『表現の不自由展・その後』はなぜ中止になったのか 表現の自由の“向こう側”にあるものとは|久田将義
TABLO / 2019年8月5日 16時3分
メディアアクティビスト・ジャーナリストの津田大介さんが芸術監督を務める「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」が1000件以上の抗議を受け、開始三日で中止になりました。
津田さんは旧知の人であり、このイベントが行われることは以前に何となく聞いていたので応援したいと思っていました。なので、開始三日で中止は残念に思います。
何が問題になったかと言うと二点になると思います。
・慰安婦少女像(「平和の少女像」)の展示
・昭和天皇をモチーフとした動画
これらが抗議された主な原因のようです。
本来、『表現の不自由展・その後』の会場に行き、全体を見て、評論するのがフェアですが残念ながら中止になった為、ここでは「表現の自由」とその後の対応について考察してみたいと思います。
「表現の自由」は憲法21条で保障・明記されています。表現の自由の中には言論の自由(批判・批評の自由)も含まれています。
そこであえて極論を言います。表現の自由とは「何を表現しても良い」のです。それがどんなに不快なものだとしても。また、プロパガンダ的なものでも、です。
つまり、表現の自由とは実は残酷な面もあるというのが事実と捉えています。日本においては例えば戦前の言論弾圧での悲劇が起きたように(小林多喜二事件など)、「表現の自由」を先人は選択し、僕らもこの「自由」を享受しています。
が、しかし。
表現の自由の裏側には暴力が存在していた歴史が、厳密に存在します。
・作家深沢七郎の小説「風流夢譚」で昭和天皇を侮辱したとして、版元の中央公論社を右翼が襲った。関係のない家政婦の方がお亡くなりに。
・「噂の真相」編集部に天皇家を不敬だとして右翼が抗議、傷害事件に発展。
等々、他は割愛しますが、これが「現実」です。暴力は恐怖です。表現の自由と位相は異なりますが、僕も「実話ナックルズ」編集長や「月刊選択」次長時代に様々な人から、様々な恫喝や脅迫を受けました。その時の感情は恐怖以外の何者でもありませんでした。PTSDになっているかも知れません。
こうした経験から学んだのは、もしかしたら言論の自由という先人が身体を張って産み出した「表現の自由」の向こう側には暴力という恐怖の装置が存在するかも知れない、という想像力が必要なのではないか、という事です。
参考記事:RADWIMPSの『HINOMARU』が「愛国的だ!」と批判 いったい誰に謝罪しているのか | TABLO
しかし暴力や脅迫を受けたら法治国家である日本では、警察がしっかり取り締まらなければなりません。
今回は京都アニメーションの事件を彷彿されるような「ガソリンをまく」という脅迫も含まれていたと愛知県知事大村氏が公言しています。もしこの脅迫が事実なら、卑劣極まれない、許してはいけません。
まず、警察がこの脅迫犯を逮捕し、取り締まる事が先決です。最近、評判の悪い警察ですが、名誉挽回すべく愛知県警には厳罰に処して頂きたいと望みます。
少し話が離れますが、僕はある写真家を徹底的に批判した事があります。到底受け入れられるものではありませんでした。怒りさえ覚えました、と本サイトTABLOで書いたはずです。が、「その写真家の表現の自由は守らなければなりません」とも記したと思います。これは本心です。
不快な表現物はたくさんあります。それが河村名古屋市長が言う「反日プロパガンダ」であったとしても。それを言えばハリウッド映画にも邦画でも「プロパガンダではないか」という作品は見つかります。
河村氏に関して言えば、公人である河村氏は憲法を遵守すべき立場にあります。「反日プロパガンダである」という批判は河村氏の言論の自由です。が、「展示を中止しろ」(主旨)とまで言うのは、憲法の精神から逸脱しています。政治家がこれを言ってはいけません。
繰り返しますが「反日プロパガンダだ」という「批判」は良いのです。表現物に対しては批評もあれば痛烈な批判があってしかるべきです。
言うのであれば、「この展示会は反日プロパガンダだと個人的に思っている。が、表現の自由のもと展示は続けるべきである。そして何より脅迫した容疑者を早くとらえるのが先決である」でした。
この事態が許されるなら「脅し得」になります。展示が停止されたという事は、河村市長の思惑通りになった訳です。すなわち、卑劣な脅迫犯が願った通りになりました。
表現の自由の向こう側に暴力は確かに存在します、残念ながら。政治家であるのなら、それをいかにして防ぐかに注力すべきです。(文◎久田将義)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「蓮舫氏の大暴走」をなぜ誰も止められないのか…記者の謝罪に「終わらせません」発言が示す根深い問題
プレジデントオンライン / 2024年7月19日 17時15分
-
国民・玉木雄一郎代表 トランプ前大統領の銃撃事件に「無事だったのはまさに奇跡」
東スポWEB / 2024年7月15日 23時9分
-
バイデン氏、トランプ氏銃撃で迫られる戦略見直し 「暴力をあおった」共和党から批判も
産経ニュース / 2024年7月14日 18時14分
-
「当事者の会」元代表を誹謗中傷した20代女性送検…「言論の自由もある」と言い放った東山紀之はどう聞くのか
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月12日 15時32分
-
日本の主権を侵害する香港当局を政府は許すのか 香港の民主・人権活動家が日本に向かわない3つの理由
東洋経済オンライン / 2024年6月27日 12時0分
ランキング
-
1立民・野田氏、代表選出馬に慎重=「保守系」望ましい
時事通信 / 2024年7月22日 16時19分
-
2東海道新幹線の復旧遅れ 「衝突した保守車両、破損ひどく」
毎日新聞 / 2024年7月22日 20時54分
-
3「妨害するつもりはなかった」“ひょっこり”運転の男 初公判で起訴内容を否認
チバテレ+プラス / 2024年7月22日 18時15分
-
45歳娘と52歳父親の遺体見つかる 父親はダムに浮かんだ状態、娘は橋の付け根の土台に横たわる
MBSニュース / 2024年7月22日 19時15分
-
5トランプ再選で日本は「5つの悪夢」に襲われる 前回よりも思い通りにしやすくなる可能性も
東洋経済オンライン / 2024年7月22日 14時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)