パニック障害のクスリを飲んだ男はうつむきながら車を運転し対向車と… 男が裁判で語った事故時の症状とは
TABLO / 2019年7月24日 9時43分
事故を起こす直前から前田秀輝(仮名、裁判当時26歳)には異変が起きていました。
「ボーっとしてて何も考えられませんでした。視界にモヤがかかっている感じでした。事故を起こした時のことは覚えていません」
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被害者の男性は、
「信号が青になったので発進したら、突然対向車線から被告の車がはみ出してきました。被告はうつ向いていて前を見ていませんでした。急ブレーキを踏んで自分の車は停車しましたが正面衝突してしまいました。自分も動けなくなっていたのでよくわかりませんが、被告はその時車の中で横になっていたようです。その後被告は車から出てきて道路に座り込んでいました」
と供述しています。
この事故を目撃していた人もいました。この方は看護師をしている人でした。
「車同士が正面衝突しているのを目撃しました。衝突後、被告は運転席から助手席の方へ横になっていました。その後、車から出てきましたが足許が覚束ない感じでフラフラしていました。クスリか酒だと思いました。かけよって声をかけるとうわごとのように『何もわからない、何も聞こえない』と言っていました。携帯電話を取り出して操作しようとしていましたが、それもうまくできていないようでした」
事故当時、彼は「デパス」という薬を服用していました。5年前からパニック障害の症状を起こしていた彼にとってデパスは日常生活に欠かせないものになっていました。
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「パニック障害で過呼吸や吐き気、めまいが起きることがありました。デパスを飲めばおちつきます」
狭い場所にいるとパニック障害の発作に襲われることがよくあったそうです。
事故当日、仕事が休みだった彼は車に乗って映画館に出かけました。家を出る前、映画を観ている最中、そして映画館を出てすぐにデパスを服用していました。
以前から彼は時折デパスを服用した後に車を運転していました。それで交通事故は一度も起こしたことはありませんでした。
「医者や家族からは服用後の運転は控えるようには言われていました。でも今まで事故を起こしたことはなかったし、いつも通っている慣れている道だから大丈夫だと思ってしまいました」
しかし事故当時は何故かクスリの効き方がいつもとは全く違っていました。
「運転中、だんだん視界がぼやけてきて何を見てもしっかり焦点が合わなくなりました。深く物事を考えることも出来なくなっていって…」
その後、彼は事故を起こしました。
彼が住んでいたのは埼玉県の郊外です。都内のように電車でどこにでも行けるような場所ではありません。生活に車は欠かせない場所です。
それに加え、電車に乗ると発作を起こしてしまう彼にとって、車はより重要な足でした。
「運転はやめるべきだと思っていました。でも車は自分にとって唯一の逃げ道というか…病気のせいで引きこもっちゃいけないっていうのもあったし、精神の病気なので出かけてリフレッシュすることが治療になるとも思っていました」
被害者の男性は彼の事情を聞いて、全治6ヶ月の重症を負っているにもかかわらず、処罰は望まない旨を裁判所に申告しました。
「今後はクスリを飲んでいる時は絶対に運転はしません」
今後は減薬にも取り組んでいくようですが、外出時は常にデパスを持っていないと不安だそうです。
狭い場所にいると発作を起こす彼はデパスがなければ車に乗れません。飲んだら運転しない、それはもう運転をしないと言っているのと同じです。
彼が起こした事故は一歩間違えれば人命を奪うような重大な事故になった可能性も高いものです。車に乗れないのは当然です。
しかし今後車なしで彼の生活や症状はどうなるのか、裁判ではそういった話はあまりされませんでした。
デパスは副作用として眠気、注意力・集中力・反射運動能力などの低下が起こることがあります。薬のパッケージには服用後の運転はしないよう注意書きはありますが、デパスを飲んで車の運転をすることは法律で禁止はされていません。(文◎鈴木孔明)
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