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生活保護搾取で暴力団員逮捕 「シノギがない」裏社会で拡大する貧困層

TABLO / 2014年4月23日 12時49分

生活保護搾取で暴力団員逮捕 「シノギがない」裏社会で拡大する貧困層

「兄弟分が逮捕されちゃったんだよ。俺の事も言われちゃうんじゃないかって心配で......」

 開口一番、その男はこう言った。

「全国ニュースになってるみたいなんだよ。俺、もうカタギになろうと思ってるんだよね。もう疲れたよ」

 この男が焦っているのは、こんな事件が起きたからだ。

"生活保護費詐欺 松戸市の暴力団組員逮捕"

 暴力団組員であることを隠して生活保護費を不正に受給したとして、駒込署は十二日、詐欺の疑いで、千葉県松戸市栄町八、指定暴力団山口組系組員猪敏昭容疑者(67)を逮捕したと発表した。

 逮捕容疑は、暴力団員であることを隠して松戸市福祉事務所に生活保護を申請。二〇一一年二月ごろから一四年一月ごろにわたり、九十四回にわたり生活保護費計約四百六十三万円をだまし取ったとされる。「組長が大阪の事務所に行く際の交通費として生活保護費の一部を上納していた」と容疑を認めているという。(2014年4月13日/東京新聞TOKYO WEBより)

「俺の方が学年で一つ下だよ。年は同じだけどな。俺、もう疲れちゃってさ......。生活保護もらってビクビクしてんのヤダよ。いつ俺までパクられるかと思うと、夜も寝れねえんだよ」

ーーしかし、容疑者もヤクザなら、他人の事はうたわないのではないか。

「そう願いたいんだけど、多分差し入れとかも無いし、金も無いだろうから苦労して、刑事に情を掛けられたら言っちゃうような気がしてさ......。俺も面会に行けなければせめて差し入れでもしないと兄弟分の名が泣くだろ? だから兄弟の事務所にどこに拘留されているのかを聞いたら、『うちとは一切関係ないから二度と電話してくるな』って冷たく言われたんだよ。それはないだろうと思ったけどな。でも、俺も逮捕されたら同じような事になるんだろうと思って。名刺持つ事も許されてないし、義理場とかも出入り禁止だし。自分でも生活保護を上納してるだけで何のためのヤクザなんだと思ってさ」

 商才もなく、シノギの能力を持たないヤクザの老後は悲惨だ。周囲の目に怯えながら生活保護を不正受給し、その上前を組織に吸い上げられる。もし、不正受給が発覚したとしても組織は知らんぷりだ。懲役を食らって務めを終えても、そんなケチな罪状では出所しても相手にされるはずがない。

「また、色々考えて電話するわ。今度飯でも食おうよ」

 男はそう言うのがやっとで電話を切った。裏社会にも確実に貧困層のすそ野が広がっている。そんなことを感じさせる一件だっだ。

Written by 西郷正興

Photo by Dai Luo

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