等感を抱き、恋愛に発展することはなかった。あちらも「このイモつ橋のバカめ!」と恋愛対象から外したと思われる。
こうした事態になると、もう大学では恋愛をすることは諦めるようになるし、ひたすら自転車で三多摩地区を快走するだけのキャンパスライフとなる。そして、男だけの飲み会では、「なんだよ、大学入ったらモテるようになるって誰が言っていたんだよ。ウソじゃねーかよ。クソ」「そうだそうだ。なんだよ、最近立教大学が舞台の『あすなろ白書』ってドラマやってるけど、あんなもん、オレらと関係ねーじゃねぇかよ!」とモテないことを愚痴り続けるのである。この『あすなろ白書』こそ、木村拓哉の出世作である。
かくして他大学との接点をすることもなければ、女性と会うこともない我々は、東京の中心部で発生しているバブル期の残滓が若干残っていたころの「都会のトレンディー学生生活」なんてものは経験せず、激安居酒屋の「一休」の国立店か国分寺店でサンマの塩焼きを90円で食べる無為な日々を過ごすのであった。そして「吉祥寺よりも東は怖い」といった感覚を持ち、ますます都心の学生とは異なる異空間の生活を送るのである。
嗚呼、オレらは就活も厳しかったし、モテなかったし一体なんだったんだよ、ケッ! こんなやさぐれた気持ちを当時の我々多摩県民の学生は思っていたのである(って、オレの周辺だけか。失礼!)。(文◎中川淳一郎 連載『俺の平成史』)
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