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「美味しんぼ」の鼻血描写騒動を福島原発作業員に聞いた by久田将義

TABLO / 2014年5月3日 13時50分

「美味しんぼ」の鼻血描写騒動を福島原発作業員に聞いた by久田将義

Photo by 美味しんぼ 110 (ビッグコミックス)

 4月28日発売『ビッグコミックスピリッツ』掲載の長寿グルメ漫画『美味しんぼ』が、「炎上」している。

 福島取材から帰った主人公・山岡士郎が鼻血を出したという一コマが問題となっている。漫画では、その後、医者に診てもらい、鼻血と今回の取材(で被爆した件)とは関係がないと診断。「うっかり関連づけたら大変」というようなセリフを原作者の雁屋哲氏は山岡に言わせている。

 では、今回山岡が取材し、恐らく被爆したであろう放射線と鼻血が関係ないのだとすればなぜ鼻血のシーンを入れたのであろうか。関係がないのなら入れる必要がないのではないか。ムダなコマである。入れる必要がないコマをわざわざ入れた事で福島県民の不安を煽るように見えたと言われても仕方あるまい。関係がないのなら絵でなくてセリフで言わせればよい。

 では、なぜ問題となってしまったコマを入れたのであろうか。

 雁屋氏は、元双葉町長井戸川氏を漫画に登場させており、氏の「誰も言っていないだけで鼻血を出している人もいる」という主旨の発言を掲載。恐らく、この言葉が雁屋氏にはショッキングだったのだろう。

 そこで放射線の怖さを訴えたくて、どうしても鼻血のシーンを入れたかったのだと推測する。要するに「鼻血のシーンありき」だったのではないのだろうか。とは言え、山岡が被爆した場合は晩発性の為、急に鼻血が出る訳ではない。医者のシーンは、それらのエクスキューズとして入れたのではないか。

 前述した、雁屋氏がショックを受けたであろう、井戸川元町長の「誰も知らないだけで鼻血を出している人はいる」についてだが、僕が早速、双葉郡出身の現役作業員(つまり被災者)二人に聞いたところ、一人は苦笑しながら「鼻血が出ている人なんか聞いた事ないですね」と言い、もう一人は明らかにムッとしながら「何ですか、その漫画。周囲に鼻血とか出ている人間は一人もいませんよ」と答えた。

 雁屋氏はどのような「取材」をしたのだろうか。井戸川元町長の言葉があまりにショッキングだったので、読者に放射性の危険を訴えたくてあのようなシーンを入れたのだとすれば、取材範囲が余りにも狭いのではないか。

 確かに、僕も被災者・作業員たち全員に聞いた訳ではない。しかし、二年半ながら、原発作業員・被災者に取材してきた。鼻血が出ているかどうか、メールや電話で確認をすればすぐに、井戸川元町長の言っている事に「?」が付く。

 仮に井戸川元町長の周りにそのような人がいたとしても、放射線との因果関係は解明していないし、僕の取材相手のように「周りには一人もいません」という答えを返してくる人もいたはずである(というより、福島県民の大部分の人がそういう答えをするのではないかと推測するのだが......)。

 ただ、今回の『美味しんぼ』に対する行き過ぎた批判、つまり回収せよとか絶版にせよといったものには反対だ。言論の自由(表現の自由)とは極論すれば「何を言ってもいい」のである。しかし、「何を批判・反論してもいい」と思うからである。雁屋氏の正式な見解を待ちたい。

Written by 久田将義(東京ブレイキングニュース編集長)

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