安倍政権の専制政治に迎合する大手メディアの情けなさ by岡留安則
TABLO / 2014年4月2日 10時47分
(連載:岡留安則の編集魂 第7回)
安倍政権になって以降、突っ込みどころ満載すぎて、いささか食傷気味である。民主党の見事なまでの自滅劇により自民党はゾンビのようによみがえり、新旧の自民党議員が闊歩する事態となっている。それも、従来の自民党政権と違って、自民党と安倍晋三総理の一強体制で、やりたい放題。安倍総理とは思想も政策も違うはずの自民党ベテラン議員たちも鳴りを潜めている。
本来はそれをチェックすべき大手メディアも、批判力を喪失して翼賛体制のごとき迎合ぶりを見せている。
NHKの予算案も参議院本会議で可決・承認されたが、採決直前の参議院決算委員会でも批判が集中している籾井勝人会長への質疑においても決定打に欠き、籾井氏の独壇場に終わった。籾井氏はNHK会長就任の記者会見で、失言を乱発して品性のなさをさらけ出したが、その後は官僚や閣僚らの答弁サポートでゾンビのように甦り、居座り続けている。
国民にとっても恥ずかしい事態だが、NHK職員や記者たちもうんざりしているのではないか。NHK受信料の不払いがどこまで広がるかはまだ分からないが、世間からは白い目で見られているのではないか。尊敬に値しない人物を会長に抱かざるを得ない、記者やキャスターたちも肩身が狭い思いをしているはずである。もっとも、NHKくらいの巨大組織になれば、局員もさまざまである。官僚体質のはびこるNHKでは、トップがどうであれ、「俺たちには関係ない」という厭世的気分も蔓延しているのではないか。
かつて、NHKにはエビジョンイルといわれた海老沢勝二という独裁者的な人物が会長に長く君臨していた。しかし、この時代にはまだ良識派による内部告発が存在していた。NHK以外のメディアによる批判も健在だった。こういう状況が海老沢会長本人にブレーキをかける役回りも果たしていた。最終的に、この独裁会長は失脚を余儀なくされたが、この頃はまだしも自浄作用が働いていたといえる。
ところが、安倍政権になって経営委員も安倍総理の息のかかったタカ派の面々が選ばれ、その集大成が籾井会長だった。籾井会長は安倍総理にとっては、忠実な番犬みたいなもので、人品骨柄よりもNHK支配のための実利を選択したのだろう。就任して間もない時期での退任となれば、安倍総理の責任も問われかねない。安倍総理がお友達を側近に据えて、脇を固めるというお得意の人事政策は小松一郎内閣法制長官、衛藤晟一総理補佐官、本田悦郎内閣官房参与、萩生田光一総裁補佐官、官邸スタッフにも及んでおり、一つが転べばドミノ倒しになりかねない。籾井NHK会長や小松一郎内閣法制局長などの問題児を解任できないのも安倍総理の小心者の表れだろう。特に、抗がん剤治療中の小松法制局長官の非常識な発言や行動は度を過ぎているが、集団的自衛権の行使を至上命題とする安倍総理にとっては切るに切れないというジレンマがあるのだろう。
安倍政権が独裁政治を次々と展開する中、みんなの党の渡辺喜美代表が、大手化粧品販売会社「DHC」の吉田嘉明会長から8億円を借り入れていた事実も発覚した。渡辺代表は個人的な借金と強弁しているが、吉田会長は政治資金として貸し付けたと明言している。
徳洲会グループの徳田虎雄氏から5000万円を借り入れたと強弁していた前東京都知事・猪瀬直樹氏も最終的には政治資金である可能性を認めて、略式起訴で50万円の罰金刑を言い渡された。これで、検察審査会への申し立ては出来なくなったが、5年間の公民権が停止され、政治生命は失われた。
渡辺代表に対する捜査の進展が注目されるが、政治資金規正法違反から逃れるのは至難の技だろう。渡辺代表は自民党にエールを送ってきたが、これでその可能性も消えるはずだ。それにしても、8億円もの大金は渡辺代表が政治家でなかったら、ありえない話だ。政治家としての自覚がなさすぎる。安倍政権の専制政治の裏で進行する政治のレベルも低すぎはしないか。これも、メディアの社会的責任の放棄である。
Written by 岡留安則
Photo by 安倍晋三公式サイトより
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