ボクシングW世界戦で見えた山中慎介の進化【K-1格闘家コラム】
TABLO / 2014年4月24日 13時22分
![ボクシングW世界戦で見えた山中慎介の進化【K-1格闘家コラム】](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/knuckles/knuckles_1440_0-small.jpg)
4月23日、大阪城ホールで開催された注目のボクシングW世界戦、帝拳プロモーション「ワールドプレミアムボクシングVol.19 The REALダブル世界タイトルマッチ」。先に登場したのは、IBF世界スーパーバンタム級王者奪取を狙う「LEGEND」長谷川穂積選手でした。
見るからにパンチ力のありそうなファイタータイプのチャンピオンに対して、長谷川選手はフットワークを使って動きながらスピーディーなパンチを打ち込んでいきます。しかし王者の勢いは止まらず、2RにはあわやKO負けかと思われるような壮絶なダウン。足を止めての打ち合いの最中のダウンでした。
チャンピオンは近距離の打ち合いが得意なタイプで、頭を振りながら全身で叩きつけるようなフックを繰り出してきます。対する長谷川選手は長い距離からスピードを活かしてパンチを打ちこんでいくタイプ。本来は打ち合うスタイルではありません。ダウンを食らった時もガードが下がり、頭が止まっていました。長谷川選手は気が強いんでしょうか。時々、ムキになって相手の得意な距離で打ち合いに応じてしまうくせがあるように見えます。
その後はなんとか耐えしのぎ、本来の足を使うスタイルに戻りました。長谷川選手の攻撃が効いてきたのでしょうか。チャンピオンは反則の肘打ちや頭突きなどのラフな攻撃を交えてプレッシャーを強めてきます。最初のダウンのダメージが残っているのか、長谷川選手は力なく押されていきます。
そして迎えた7R。チャンピオンの左フックのカウンターがヒット。長谷川選手がダウンしました。一見軽いパンチのように見えますがかなり効いてます。なんとか立ち上がるものの、チャンピオンの追撃で再びダウン。レフェリーが手を交差して、試合終了の合図を示しました。
敗れはしましたが、長谷川選手はLEGENDの名に相応しい試合を見せてくれました。今後の進退はまだわかりませんが、とりあえずゆっくりと体を休めてもらいたいものです。
続いて登場したのが「神の左」を持つWBC世界バンタム級王者・山中慎介選手。軽快なリズムで得意の左ストレートをボディと顔面に打ち分けるチャンピオン。2Rはそれまでボディにパンチを集めていた山中選手がいきなりの顔面への左ストレートがさく裂。挑戦者は大きくはじけ飛びました。
しかし、一気にラッシュをかけることなく、パンチを散らして慎重に詰める山中選手。「ゴルゴ13」のように冷静に自分の仕事をするという姿勢。メンタルが強いですね。その後、8Rにもボディへのストレート、顔面へのストレートでダウンを奪取。ここでも深追いせず、9R開始早々にボディへの左ストレートでノックアウト。山中選手初となるボディでのKO劇でした。まだまだ進化しています。
試合を見て感じましたが、山中選手は左肩を内側に捻る動き(内旋)をひじょうに上手く使っています。ちょっと試しに腕を前に出して内側に捻ってみてください。肩甲骨が外側に開いた感じがしませんか? このように腕のひねりと肩甲骨の動きは連動しています。ボクシング漫画の名作『あしたのジョー』でも「ジャブは捻りこむように打つべし」とありましたよね。ジャブに限らず、あれは正しかったんです。肩の内旋動作ができると肩甲骨が前に出る分、パンチが伸びて強くなります。力みなくスッと構えたところから強いパンチが伸びてくる。そんなところにも「神の左」の強さの秘訣があるように感じられました。
そして現在、山中選手と同じ階級には、強豪アンセルモ・モレノや亀田和毅選手がいます。さらにもう一つ上の階級には超強豪ギレルモ・リゴンドウも健在。おそらく亀田選手との統一戦は難しいと思われるので、山中選手には世界が認める強豪のモレノ、リゴンドウに打ち勝って、誰もが認める世界最強の王者を目指してもらいたいです。
Written by 大野崇(プロキックボクサー、元K-1 JAPAN選手、トレーナー)
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