世間を席巻した「闇営業」とは何なのか 全ては暴排条例に終結される|久田将義
TABLO / 2019年7月8日 11時0分
「フライデー」のスクープから始まった「闇営業」問題をここらで整理したいと思います。
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まず、「闇営業」という言葉がパワーワードになり一人歩きしている点を指摘しておきます。2〜3年前のナイツの漫才で「漫才協会を通さない闇営業」というネタがありました。このケースは「直の営業」をネタとして「闇営業」と表現しているのは誰でも分かります。「事務所を通さない営業」が揶揄、あるいはネタとして「闇営業」という表現になっていったと思われます。
仕事は、もちろん事務所を通した方が良いのでしょうが、ギャラが少額だったり身内に頼まれた場合は事務所との了解があったという前提で、直で営業するケースは多々見受けられます。芸人、モノマネ芸人、歌手などなどさほど売れていない芸人さんは少なからず直営業をしています。
「食っていけないから」
です。
その過程で問題になるのが、暴力団排除条例(暴排条例)です。以前、本サイトにも書きましたがこんなに「闇営業」(と便宜上このワードを使用しますが)が問題になるのは、暴排条例が施行されているからと言ってよいでしょう。
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暴力団対策法(通称、暴対法)の施行も約30年前に問題・話題になりました。しかし、2011年に全47都道府県に施行された、暴排条例はヤクザ社会と芸能界、引いては興行そのものに大きな影響を与えました。
Vシネマでは多くの役者さんたちが活躍していました。そのVシネも暴排条例に抵触するのではと一時期衰退しました。本サイトにも書きましたが、暴排条例によって最も、芸能史に残る「事件」となったのは島田紳助さんの引退です。吉本興業の、いや芸能界の超大物が引退させられました。
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それほどに芸能界が恐れる暴排条例ですが、施行直後には田原総一朗氏、西部邁氏らがこの条例に反対する記者会見を行ったほど、ジャーナリズムの世界でも激震を起こしました。彼らのように日本を代表するジャーナリストや思想家が疑義を呈したほど、問題アリの条例でした。
ヤクザやアウトローを題材にした本や映画は多々あり、我々はそれを楽しんでもきました。芸能とヤクザは似ています。一般社会には収まり切れない、アウトローという生き方を選択した人たち。その「収まり切れない生き方」を我々は画面ごしに見て、エンターテイメントとして享受してきた訳です。
「暴排条例が社会にそんなに影響を与えたのか?」
皆さんはそんな気持ちをお持ちではないでしょうか。その通り、一般社会上、普通に暮らしていればそんなに重要な条例ではありません。ヤクザに接触したり、話たり、飲んだりすることなどないでしょうから。
しかし、芸能界は(あるいはメディア業界も)別です。芸能の興行は、いや、興行と名のつくものは地元のヤクザが仕切ってきました。だからこそ、名作映画「仁義なき戦い」の日本を代表する役者陣、あるいは国民的歌手であった美空ひばりさんはそのつながりを否定しませんでした。
それが良いことなのか、悪いことなのか。僕にはまだ結論が出ていません。もちろん、ヤクザがいない社会が理想でしょう。が、ヤクザがいなくなったとしても違う名前で新しいアウトローが誕生してくることでしょう。
戦国時代は傾奇者、江戸時代は旗本奴、町奴、明治時代にヤクザ。そして令和に到ります。人間の歴史がある限り、このようにアウトローは名称を変えて存在し続けてきました。
暴排条例は一般社会とヤクザ社会を完璧に切り離すための条例です。今のところ、準暴力団の主なシノギの特殊詐欺被害額が年間数百億円というような話を聞くと、成功したようには見えません。現行の暴対法でヤクザの取り締まりは出来ていたのではという疑問が残ります。
結論にいきます。
吉本興業に限らずですが、今回の闇営業(便宜上、ここではそう呼びます)問題の何が一番、芸能人や芸能事務所が恐れているのか、それはすべて暴排条例に抵触するかしないかに終結されるのです。
この条例さえなければ、あとはマスコミ対応だけです。ヤクザとのつながりだけでは、さほど問題になりません。
暴排条例以前は芸能人がヤクザの親分の誕生日や新年会、忘年会に出席していました。YouTubeにたくさんそういった動画が上がっています。僕はYouTube以外でも有名芸能人が結婚式の司会をしていたりするシーンも見てきました。
つまる所、密接に結びついていたヤクザと芸能を引き裂いたのが暴対法ではなく、暴排条例であり、この条例があるからこそ、「フライデー」を始めとするメディアにとっての「闇営業」がネタになるのです。記事になるのです。お金が派生するのです(売上という意味です)。
そして、私達はこの条例によってしばらくの間、引っ張り回されることになりそうです。(文◎久田将義)
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