【STAP細胞】小保方さん会見で「陰謀論のヒロイン」と化す可能性
TABLO / 2014年4月9日 11時7分
STAP細胞を巡る小保方氏の論文捏造騒動が収まる気配を見せない。読売新聞の報道によると、理化学研究所(理研) がSTAP細胞の論文捏造問題に関する最終報告書に使用した画像4点を、理由の説明なく削除していたという。この画像は、小保方氏が「正確なデータと差し替えて欲しい」と理研に提出したもの。
同読売新聞の取材に対し、理研は「論文として未公表であるため、調査委員会に提出されたデータでも公表できない」と削除理由を説明した。また、最終報告書だけではなく中間報告書からも同様にデータが削除・修正されていることも発覚し、事態は混迷の一途を辿っている。
これまでは小保方氏及びその研究チームが一方的に捏造行為を働いたという見方が多数派を占め、理研へ向けた批判があったとしても、それは理研のみならず "日本の団体さん"に共通する隠蔽癖・陰険さ・自己保身優先......といった悪い体質についてだけだった。だが今回の怪しすぎる動きにより、「STAP細胞問題の真犯人は誰なのか?」という疑惑までもが浮上してしまったと言えよう。
さて、小保方騒動やSTAP細胞の存在自体の真偽についてはより詳しい専門家にお任せするとして、ここでは少々切り口を変えて考察してみたい。
[詐欺に使われる可能性]
ここまでの経緯から予測できる"最もよろしくない展開"は、小保方氏という巨大な陰謀に潰された悲劇のヒロインが誕生し、STAP細胞という眉唾ものの存在が「もうすでにここにある物」として伝え広められてしまう事だ。現時点では「あるかないか解らない」もしくは「ないと看做すしかない」存在であるはずなのに、理研のマズ過ぎる対応と、小保方氏の捨て鉢の反撃が続くようならば、一般庶民は混乱するだけで何が正しい情報なのか解らなくなる。そうなれば、胡散臭い詐欺師連中はこぞって「STAP細胞ありマス」「STAP細胞はじめました」と喧伝し始めるだろう。
仮にSTAP細胞という具体的な名称を使わずとも、「巨大権力によって隠蔽されたあの最新技術を活用した全く新しい健康法・健康グッズ・サプリメント・パワーストーン......です! 買ってくださいor投資しませんか?」とでも謳えば、老人から年金をむしり取るくらいの成果は挙げられる。この場合、ごく少数からむしれるだけむしればいいのだから、それほど大きなパブ展開は必要ない。いつも通りの対老人用詐欺ルートでDMや電話営業を頑張れば、詐欺グループが充分食えるだけの収益が見込める。
詐欺師連中からすれば、商売(というか詐欺)を成功させるには、もう少し小保方氏への同情票を集め、どっちの言い分が正しいのか解らなくさせる必要があるのだが、現状のマスコミによる小保方叩きや理研叩きによる数字稼ぎは非常にマズイ。いつものようにマスコミが乞食根性丸出しで、ただ耳目を集められればヨシとヒステリックに騒げば騒ぐほど「事実を確認する手段」としての機能を失い、小保方氏の顔と名前だけが拡散され、詐欺師にとって都合の良い流れになってしまう。
例えば、小保方氏が研究者としての地位を失い、陰謀論を唱えるだけのよく解らないタレント的存在になったとしたらアウトだ。もうすでに小保方氏は「入院したい」と代理人に漏らしているようだが、そんな状態で周囲に胡散臭い詐欺グループ一味が張り付きでもしたら厄介なことになる。まだ研究者であってくれれば監視も抑止も効くが、この一件で名前だけ売れた状態で在野に下られでもしたら、誰と何をしているか可視化できなくなってしまう。
もしも行き場のなさに付け込まれて詐欺グループに絡め取られ、「あの小保方です」と妙な商材の宣伝や、投資先に説得力を持たせるための道具として使われたらどうなるだろうか?
[小保方氏が陰謀論のヒロインと化す可能性]
このような予測は決して単なる妄想ではない。過去にいくつも同じような事例があるのだ。 一例として、とある書籍から一部引用させていただく。
◇
もしこの本をきっかけに氏が大学から処分を受けるようなことにでもなったなら、あたかも他の人々が彼の主張を正面から論駁(ろんぱく) できないために、不当に彼が迫害されたかのような印象を、世間に与えかねないということである。
一九五〇年代のことだ。 映画「十戒」に登場するような旧約聖書の天変地異的な奇蹟は、太陽系の大異変の記録である、と主張した本が米国で大ベストセラーになったことがある。(中略)
そこでそのあまりのデタラメぶりに憤慨した同国の科学者たちは、教科書会社でもあった出版元への執筆拒否を匂わせた抗議という圧力をかけることになった。
また、その本に好意的なコメントを(おそらくは一種のつき合いで) 寄せていた科学者が職を失うという事件まで発生している。
では、絶版によって、かの本は信用を失ったであろうか?
答えはノー。 むしろ、火に油を注ぐ結果になってしまったのである。
科学者たちの抗議と、"絶版" "追放" という結果が、かえってその本に "殉教者の雰囲気" を与えてしまったのだ。(中略)
もちろん "その本" とは、ヴェリコフスキーの 『衝突する宇宙』 である。
出典元:『トンデモ本1999 このベストセラーがとんでもない』(光文社)
著者(引用部分):志水一夫
◇
今から10年以上も前の書籍の内容が今に通じてしまうという点に恐ろしさを感じなくもないが、この志水氏の文章が何を言わんとしているか考え、小保方騒動と照らし合わせてみよう。
今後の小保方氏の追い詰められ方次第では、"トンデモ"や"アウトロー"の方面に転がって行ってもまったく不思議ではないが、あまりに彼女への同情票が多いようだと「トンデモと気付かない支持者が集まる」ことになる。これでは小保方氏を中心とした新興宗教が誕生するようなもので、彼らは口々にこう言うだろう。「小保方氏は新技術を発見してしまったがために、利権を守りたい旧勢力の陰謀で社会的に抹殺されたのだ!」と。ユダヤでも米国でも何の陰謀でもいいが、こうなれば無事に(?)STAP細胞陰謀論の完成である。
したがって、各メディアや突撃癖のある愉快犯寸前のネット民などは、今の内に姿勢を改め、淡々と事実経過を伝える(もしくは見守る)ことに専念すべきだ。間違っても、組織が小保方氏を切って終了という話にしたがるような方向に進めてはならない。
[死兵だらけのこんな世の中じゃ]
小保方騒動からは少し離れてしまうが、"追い詰める"という点だけに注目してみると、これは他の様々な人間間のトラブルにも当てはまる。あなたは批判したい相手を追い込んでいるつもりでも、やり過ぎたり方法がマズかったりすれば、逆に相手に逃げ道を与え、またあなた自身にダメージが跳ね返ってくる結果になるかもしれない。
孫氏の兵法書に「囲む師は必ず欠く」とあるが、これは「相手を追い込みすぎて死兵にするな。 こっちの被害が無駄に増えてしまう」といった教えだ。昨今のTwitter炎上事件や、小保方騒動のような特定個人に対する"一斉投石"を見ていると、ネット民もマスコミも批判対象を死兵にし過ぎてしまっている気がしてならない。
相手がむざむざ座して死を待ってくれる訳はないのだから、せめて 「相手がヤケを起こしたらどういう手段に出るかな?」「社会に行き場がなくなったらどういう道を選ぶかな?」と、ちょっとだけ先を読んでから言葉を発するクセを付けるべきだろう。
社会・秩序の中に身を置く場所がなければ、そのひとはアウトローとして生きるほかなくなる。そうなれば四の五の言っていられなくなり、食べるために手段を選ばなくなる。 これがいわば死兵だ。そんな死兵が増えれば増えるほど、治安の悪化という形であなた方に不利益をもたらすことになるのだ。 この点をどうかお忘れなく。
【注目記事】
Written by 荒井禎雄
Photo by 理研公式ホームページより
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