タピオカだけじゃない 平成を席巻した海外から上陸した三大スイーツを覚えていますか?|中川淳一郎
TABLO / 2019年8月14日 10時0分
現在は第3次タピオカブームともいわれているが、平成の前半、海外からやってきたデザートの御三家といえば、「ティラミス」「ナタデココ」「パンナコッタ」だろう。ここに「カヌレ」や「ベルギーワッフル」「クイニーアマン」などが加わる。
一体全体「ブーム」とはなぜ起こるのかはよく分からないのだが、今、メディアの仕事をしていると「〇〇がブーム」と言っておけば企画が一つ成立する、というのがよく分かってきた。だから、「事実としてある程度売れている」「事実として取り扱う店が増えている」というのがあった場合、それを「ブーム」と表現すればブームは完成するのである。
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「海外から伝わった良く分からないスイーツ」が流行っていた
1990年のティラミスブームの頃は日本にいなかったため何もその時の状況を知らないのだが、1993年、大学1年生の時にやってきたナタデココブームについてはよく覚えている。何しろテレビや雑誌が一斉に取り上げ、飲料メーカーもナタデココ入りの缶ジュースをこぞって出し始めたのだ。
ココナッツから作る固い食感と低カロリーさで人気となったが、ゼリーの中にナタデココが入る商品も登場するなど、あれは完全に一世を風靡したといえよう。この時、「ナタデココ」というあまりにも特殊的すぎる名前勝ちしたのか、翌年やってきたのが「パンナコッタ」である。
テレビやラジオに登場するオッサンキャスターの間では「ナンノコッチャ」と言うのが流行っていた。かと思えば、翌年はフランスから「カヌレ」がやってきて、私の通う大学の近くのスイーツ店(当時はデザートと言っていた)にも怪しげな茶褐色のカヌレが置かれ、平気で一人8個買うなどしていた。
昨今のスイーツはかき氷もそうだしタピオカミルクティーもそうだが、いわゆる「インスタ映え」がその人気の要因となっているが、平成初期の頃の人気スイーツの場合は、「海外からやってきたワケの分からない名前」がヒットの要因だったのでは、と思うのだ。
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平成10年も迫ってきた「ベルギーワッフル」の時代になると、ヘンな名前のデザートの人気は低下していったが「クイニーアマン」までは変な名前こそ、ブームの象徴となっていたのだろう。
もしかしたら、まだこの頃は海外への劣等感があり、なんでもかんでも海外発のものであればイケてる、といった状況にあったのかもしれない。「イタリアで人気」「フランスで人気」といった一言があれば、「キャーおいしそー!」状態になっていたのである。
だからこそ、今考えれば完全にアホなのだが、フランスのミネラルウォーター・エビアンを首からぶら下げたり、「コントレックス」という硬度のやたらと高い水を飲むと痩せる、という噂が女性を中心に蔓延したのかもしれない。
さらには「痩せるクリーム」として評判になった「スヴェルト」といった商品まで売れに売れ、販売日には百貨店に行列ができるほどだった。
こうしたことを振り返ると、当時は企業主導のマーケティングがよく効く時代だったのだといえよう。今はSNSを中心とした個人発の情報がネット上で自発的に大拡散し、結局は消費行動に繋がる。聞きなれない名前のデザートブームが発生した平成初期は企業にとっては幸せな時代だったのかも、とつくづく思うのである。(文◎中川淳一郎 連載『俺の平成史』)
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