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「なんでもするから...」16歳の万引き少女に屈したスーパー店長の末路とは?

TABLO / 2014年3月20日 20時0分

「なんでもするから...」16歳の万引き少女に屈したスーパー店長の末路とは?

「万引きGメンの事件ファイル」by 伊東ゆう

 

 ここ数年、万引き犯を凌辱するアダルトビデオの影響からか、若い女性の万引き犯に警戒されることが増えた。声をかけて事務所への同行を求めれば「私をどうするつもりなんですか?」と改めて確認される機会が増え、警戒心から腕を組んで胸元を隠す人までいる始末だ。

 それとは逆に、この窮地を脱しようと、色仕掛けしてくる者もいる。今回は、永年に渡って保安員の仕事に従事してきた筆者が、女性万引き犯による色仕掛けの実態を報告する。

 K県郊外にあるスーパーで、高級ウイスキーのボトルを盗んだ水商売あがりと思しき老女(57)を捕捉した時の話だ。犯行を素直に認めた老女を事務所に連れていくと、扉を閉めた途端に押し倒されて唇を奪われた。

「好きにしていいから許して......」

 これが美女ならば心揺らぐこともあるだろうが、その迫力ある身体は六十キロを超えると思われ、年齢的にも性的な魅力を感じることはない。こうした色仕掛けに及ぶ女性は、そういう人ばかりなのである。思わぬ展開に圧倒されながら、酸味のある加齢臭を漂わせる老女を押し退けて立ち上がると、体勢を立て直す途中に舌まで差し入れられた。その舌を噛み切ってやろうかと考えてみたが、あとのことを考えれば躊躇せざるを得ない。これが止めとなって、その場に吐いてしまった俺は、執拗に迫りくる老女の身柄を店長に預けてトイレに駆け込んだ。

 トイレに入って鏡を見れば、自分の口の周囲には真っ赤な口紅が付着しており、それを目にした途端、耐え難い痒みに襲われた。気の済むまで口を漱いだ俺は、手洗い用の石鹸で何度も顔を洗い、手指消毒用のアルコールで顔面を消毒した。そうしてから事務所に戻ると、扉を開けた途端に、あり得ない光景が広がっていた。

「たくさんチューしてあげるから、警察だけは呼ばないで......」

 対応していた店長(32)が、老女に抑え込まれていたのだ。その店長が、俺と同じ末路を辿ったのは言うまでもない。結局、警察に引き渡されて被害届を出された老女は、その場で逮捕されることになった。しかし、俺達二人が襲われたことについての被害届は、受理されることなく闇に葬られた。女が男を襲う事例はないに等しく、こうした場合には、泣き寝入りするほかないのである。

 珍しいケースではあるが、若い女性万引き犯に色仕掛けされたこともあった。数年前の夏、とある下町のショッピングモールで、露出の高い派手な服装の若い女を捕捉した時のことだ。露出は高いけど見たくない。そんな気持ちにさせる女である。大量の化粧品をバッグに隠して、何食わぬ顔で外に出た女に声をかけると、事務所への同行に応じた女が言った。

「お兄さん、警察呼びますか?」

「俺が決めるわけじゃないけど、そうなっちゃうと思うよ」

「これ返すから、見逃してよ。もう絶対にしないし、お兄さんにも、お礼はちゃんとするから......」

 そう艶めかしく呟いた女は、俺の右腕を抱きかかえて、豊満な乳房を肘に押しつけてきた。男性保安員が女性万引き犯を捕捉した時には、その身体に極力触れないようにするのが基本だ。無理に触られたと言われてしまえば、否が応でも警察から事情を聞かれることになり、こちらが加害者扱いされてしまうから細心の注意が必要なのである。

「フェラチオでもなんでもするから......。ね、お願い」

 こんな挑発に乗って、あとから告発されたら、逮捕必至の状況に陥る。黙って腕を振りほどいた俺は、これ以上触られないように、一歩下がって事務所を目指した。

 事務所の応接室で話を聞いたところ、まだ十六歳だった女は、この店の近所にあるスナックでバイトしているという。母子家庭ではなく、おばあちゃんと二人暮らしという家庭環境が、どこかせつない。盗んだ商品をテーブルの上に出させると、三十四点もの化粧品が出てきた。その被害額は、およそ四万二千円であった。未成年者であることは考慮されるだろうが、警察に引き渡せば逮捕される可能性は捨てきれない。

 ひと通りの事務処理を終えて店長を呼び出すと、そこに狙いを定めたらしい女は、胸を見せつけるべく前傾姿勢をとった。ついつい目をやれば、乳輪の一部まで露出している状況だ。角野卓三に似た五十代の店長も、粘り気のあるいやらしい視線を、チラチラと胸に飛ばしている。その視線に気付いた女は、店長を挑発するようにソファの上で身を捩ると、不意に立ち上がって店長の膝の上に跨った。

「警察だけは、勘弁してください。こんど警察に捕まったら、ウチ、少年院行くことになっちゃうんです......」

 女に頭を抱えられるような形で胸を押しつけられた店長は、もがきながら立ち上がると、髪の毛のない頭頂部を真っ赤にして言った。

「もう、仕方ないなあ。これっきりだよ......」

 待っていましたとばかりに、事務所から出ていく女を見送って応接室に戻った俺に、嫌らしい笑顔を浮かべた店長が言った。

「あの子の店、なんて店だっけ?」

 鼻の下を伸ばす店長に呆れて、この一部始終を本部に報告すると、まもなく店長は解雇された。万引き犯による色仕掛けに屈して、職を失った心境は如何なるものか。姿を消した店長の消息は不明で、それを知る術はない。

Written  by伊東ゆう

Photo by Fabio Téllez

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