袴田さん冤罪を誘発した「ボクサーへの偏見」と米国ハリケーン事件

東京ブレイキングニュース / 2014年4月14日 17時0分

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 再審開始決定と即時釈放、そして名誉チャンピオンベルトの贈呈を経て、袴田巌さんは真に"日本のハリケーン"となったのだろう。4月6日、姉の秀子さんが世界ボクシング評議会(WBC)のマウリシオ・スライマン会長から代理で受け取ったベルトには、現役時代の袴田さんの写真も飾られていた。

 WBCは名誉ベルトを、米国で冤罪により19年間投獄された元プロボクサー、ルビン・カーター氏にも贈ったことがある。1999年の映画『ザ・ハリケーン』のモデルで、デンゼル・ワシントンが演じた人物だ。ともにプロボクサーで、冤罪によって長期間にわたって身柄を拘束されていることから、袴田さんは"日本のハリケーン"と呼ばれるようになった。ならば、どうあっても冤罪は晴らさねばならなかったはずである。

 カーター氏は「ハリケーン・カーター」のリングネームで活躍し、世界ミドル級1位まで上り詰めた。しかし、奇しくも袴田事件と同じ1966年6月、ニュージャージー州パターソンで起きた強盗殺人事件で有罪判決を受け、身に覚えのない殺人容疑で終身刑を宣告されてしまう。カーター氏に対する裁判は、人種差別による予断と偏見に満ちたものだったという。公民権運動が沸騰する状況下、無実を訴え続けるカーター氏に、元世界ヘビー級チャンピオンのモハメド・アリやロックシンガーのボブ・ディランらによる救援運動も起きた。その後、証人の偽証が明らかになり、雪冤を果たしたのである。

 袴田さんの場合も、日本ボクシング協会(現・日本プロボクシング協会)をはじめとするボクシング界が強力に再審支援を押し進めてきた。『ボクシング・マガジン』『ボクシング・ワールド』編集長などを歴任してきた前田衷氏がこう書いている。

「マルコムXとキング牧師の暗殺の間に起こったカーターの冤罪事件は、その背景に人種差別があったが、では袴田事件はどうか。『袴田犯人説の根底にあるのは、刑事の『ボクサーくずれ』への偏見であると思える』と書いたのは、故・寺山修司だった。大橋秀行・再審支援委員長以下、ボクシング関係者が『他人事ではない』と力こぶを作るのも、この辺にある」(『Number』08年3月7日号)

 厳しい減量に耐えるなど本来ストイックなボクサーが、差別されてきたことへの怒りだろう。

 袴田さんは獄中でこの事件を知り、カーター氏が自由の身となって間もない89年に〈冤罪と闘った同志ミスター・ハリケーン・カーターへ〉との書き出しで、手紙をしたためている。

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